第21話 彼は彼女の瞳が美しいと素直に感じた
こんにちは魂夢です。投稿のしすぎで死ぬわ……。
ドッカンドッカンと花火が上がる。その度に分厚い音が俺の胸を震わせた。
「くぅ~……、キーンってする」
かき氷を食べて、口をきゅっと結び、目をぎゅっとしながら恋綺檄はそう言った。なんか擬音多いな。
俺はかき氷を小っちゃなスプーンで上からザクザクと刺しながら、二人に尋ねる。
「次どうする?」
この祭りは規模が大きいからか、屋台が色々あった。フランクフルト、カステラ、輪投げ等々。
まぁ規模が大きいってことはその分人も多くて……。なんていうか、そのうち酔いそう。
「……ん」
かき氷を舌で転がしながら、扶桑花がとある屋台を指さす。射的だ。
「やめとけやめとけ、射的なんてどう頑張ったって獲れないって」
吉良吉影の同僚と似たような感じで、俺はそう言った。詳しくはジョジョの奇妙な冒険第四部ダイアモンドは砕けないを読んでね!
「獲れなくたって良いんだ。ああいうのは雰囲気を楽しむものだからな」
言って、扶桑花は一口かき氷を口に放り込んだ。シャリシャリと氷をかんでいる音が微かに聞こえる。
まぁたぶん、この辺は価値観の違いってやつだろう。雰囲気に価値を見いだすか、物に価値を見いだすか、その違いだ。
俺と彼女の価値観はもちろん違う。価値観が人それぞれなのだから、きっとバラバラに写るのが正しいのだろう。
「じゃあまぁ、行くか」
恋綺檄がうんと頷くのを確認してから、俺たちは射的の前まで足を運ぶ。
屋台の近くは花火とはまた違う、乾いた発射音が鳴り響いてる。
的は直角に折れ曲がったプラスチック板のようだ。大きければ大きいほど得点が上がるらしい。
俺たちはそれぞれ射的のおっちゃんに五百円と弾と鉄砲を交換した。
よくわからんレバーを手前まで引いてから、片目で的を狙う。目標をセンターに入れてスイッチ……。
引き金を引くと、乾いた発射音と共に固めのスポンジでできた弾が飛んでいき、的に当たって──────跳ね返る。
やっぱりー、あの的は固定されてるんでしょーか……。
「あ、やったー!」
恋綺檄が声を出す。そっちの方に目を向けると、さっき俺が狙っていた的と同じ大きさの的が、パタリと倒れている。
「え、まじ?」
ポツリと一言だけ口にした。俺は陽キャじゃないから、わざわざジャンプして大声を出したり、そんなことはしない。
まじ陽キャってなんであんなオーバーリアクションなの? 動いてないと死ぬの? マグロかなんかなの?
「どうよあたしの射的テェクニック! 羨ましいでしょー」
「いや全然まったく?」
恋綺檄はふふんとドヤ顔でそう言うので、俺はシラーッとした目線と共にそう言ってやる。
たぶんそこだけ固定されてないとかそんなんじゃない?
俺はその後もポンポンと撃つも、基本的に当たっても倒れない。扶桑花はFPSで鍛えたエイム力で小さい的をたくさん倒すことで得点を重ね、恋綺檄は調子に乗ってでかい的しか狙っていない。
彼女らは当たれば喜び、跳ね返ったり外すと悔しがっている。そんなのを尻目に、俺は最後の一発を鉄砲に詰めた。
○
射的で疲れた俺たちは、祭りの外れにあるベンチに腰掛けていた。
祭りの喧騒は聞こえるが、花火を邪魔するほどじゃない。むしろ少しの心地よさすら感じる。
「……美しいな」
扶桑花が、一言呟く。その言葉は誰に言うわけでもなく、自然に漏れ出た言葉なのははっきりしていた。
たしかに、美しかった。でもそれは彼女らと一緒に来たからのような気がする。昔当時の彼女と来たときも楽しかったが、その時とは比べものにならないほど楽しかったし、なにより花火が美しく感じる。
「ほんと、綺麗だよね」
恋綺檄がニッコリと微笑みながら、誰に向けた言葉でもない言葉に返事をする。
宙に浮いていた意味の無いに等しい言葉が、彼女の返事で意味を持ったように思えた。
俺は扶桑花の深紅の目を見る。彼女の目に映る花火は綺麗だ。けれどそれ以上に彼女の瞳が美しいと、この時素直にそう思った。
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