第九十七章・無礼な者たちとは俺たちのことだ。
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第九十七章・無礼な者たちとは俺たちのことだ。
ドルティス王は、さっそく本題に入った。
「お前たちは海賊討伐のために海へ出たそうだな」
「そうだ。死にかけちまったけどな」
「それで?海賊は退治出来たのか?」
この王は俺たちを試しているのか?
「一応話は着いたとだけ言っておくよ、王様」
「なるほどな。では退治はしてないんだな?」
俺は「ああ」と、答えた。
「すると、リリー・プラド・ハモレミストはまだ健在ということか」
「彼女から話は聞いたよ。この国、ルイ・イークが敵対しているダン・ルーエの国力を削ぐために、海賊を買収して仕事を与えてるってな」
ニヤリとして、そのまま表情を変えないドルティス王。
「その仕事とは、お前は知ってるのか?」
「全部聞いたよ。海賊艦隊によるダン・ルーエの軍艦襲撃だろ?」
「それを聞いて、お前はどう思った?」
俺がどれだけ知っているのか答えさせようとしているんだな。でも、俺は正直者だ。
「我が軍の軍事費は相当なものだ。だが、陸軍が中心で、海軍はそれほど金はかけられない。だから海賊を雇った方が安上がりなのだよ」
なるほどな。ルイ・イーク王朝は陸軍中心の軍事大国というわけだ。
「だから海賊を使ったテロを起こさせたんだ。これは分かるな?」
「ああ。分かるよ」
「海賊を使えば海軍に軍事費を使う理由もない。これは国策なのだ」
ルイ・イークは要するに、ダン・ルーエとのいざこざに海賊を使ったということだ。
そしてやがてはダン・ルーエと戦争するための陸軍の軍事強化を計るのが本当の目的だということだ。
「冒険者たちよ。冒険の時代は終わったのだ。今後は戦争の時代に入った。民の皆が平和に生きる時代も終わる。それがこの世界の現実なのだよ」
「それは魔王がいなくなったからか?」
「魔王は50年前に勇者たちによって倒されている。魔王がいた頃とも違う時代なのだよ」
「俺は元魔王の幹部たちといろいろ出会ったよ。魔族も皆、今はよりどころを探している奴らばかりだった。今は人間の時代になったんだな。それでも俺は、冒険を続ける。それが俺の冒険者としての生き方だからな」
ドルティス王は笑った。
「剣や魔法の時代はもうすぐ無くなる。我が軍は今では魔法科学に力を入れておるのだ。その力は軍事力を大きく変える」
「魔法科学?」
こいつは意外な話が出てきたものだ。
魔法と科学の融合か?
「想像してみたまえ。我が軍は最新兵器として、魔法科学で動く、世界で最初の陸上戦艦を開発したのだ。それこそが今の時代の象徴!軍事力なのだ。これで明日にはこの国の先住民族は全滅は必至!」
へえ、そいつは見てみたいな。戦艦か。
「それでも俺たちは、剣や魔法の力を駆使して戦うことを選ぶよ。魔王がいないんじゃ、もう冒険はやめたいとか思っていた時期もあるが、今でも倒さなくてはいけない連中がたくさんいることが分かったよ」
「やはり、威勢がいいんだな。我が軍に欲しいくらいの人材かもしれんな」
「そうか?」
「我がドルティスに啖呵が切れるのも、お前の力量の上か?」
「どうだかな?」
「お前は無礼な奴かもしれん。だが、あなどれんことは分かっているぞ」
「ではどうする?」
「世の中の矛盾に気付いたとて、その流れを押しとどめることなど出来はしないんだ」
「戦争は止めたい。それが俺の要求だ」
交渉できる相手ではないことは分かっていたが、それでも俺は言わせていただく。
「お前にダン・ルーエとの関係があるのか?」
「ああ、ある。俺の仲間のいとこの旦那の国だ」
「ん?何だと?お前の仲間のいとこの旦那とは、ずいぶん遠い関係だな。そのためにお前は動くというのか?」
「それが義理ってものだろ?」
「義理も人情も無い時代なんだぞ?」
「それでも俺は、そのために戦う。以上!」
「なるほど。危険な男だな、お前は」
「そう認知してもけっこうだ」
俺は正義の味方ってほどでもないんだが、悪い奴らは許せないってワケだよ。
「戦争したいのなら、まず俺としろ!」
無礼は承知。ケンカを売る俺。
俺のチートスキルと対決してみろ、コラ!
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