第八十八章・人魚たちの宴は捕食から?
ネタのメモ帳がいっぱいいっぱいです。読者の皆様には感謝でいっぱいです(笑)
第八十八章・人魚たちの宴は捕食から?
夜の航海は俺にとって、さらに不安にさせる雰囲気でいっぱいだった。何せ、夜の海は真っ暗で怖い思いしかない。落ちたら死ぬな。チートの俺でもさすがに死ぬ。
アップアップだけはカンベンな。
俺は甲板の下の船室へと入った。そこでは豪華な食事が用意されていて、皆が食事を楽しんでいる。俺も船酔いが治ってきて、軽い食事も取れるくらいには回復していた。
俺は適当に食事を済ませた。食えば大丈夫。別に船乗りから言うならば、酔っても吐いても、それでも食べなければならない、ということだった。それは当然かもしれない。腹に何か入れなければ、持たない。体力がどれほどいるのかは、この航海で分かった。
船乗りはすごい。食欲は人生の源なのだ。だから食べるのだ。俺はそう思うようにした。
海賊の前にこの海に慣れ、水に慣れて、航海にも慣れてから、やっと海賊にたどり着くのだ。
「みんな、夜は最小限の見張り以外は船の中にいるんだな」
俺の素朴の疑問。
その答えをトゥエルが言った。
「ああ、夜はこの海域には人魚が出るからな。危険なので皆、避難してるんですよ」
「人魚?」
「そうだ、人魚だ」
「マーメイドのことですか?」
「マーメイドというのか?別名は知らないが‥‥‥」
「いや、『人魚姫』っていう物語に出てくる人魚なんですが」
「それはおとぎ話なのか?」
「まぁ、おとぎ話ですね」
「現実の人魚は群れで行動して、夜行性で、夜になるとキバとツメで襲ってくる、人食いモンスターなんですよ」
「人食い?」
俺は人魚の化け物ヴァージョンをイメージした。
「そうなんですね」
「船を攻撃してくる奴もいるので、装備してあるライフル銃で撃ち殺すのが、奴らの対処法なのですよ」
ん?ライフル?
「この船にはライフルが用意されているのですか?」
「はい。火薬はオリエント経由で仕入れてまして、ドワーフが発明したのが起源となっていますけど」
「近代的だな‥‥‥」
「海賊も大量に持っているんですよ。銃弾や爆弾、大砲の弾もたくさんね」
「えっ、本当ですか?」
「海賊というのは皆、自分のイメージで思い浮かぶものしか想像できてないですね」
ん?どういうことだ?
「いや、海賊は海賊小説に出てくるのが、世間の持つイメージのようですが、本来の海賊は、客船や物資輸送船などを襲うのとはちょっと違う。金や銀だけを目当てに襲撃する者たちもいる。王族の船を狙って、人質にして、身代金を要求する海賊もいるんです」
「やっぱりロクな連中がいないじゃないか」
「王国の御用船としての海賊もいるんですけどね」
「そ、それってどういう‥‥‥」
「ああ、国の傭兵として活躍する海賊もいるのですよ。国が飼っていると言ってもいいかもしれません」
「王国がバックに付いているなんてな」
「海賊が手に負えない時に、買収するのも手だというものです。そんなのが相手ですから、我々海軍は、海賊は手に負えないでいる一つの要因なのですよ」
俺が観た海賊映画と違う‥‥‥。
「さすが、海のギャングだな」
俺はイメージの変わった海賊の本来の姿を思い浮かべていた。
と、突然海が荒れた。
「人魚が現れたな」
独り言のように、トゥエルは言った。
「奴らの宴が始まりますよ」
「宴?」
「ええ。人間の匂いを嗅ぐと、いや、捕食する男の匂いを嗅ぐと、連中は興奮するんですよ」
男の匂いに反応するのか‥‥‥。
ということは、俺も人魚からすれば、エサの一人ということか。食いはしても、食われてたまるか!
俺は戦うぞ!
海に落ちないようにな。
今日の更新はここまでにします。それでは今日は皆様、お疲れ様です!!