第22話 海の家最終日の彼らは海を堪能する
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ザバーっと、波がこっちに来て戻っていく。そしたらまた、波がこっちに来る。それを繰り返していた。
今日はいつもより涼しかったからか、昼を過ぎて二時頃になると、海の家の客はほとんどいなくなっている。
「暇だね~」
俺の斜め前に座っている結城さんが、ぐでーっとしながらそう呟く。それを聞いて隣に座る恋綺檄はうんうんと笑顔で頷いた。
一時くらいにはまだチョロチョロと人がいたが、今はその数人すらいない。一昨日と昨日がなんだったのってくらいに。
「海で遊んできたら~?」
結城さんはぐでーっとしたまま、さっきとまったく同じトーンでポロッとそう口にした。
間延びした声がフワフワと耳の中に入ってきて、数秒してからやっと俺たちは結城さんが何を言っているかを理解して、はっとする。
「え、いいの?」
控えめに恋綺檄がそう尋ねると、結城さんは後ろのレジにいる店長に目をやった。
「てんちょ~、いいよね?」
結城さんがそう言うと、店長は渋い顔でサムズアップをする。なんか妙にかっこいい気がするのはなんでだろうか。
「よし! じゃあ行こー!」
恋綺檄は笑顔でそう言って、ガタリと立ち上がる。胸が揺れてますわよお嬢様、と心の中で彼女に忠告した。
○
「それー!」
海の家から浮き輪なり水鉄砲なりを借りてきて、俺たちは遊んでいた。
俺は水鉄砲で銃撃戦を繰り広げている彼女たちを浮き輪でプカプカしながらボケーっと見ている。
うーむ、なんでこう美少女ってただ水遊びしてるだけで絵になるんでしょーかね……。
俺みたいな男が遊んでてもただ暑苦しいだけなのに……。いや、そういう界隈から見れば捗ったりするのだろうか? なにがとは言わない。
「これならどうだー!!」
恋綺檄がおもむろにもう一丁水鉄砲を取り出し、二丁拳銃のようにして撃ちまくる。
扶桑花は飄々とそれを全て避けていた。
「えぇえぇえ!? すご、なんで当たらないの!?」
「ふふ、当たらなければどうということ無いんだよ」
扶桑花がまるでドヤって擬音が見えるくらいなドヤ顔で言い放つ。
「なにそのセリフ、かっこいい……!!」
「いやそれシャア少しゃっ……、シャア少佐のセリフだからな」
噛んだー……。やっちゃったよめっちゃ恥ずかしい。あーほら扶桑花ちょっと笑ってんじゃねぇか。
「わ、笑うなよ。言いづらいんだぞ?」
「シャア少佐シャア少佐シャア少佐シャア少佐、どうだ」
このやろぉ……。わざわざ俺を恥ずかしめるために噛まずに言いやがった……。
「罰としてお前もこの戦争に加われ」
「は? やだ──」
カチャリ、俺背中に嫌な感覚がある。たぶん水鉄砲、けれど銃の形をしているからか謎に恐怖感がすごい。
「おま、ソ連兵かよ俺は!」
「ふふ、ならパラシュート無しで降下してもらおうか」
こいつ……、以外に知ってるな。俺は両手を挙げて降参し、浮き輪を海の家に返してから水鉄砲を交換するように借りた。
○
結果で言えば、惨敗だった。扶桑花の弾よけスキルとエイム力がやばすぎるのである。流石FPSで鍛えたえられているだけはあるな。
俺と恋綺檄が一緒になってもほとんど避けるとかどうなってんだよ、通常の三倍のスピードか?
「お前たちもまだまだな」
「全っ然悔しくなんかないぞ?」
腕を組んで呆れたように頭を振っている扶桑花にそう言葉をかけて、俺は買ってきた飲み物を二人に手渡した。
「……ありがとう」
「おう」
俺はそう言って椅子に腰掛け、ペットボトルを開けてゴクッと飲んだ。
冷たい体に冷たい飲み物が染みる。水に浸かってるとは言え、喉は渇くし。
空にシールを貼ったみたいな太陽が、ゆっくりと地平線に沈む。潮風が俺の頬をそっと撫でた。
「楽しかったね」
夕日を見ながら恋綺檄が笑顔でそう言う。それに扶桑花は首肯した。俺も扶桑花の後に続くようにコックリと頷く。
今日で夏休みの部活動は終了だ。海の家のバイトが終われば普通に何もない夏休み。そうしたら、もう夏休み中に彼女らと会うことは無いのだろうか。
そんなこと考えても仕方が無いと頭からその考えを振り払い、俺はライフガードを飲み干した。
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