第3話 そして彼女はやってきた
こんにちは魂夢です。言い忘れてましたが、恋綺檄はメインヒロインではございません!
朝の都心部行きの電車は混雑する。これが外国人が見たがることで有名な満員電車というやつだ。
しかしなんで我々はこうも毎日満員電車に乗せられなきゃいけないのか甚だ疑問だ。
だが幸運なことに、俺の最寄り駅はこの電車の始発駅だから、少し早めに駅に着いて並んでおけば基本的に席に座れる。
おかげで人がぎゅうぎゅう詰めになってるこの電車でもゆったりリラックスしていられるわけだ。
まぁ座っているからと言って朝の憂鬱を吹き飛ばせるほど俺の精神力は強くはないのだが……。
俺はスマホに目を落とし、グーグルのトップページにある適当なニュース記事を開いた。
○
俺は自クラスのキーキーと甲高い音を出す扉を開いた。立て付けが悪いのか、いつも悲鳴のみたいな音を出すんだよなこのドア。
「あ、おはよ」
黒髪に鋭い目つきの男が俺に声をかける。あいさつしてくれたのは親友の木原 鶴城だ。
彼は俺が中学の時からの友人である。と言っても中高一貫校のうちじゃ別に大したことではないが。
「おう、おはよう」
俺は軽く片手を上げそう返し、鞄を下ろす。
「なぁ聞いたか? 今日転校生が来るらしいぜ」
椅子に座り、時間割に沿って教材の準備をしようとすると、鶴城は俺の机に両手をつきながら、そんなことを口にした。
転校生とな、私立ではあまり聞かないワードだ。めずらしいこともあるもんだな。
「どんな人か知ってるのか?」
「いや、女子ってことぐらいしか……。あとすごい美少女らしいけど、本当かどうかは怪しい」
俺が訪ねると、鶴城はそう教えてくれる。
まぁ女子が来るなら美少女だのブスだの外見に関する小さな噂はあること無いこと大量に出てくるだろう。
どのみち結果はすぐにわかるけどな。
美少女だったら良いなくらいの考えで良いだろう、俺はそもそも女子と接点がないし、友達も少ないから俺にとっては関係の無いことだ。
それでも、美少女なら多少の目の保養くらいには……、なってくれるかも?
いやでも美少女だったら、このクラスにもう既に一人いるしな。それもこの学校一の美少女と名高い少女が。
ふと、俺はその少女に目を向ける。少女は俺と同じように友達と談笑しながら授業の準備を進めていた。
「おーい、どした?」
のぞき込むようにして、無理矢理俺の視界に鶴城が入り込んでくる。
俺はじとーっと彼を見て、何度か目をパチパチとやった。
「そろそろホームルーム始まるぞ」
俺がそう教えると、鶴城はああと、わかってんのか、それともわかってないのか、どっちかわからんことを言って自分の席に戻っていく。
とりあえず俺は鞄から暇つぶし用の小説を取り出す。
ちょうど良いところで止まってたからムズムズしてたのだ、担任が来るまでに区切りの良いところまで読んでしまおう。
俺が小説を読みふけっている間もクラスは件の美少女転校生の話題で持ちきりだった。
やれ理事長とコネがあったとかやれ超のつくビッチだとか。
当人の居ないところでの噂話が褒められたことではないのだろうが、美少女転校生が来るとなればどうしても気になってしまうのは仕方が無いと言えよう。
「よーしお前ら席着けよー。ホームルームはじめっぞ~」
そこまで大きな音ではないが、それでも充分に不快な音を出しながら担任の小原 和博先生が入ってくる。
あ、不快な音ってドアの話ね?
「たぶんみんな知ってると思うけど、形式上やんなきゃなんねーから言う。転校生が来てる」
ザワザワ……、カイジのごとくクラス全体がざわめき始める。
いやあんたら知ってたでしょ、そんなザワザワする必要ある? なんなの、なんかある度にざわめかなきゃ地下行きなの?
「それに女子だ。男子たち、何がとは言わんが、頑張りたまえよ」
そう言ってなぜかドヤる小原先生。そしてなぜか軽い咆哮をあげる数名の男子生徒。
陽キャって奴はほんとにもう……。やんなっちゃうわ……。
「では入りたまえ」
ガラガラと音を立てながらドアが開き、そこから噂通りの美少女が現れる。
件の美少女の姿を見た瞬間、俺の息が止まった。俺は、あの美少女を、彼女を知っていた。
運命とかそんな物で片付けられるほど、この状況は薄っぺらいものでは無いだろう。
俺の脈動を司る心臓がうるさくなって、そして冷や汗が流れ出す。まさか現実で、こんなラブコメっぽいことになるとは思いもよらなかった。