第九十四章・リューイチとコマドリ漂流記
これを更新したら、眠いのでちょっとだけ仮眠を取ります。
第九十四章・リューイチとコマドリ漂流記
ここがどこだか分からない。白い砂浜だったことは確かだが。ここに打ち上げられたのか、俺は?
俺は意識を取り戻した。死んだと思っていたのに意識があるということは、これは現実なのか?
それともここはあの世か?
生きてることに確証が持てない状況だった。でも生きてる。
こういうことは、やはりあるというのか。海に落ちてもどこかに打ち上げられるということを。
映画とかではよく見ることだが、俺にも起きることだとは‥‥‥。
泳げない俺が助かるなんて、神の救いだ。いや、この場合、女神ルシフィーネのことになるか。チートの俺の運の良さが幸いしたのだろうと思う。
で、ここはどこだ?
最大の疑問はそれだ。この場所はどうも、陸地のようだったが、ここがどこなのかも分からない。海岸があるのなら、海沿いのどこかか?
いや、違う。ここはどうやら島のようだ。無人島か?
いろいろな疑問を考えながら、立ち上がると、海岸を歩いてみる。三十分くらいで一周できた。
ああ、やはりここは人の気配のない無人島だった。島の中央に森があるだけだった。
俺は助かったが、イーゼルたちはどこだ?
俺は自分が倒れていたところに戻った。近くの岩場にコマドリが打ち上げられているのが見えた。気絶しているようだった。
俺は泳げないので、気おくれしたが、足が着く範囲ならば行って戻ってこれるかもしれない。
俺は水の中に足を入れると、ゆっくりと進んだ。足が着くと分かれば、どうってことはない。岩場にまでたどり着くと、コマドリの体を引っ張って、海岸に引き上げる。
俺はコマドリを寝かせると、人工呼吸をした。これはキスではないぞ。マウス・トゥ・マウスと言うやつだ。人工呼吸の経験はないが、たぶん空気を直接口から吹き込んで、胸を両手で圧迫するんだっけな?
思い付く限りの手順を踏まえて、人工呼吸を続ける。
突然、口から水を吐き出すコマドリ。成功だ!
呼吸を始めたコマドリ。だが、意識は戻っていない。
よし、もう大丈夫だ。このまま待てば、じきに目が覚めるだろう。
俺は一息ついた。人工呼吸はかなりの体力や息を必要とするものだ。
やってみるものだな。
さて、この島は無人島。他に生存者は見当たらない。でも、沈まなかった艦隊の船に助けられているかもしれないな。
この場には、俺とコマドリ以外には誰もいないようだ。
俺たちは漂流したんだな。
ここで無人島生活を始めるのか。楽しくなりそうだな。
ダ・ガールの剣があるのが幸いした。これだけでもありがたく思える。
嵐で生き残っても、ここで生き延びなければどのみち死ぬ。
チートでも空腹には耐えられない。食べたり寝たり、息を吸ったり吐いたりが出来なければ、たとえチートでも生きてはいられないのだ。
夕方に近くなった頃、コマドリが目を覚ました。
「ここは?」
俺は起き上がるコマドリを目にして、近寄った。
「おい、生きてるか?」
コマドリは俺に気付く。
「リューイチ、生きてたのか?」
「それはこっちのセリフだよ。お前は助かったんだ」
「わたしは溺れたんだ。渦に飲まれてな。でもどうして助かったんだ?」
「人工呼吸が効いたんだ」
「じ、人工呼吸?」
いや、言わなくてもいいことを言うのは、俺の性分か。
「ただの救命措置だ。気にすんな」
「いや、気にするだろ!」
「なんでだよ」
「だ、だってそれはその、口づけと言うやつだろう?」
「口づけってお前‥‥‥」
「わたしの初めての口づけの相手がリューイチ‥‥‥」
なんかショックを受けてるようだ。それはそれで傷つくなぁ。
「とにかく、俺たちは助かったんだ」
「わ、分かった。それで他のみんなは?」
それを訊かれると困る。
「正直、分からない。生きてるのやら、死ん‥‥‥、いや、それを言うのはやめよう」
「そうか‥‥‥」
「ここで二人だけで、助けが来るまで、待ってなきゃならない。どうする?」
「生き残るしかないだろう」
これから生存しなければならない。サバイバルってわけだ。
読んでいただいてくれる読者の皆様には大変感謝をしております!!読者様に良いことがありますように!!