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努力嫌いな俺のラブコメ~美少女のいる部に入ったのにシリアスな展開ばっかり!?~  作者: 魂夢
第四章 ゆっくりと彼と彼女らの関係は移りゆく
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第27話 三日月が煌めく心地の良い夜

こんにちは魂夢です。シャー!ック!(鮫)

 家に帰って飯を食い、真莉が寝室に行ってから、リビングの電気を消した。


 そして俺はEスポーツ部の一件の時にもらっていた田中のLINEに一つメッセージを送る。


『明日は学校に来るのか?』


 少しのあいさつ書き込んだ後、事の本題としてこの文を彼のLIMEに送った。


 さて、既読がつくまでLIMEと睨めっこをしててもしょうがないからと、俺はスマホをテーブルに置く。


 ソファに寝そべると、天井が見えた。俺の目線から天井までは二メートルくらいはあるのに、なぜか窮屈に感じる。


 ゆっくりと、俺は瞼を閉じる。瞼の裏に映るのは、恋綺檄やぼっち部での日々、そして、扶桑花 麗良という少女。


 恋綺檄が田中を助けたい理由は、神様として、苦しんでる人を助けてあげたいと思う純粋な気持ちからだ。


 そして、扶桑花が田中を助けたい理由は、小学生時代の同級生として、友達を助けてあげたいからだ。


 なら、俺は……。なんで田中を助ける? あまつさえ助けたくないとまで思ったはずなのに。

 田中はどうだっていいんだ、本当は。俺はぼっち部の関係性を持続したいだけだ。


 俺の醜い願望を、田中を助けるという行動で隠しているだけに過ぎない。

 あの二人にとって、ぼっち部はなんでもないただの部活くらいの認識でしかないかも知れない。


 ならば、俺にとってはあの部活に対してどういう認識だ?


「……フッ」


 乾いた笑いが口から零れ落ちる。その笑いはひどく自嘲的だったと思う。

 ……らしくない。すごく俺らしくない。昔の俺ならきっと、部活が崩壊するのはむしろ喜んでいただろう。不必要なぼっち部なんて煩わしいだけだから。


 わからない。なぜ俺がここまでぼっち部に固執するのか、たった一ヶ月と少しの時間を共にしただけなのに、何が俺にそうさせるのか。

 俺は自分に問いかける。それでも、一向に答えは出てきてくれそうにない。


 色々考えて、足掻いて、質問の仕方を変え、理由を求め、最終的に一つの質問に行き着く。


 ………………俺にとって、ぼっち部(居場所)とは、なんだ。


 その時テーブルに置いたスマホが震える。どうやら田中から返信が来たらしい。


『行きません』


 液晶を見やればそこには短く否定を表す文字が。俺はスマホに返信を書き込む。


『すまん、明日は学校に来てくれ。今日みたいに隠れて部室に来るんじゃなくて正式に登校してくれ頼む』


 送信した直後に既読の文字が表示されるが、返信は来ない。どうやら決めあぐねている様子。


 俺はダメ押しとばかりに、もう一文送信する。


『お前を助けたいんだ』


 …………噓だった。誰も不幸にならない優しい噓だ。彼を助けたいとは思わないのに、俺の手はスルスルとこの文字を綴った、いや、綴ってしまった。


『わかりました』


 彼はそう英断した。なら後は俺がやることをやるだけで良い。何も考えずに、ただやるだけ。それで全て解決するから。


 スマホを置いて、俺は立ち上がった。


 真莉も寝静まった夜中。月明かりだけが俺を照らしてくれている。

 俺はゆっくりと窓を開けた。心地良い温度の風が、リビングに流れ込む。


 いい夜だ。三日月が俺を嘲笑うように煌めく夜。自分の欲望を満たすために田中を使った、最低な俺にはちょうど良い。


 努力はしない。もしどうしても努力しなきゃならない状況になれば、最小の努力でできることを選択する。これが俺の行動理念。


 今から俺がすることはこの理念に矛盾する点は……、無い。


 だから、大丈夫。何が大丈夫かなんてわからないが、俺はそう自分に言った。


 俺の目にふっと過去の幻影が映る。彼はあの時同じ選択をして俺を救ってくれた。あの時俺は選択を間違えたが、今度こそは間違えない。


 俺は窓を閉めて寝床へと足を運ぶ。明日に備えて。


 ベッドに横になって瞼を閉じる。瞼の裏には、ぼっち部の日々と扶桑花が、そこにはあった。

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