第九十二章・リリー・プラド・ハモレミストの言い分。
ライトノベルの書き方にも慣れてきました。書くのが楽しく、面白いです!!
第九十二章・リリー・プラド・ハモレミストの言い分。
海賊船の一隻は、艦隊を離れた。この隙に攻撃することは、騎士道精神が許さないだろう。トゥエルは俺が連れて行かれるのを黙って見送った。
俺はチートだから、逃げようと思えば逃げられる。俺はハモレミスト号と書かれた船の甲板に立った。そして船室へと連れて行かれる。
船長室のドアから中に入ると、俺の前にリリー・プラド・ハモレミストが地図盤のテーブルにある椅子に腰かけていた。
海戦中だというのに、こんなに落ち着いている女海賊は珍しい。いや、特に海賊はそんなに詳しくないのだが。
「貴公が海軍の一味か?」
俺にそんなに興味のないフリでもしているのか、ツンとしているのが分かった。
「俺は冒険者のリューイチだ。あんたがこの海賊団の頭領、リリー・プラド・ハモレミストか?」
「そうだ。わたしから名乗っても良かったのだが、これは失礼した」
え?意外に律儀な挨拶をするんだな、と思った。
「それで、貴公は冒険者なのに、海賊狩りに参加するとは、やはり冒険することは人間にとっては冒険をどこかで望んでいるものなんだな」
「それは知らんが、どうせ今どき冒険ってのはもう、流行遅れもいいところってとこか?」
「そんなこと言ってない。むしろ、冒険には夢やロマンがある。だが、大抵の人たちは冒険よりも普通の生活を望むものだからな」
ほう。この人は、実は俺たちに近い存在なのかもしれないな。
まぁ、海賊やってるんだから当然かもな。
「それで貴公はパーレイで何を交渉する?」
「ああ、それね。実は俺はあんたたちの抹殺を頼まれたんだが、そちらの言い分も訊きたいんだが」
「我々の言い分?」
「そうだ。このままあんたを倒すのは簡単だ。俺はダ・ガールの依頼で来たのだが、あんたらは俺が言い聞かせたって、海賊やめるなんてことはないだろう?」
「それが分かった上で、何をどうする?」
「それで、どうして海賊行為なんかしてるんだ?」
少しの間、沈黙が訪れたが、リリー・プラド・ハモレミストは口を開いた。
「わたしたちは海賊行為なんて、ここ十数年やっていないぞ」
「え?でも、海賊だろ?」
俺は何か尋ね間違ったか?
「いや、海賊だが、我々が行ったのは軍艦とかを沈めることだ」
「どういうことだ?」
俺の疑問に答えるリリー・プラド・ハモレミスト。
「ダン・ルーエ王朝と仲の悪いルイ・イーク王朝からの下命で、ダン・ルーエの軍艦や商船、輸送船なんかを片っ端から潰しているんだ」
「え、何だと?」
「わたしの艦隊は無敵を誇る。それでダン・ルーエ王朝の軍艦を沈めていく。その海賊に目をかけてくれて、ルイ・イークからいつも大金をもらているんだ。それに見合った報酬だからな」
「ん?何かよく分かんなかったぞ。もうちょっとちゃんと説明してくれよ」
「ああ、悪かった。そうだな。ちゃんと説明しよう。要はルイ・イーク王朝から買収されて、ルイ・イークのために働いているというのが今の我々だ」
「つまり、海賊というより傭兵ということか?」
「まぁ、今はそうだな。もう海賊行為はそれこそ流行らない。食べていけないから、力のある国のお抱え海賊となって、その国に尽くしているんだ。軍備拡張させてもらった者として、ありがたく仕事を引き受けているだけだ」
「その、ルイ・イークという王朝からの依頼なのか?」
「そうだ。実は今の時代、海賊行為だけでは生きてはいないのだよ。それに何より、海賊狩りも昔よりはあまり行われていないが、いよいよ国と海賊との関係は悪くなる一方だった矢先に、その国が敵対する相手の国力を削るための、取引が行われたんだ。分かるか?」
「そ、そういうことか」
なるほどな。国としては海賊は倒すのには経費や軍事費や人件費がかかるし、それならいっそ、海賊を金で買収して、自分たちの傘下に置いておけば、いざとなったら戦力として使えるし、海賊行為もやめさせられるし、そっちの方が安心だということか。
それに都合が悪くなれば切り捨てることも可能。そういうことなんだな!
ってことは、元凶は別にいるってことじゃないのか?
俺はこの交渉で得た情報で、真の悪が誰なのかを知った。その上で、一時停戦をし、海賊討伐はここでは行わないという契約を結んだ。
政治に関わるのは好きではないが、俺に出来ることは限られていた。この女もあまり敵にはしたくないオーラも出てるし、それでいいか。
俺はすべてをトゥエルに伝えると、海軍艦隊は、一度撤退することにした。このまま戦っても全滅するだけだし、それに海賊に仕事をさせていたのはルイ・イーク王朝だと分かったので、俺たちの海賊退治は意味を失ったのだ。
帰る航海の途中で、俺はリリー・プラド・ハモレミストを討伐したと、嘘の報告を考えていた。
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