第八十二章・オイオイ、これはデートですか?〈後編〉
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第八十二章・オイオイ、これはデートですか?〈後編〉
俺とイーゼルは、高原にある巨大キノコを観に行った。ロマスというところの高原だ。
ランドバールからけっこう近いところにあった。街からは郊外に当たる場所だが。
その高原にはわりと人がたくさんいる。やはり観光名所なんだろう。人間も獣人族もエルフもいる。
屋台もたくさん出ていて、いろんな食べ物を売っていた。
さすがの観光名所だな。
こういうのも、たまにはいい。人生には休息も必要なのだ。せっかちに生きていたらアップアップになるからな。
俺とイーゼルは、まだ手をつないでいた。
俺のような元引きこもりの不登校な奴に、こんなイベントが今まであっただろうか?
確かに俺は、中学時代は女子にモテたこともある。
バレンタインにチョコをもらったことだってある。女子と一緒に学校から帰ったことだってあるのだ。しかし、どれも恋愛の域を出ることは無かった。積極的な女子が、誰とでも接することが出来るような子ばかりだったので、それで俺にもよく話しかけてくれたり仲良くなったりしてくれただけなのかもしれないと、今となっては思った。
もちろん、デートなんて一度もしたことないのだ。
いや、映画の試写会に女子を連れて行ったことはある。だが、その女子は他人に見られるのは恥ずかしいという理由から、変装をわざわざして待ち合わせに来たのだ。
俺と一緒のところを知り合いに見られて、勘違いされるのは嫌だということか?
かなり失礼な子だ。
俺はちょっと、その時はイラッとしたものだ。
その子によれば、これはデートではないということだった。
なんとも楽しくないイベントだったことを思い出した。
俺にはそんなストロベリーなイベントはもう、起こらないと思っていた。
しかし、今は俺の横にイーゼルがいる。
彼女だって、立派な女子だ。俺がこの子と一緒にいていいのだろうか?
女子に対してのトラウマを克服することが出来るのだろうか?
俺は、そんな思いを抱えながら、セカイダケの生えている近くまでイーゼルと一緒に行った。
「イーゼル、楽しいか?」
ちょっと訊いてみる。
「ええ。こんな巨大なキノコを見るのは、わたし初めてなので」
「そうか」
「リューイチは楽しくないのですか?」
「いや、楽しいよ」
そうは言ったが、俺の心臓は脈を打つのが激しかったので、あまり冷静にはなれなかったのだ。
「いやー、確かにこんな、空まで伸びているキノコなんて、俺も見るのは初めてだよ」
「天然の文化遺産に登録されているキノコみたいです。パンフレットにはそう書いてあります」
そんなパンフレット、どこで見つけたんだ?
「雷がよく落ちるらしいですね」
「まぁ、キノコってのは雷が落ちやすいって聞いたことあるな」
「これも植物ですからね」
「ああ。こんな巨大な菌類は育つのにすごく時間がかかっただろうな」
「ひとかけらでもいいので持って帰りたいですね。魔女の里では菌類は滋養強壮の薬になるのですよ。いずれ里帰りした時に、このキノコで作った薬を持って帰りたいです」
「いや、文化遺産だから、持って帰っちゃダメだろ」
変なところでツッコむ俺。
俺はなんだか幸せな気持ちになった。イーゼルとこんなに二人っきりっていうのは、今まで無かったしな。
巨大なキノコ様、ありがとう!な気分だ。
「このあとはどうする?」
「え?」
「いや、街に戻ってからだよ。コーヒーとか飲みに行かないか?」
「コーヒーってあの、悪魔や魔族が好んで飲むというアレですか?」
ああ、この世界でコーヒーの存在ってそうだったな。
「コーヒーは忘れてくれ。食事でも行かないか?」
「そうですね。お腹減りましたし、食事しましょう」
俺とイーゼルは、歩きながらランドバールの街へ戻っていった。
「やっぱりこれは、デートだよなぁ」
「デートって何です?」
「男と女が一緒に出掛けることだよ」
「それだけのことにそんな単語があるというのですか?」
「ああ。俺のいた世界ではな」
「デート‥‥‥。不思議な雰囲気の言葉ですね」
「そ、そうか?」
「はい。響きが良いです」
「そっか。やっぱデートでいいんだな」
「リューイチがそう言うなら、いいんじゃないですか?」
嬉しいこと言ってくれる!俺は感激してしまった。
今日はイーゼルとデートした。一生の思い出にしてやるぜ、コンチクショウ!!
その後、俺たちは、街のカフェで軽く食事をすると、帰りの列車に乗った。
良い日だったかもな。俺もイーゼルも。きっとそうだ。そう思う俺だった。
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