第2話 彼はそんな関係を求めない
こんにちは魂夢です。本日二度ですね!まぁ今日は大量に投稿するのですが……w
「あ、すんません。俺彼女とか別に欲しくないんで」
俺はできる限り冷たい視線を送るよう心がけ長ら、彼女にそう言った。
今のは本心だが、告白にも思えない謎のカミングアウトを断る理由を他にもあげるならもっとたくさんある。
というのも、男女の交際には努力が必要不可欠なのだが、俺は努力が嫌いだ。さらに男女交際の努力は数が多いときてる。
例をあげるなら、パートナーの趣味趣向ならびに性癖なんかも理解を示してあげなければいけない。
パートナーが落ち込んでいたら「大丈夫?」と聞かなきゃならんし、機嫌が悪い時はどうしたのか聞いた上で機嫌を取る必要がある。
しかも、機嫌が悪いパートナーに理由を問うと「なんでもない」といい、ほんの少し問い詰めれば「ほっといて」と言われ、そっとしとくとそれはそれでなんだかんだと裏で愚痴られたりするわけで……。
やっぱり俺に彼女は必要ないと思いましたまる。
「えっ。本気で言って、る……?」
「ええ、もちろん。俺まだあなたの事よく知りませんし」
さっきまでの自信満々な態度はどこへやら。しゅんとして彼女は尋ねた。
確かに外見は他の女性の追随を許さないほどの美貌を持ってはいるが、まともな思考をする人なら初対面の人が告白してきても断ると思うんだが。
断らないのは、それこそなんとしてでも彼女が欲しい奴か、女遊びをしているやつぐらいなものだろうと思う。が、それは俺の偏見だろうか。
「え、じゃ、じゃあ! 私の事教えてあげる! あたしの名前は恋綺檄 美嘉! 好きなものは────」
「いや、そういう事ではないんすけど……」
そういうことじゃないのだ。男女交際というのはゆっくりと仲を深めてから、それが花開く形で交際が始まる。
だからこそ互いを尊重し、互いの醜い特性を押し付け合い、そしてそれを許容する関係性を保つことができるのだ。
そうでなければ、立て付けの悪い欺瞞に満ちた関係や取って付けただけの偽物の理解などすぐに崩れて無くなってしまう。
どうせすぐに崩れ去る関係性を維持しようとあれこれテコ入れを繰り返して、その関係にだけ固執して延命措置を取り続ける努力をするなら、最初からそんな関係性に意味は無いのだろう。
だから、俺はそんな関係を求めない。
「じゃあそろそろ俺は帰ります。疲れてるんで」
俺は彼女、恋綺檄さんの横を通り抜ける。
その瞬間、良い匂いがしたんだが、なんでこんな良い匂いするんですかね……。やっぱり女の子ってそういう生き物なのかしら。
「ちょっ! ちょっと待ってよー!」
背後から声が投げかけられたが、俺は振り返らなかった。
まぁそもそも顔も名前も何もかも知らない人によくもまぁここまで話せたものだ。ただのおっさんとかだったら即警察にモシモシポリスメーンしてたと思う。
ともあれ、長く苦しい今日という一日も終わりだ。あとは家でゆっくりして、宿題やって風呂入って飯食って寝るだけ。
まぁ明日も学校があるんだけどね……。
○
俺の一日は朝、小さな目覚まし時計を止めることから始まる。
重い体に鞭を打ってベットから起き上がり、歯を磨いて、着替えてからリビングへ向かう。
「あ、お兄おはよ」
あいさつをしてくれたのは妹の真莉。俺にとっては憂鬱な朝に希望をもたらす一筋の光だ。
妹の作る朝食を食べなければ一日が始まった気にならない。
余談だが、我が家は両親が共に海外で仕事をするから日本にいないことが多い。大晦日なんかは帰ってきたりもするが、それ以外は基本的に帰ってこない。
故に、食事と洗い物は真莉の担当、洗濯とか風呂の掃除は俺の担当など、分担して家事をしている。
俺は真莉にあいさつして、席に座る。すると用意していたであろう朝食を俺の前に並べておいてくれる。
俺は小さくいただきますと言って香ばしい匂いのする朝食に手を付けた。