第九十章・女海賊リリー・プラド・ハモレミスト
今日の六時十五分に整骨院の予約入れてます。
第九十章・女海賊リリー・プラド・ハモレミスト
海図を確認するトゥエル。進路を探しているようだ。この先の海には大海原が広がっているだけで、周りは見渡せる。
前方、後方、左舷、右舷と確認する。
どうも海賊というのは神出鬼没らしい。静かに近づき、いきなり攻撃をしてくるとかなんとか。
俺は航海士じゃないからその辺のところはよく分かってないのだ。
海賊が出てきたら、一緒に戦う。それと交渉を手伝うのが目的だ。今回は戦闘は海軍の皆さんに任せよう。
餅は餅屋。海賊には海軍だ。
「リリー・プラド・ハモレミストっていうのはいったいどんな人物なんですか、トゥエル」
「ああ、最強の海賊ですよ。前にも話したかもしれませんが、海軍以上の船と戦力を所持しているんです」
「すごいな‥‥‥」
「まったくです。海軍に欲しいくらいの人材です。たった一人で海賊艦隊を率いて、およそ2000人のクルーを乗せて、航海しているという話ですし」
「略奪とか虐殺もしてそうですね」
「いや、連中はそういった話はほとんど聞かないですね」
「え?だって海賊でしょう?他の船から奪わない限り、食糧や物資はどうしてるんでしょうか?」
「それに関しては、わたしも疑問に思っています。なぜそこまで、あんな艦隊の人間を食わせているのか、謎です」
「これはキナ臭いですね」
「そうですね‥‥‥」
海軍艦隊は、さらに先へと進んで行った。コンパスは東を指しているようだった。
戦闘準備にはまだ早い。
船の者は皆、銃の手入れや、大砲の弾の数を確認しているようだった。
これから戦争が始まる。
海戦と言った方が分かりやすいだろう。
ぶつかるのは海賊と海軍だ。
俺にはある考えがあった。連中に接触する方法。それはまだ、明かさないが、俺に出来ることはそれだけだ。これ以上の血は流させないのが俺の流儀だ。
マストの見張りが、望遠鏡で遠くを見ていた。それは海の先の水平線だった。
見張りは素人ではないはずだが、とても初心者ではない者が、そのミスは許されるものではなかった。
遠くを見ていては、近づくものの接近には気づかないのだ。
海賊艦隊は、もうそこまで近づいていた。
俺がそれに気がついた。
俺は望遠鏡を借りて、見たいものを見た。やはりだ。近くにいる。
三十三隻の海賊艦隊が、トゥエルの海軍艦隊に接近しているのが見えたのだ。船には海賊旗ジョリーロジャーがマストの上で、はためいている。
「右舷に敵艦隊!接近しています!」
マストの上からロープで下に降りてきた見張りが、ようやく気付いたようだ。
こういうミスはなさそうで、けっこうあるのだ。見張りも大変なのだ。以前読んだ海賊小説で、そういうことが書いてあった。
「海賊接近!海賊接近!」
鐘を鳴らすクルーの一人。
ここからは本物の戦闘が始まるのだ。
俺は海戦前に望遠鏡で、三十三隻の船の一隻にいる、ひときわ目立つ黒髪で長髪の、凛々しい感じの女に気付く。
二十歳くらいの姿をした女海賊、リリー・プラド・ハモレミストとはアレのことだろう。
俺はその目を見て、恐怖を感じてしまった。チートの俺をひるませるとは、いったいあの女は‥‥‥。
つまり、それだけの強者だということだ。俺と戦って、相手が勝てるとは思わないが、それでも俺なんかよりもずっと死線をくぐり抜けた奴が持つ、眼力だということだ。
こいつは本当に手強い。そう確信した。
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