第八十章・動く重装甲車両の出現!!
録画していたテレビ番組を観ています。
第八十章・動く重装甲車両の出現!!
ゾロゾロと遺跡のあちこちから出てきたのは、巨大な軍隊アリの群れだった。見たところ、全長三メートル。こいつはデカい!
茶色の不気味な姿は、女性陣が嫌がるには十分の風貌だった。
俺も見た目の気持ち悪さは認める。でも、向かって来る奴らはこの場で倒さなければならない。
逃げる方が危険だ。こんな標高の高い山の頂上での戦いにはなるが、急いで崖を下りるには時間がかかるからだ。
「よし、戦闘開始だ!」
俺は皆に言った。
軍隊アリの数は十五匹だった。こんなところに生息しているのだ。俺たちは戦って倒さないと、エサになるのは目に見えている。
「こいつらのせいよ。ここに来た人たちがみんな、帰ってこれなかった一番の原因は」
と、ルルチェが言った。
なるほどな。こいつらの戦闘力がどんなものなのかは知らないが、登山家にはこいつらと戦うのは無理だろう。俺たちが冒険者で逆に良かったと思う。
「よし、イーゼル!ミサイルを思いっ切り食らわせてやれ!コマドリも忍者刀でぶった斬るんだ。ルルチェは氷の魔法が使えるだろ?それで奴らを凍らせるんだ」
「リューイチはどうするの?」と、ルルチェが言った。
「俺は剣で倒してやる!」
一番近くの軍隊アリにダ・ガールの剣を振り下ろした。
ガンッという鈍い音がして、剣が軍隊アリの体で止まる。
あれ?
斬り付けたのに斬れなかった。
こ、こいつら‥‥‥。
「どうしたの、リューイチ」ルルチェが声をかけてくる。
「いや、剣が効かない」
「何で?」
俺は下がった。
「こいつらの体、とても頑丈だぞ!」
「軍隊アリだもの」
「いや、モンスターとしての軍隊アリだ」
「斬れないの?」
「ああ」
「かなりの装甲ってこと?」
「そうだ。まるで動く重装甲車だ」
「すごく固いってことね」
「イーゼル、ミサイルを撃ち込んでくれ」
「用意は出来てますよ」と、イーゼル。
「やれ!」
「はい。ファイアウィル!」
イーゼルのミサイルが飛んでいき、一匹の軍隊アリにミサイルが撃ち込まれる。
爆発が起こった。
そのせいで、遺跡が揺れる。
ミサイルを使うと、シャーロット遺跡を巻き添えにしてしまうかもしれないが、でも今は、そんなこと言っていられない。
ミサイルはほとんど効いてなかった。軍隊アリは動けなくなったが、それでも倒したことにはならない。
俺はもう一度、軍隊アリに剣をぶつけた。やはりほとんど傷が付かなかった。
「ヤバいぞ。一匹たりとも倒せないじゃないか」
「ダ・ガールの剣が効かないなんて‥‥‥」
ルルチェは青ざめる。
「このままじゃ追いつめられるわよ」
「分かってる」
これではコマドリの忍者刀もダメだろう。下手すれば剣が折れる。
どうする、俺たち?
装甲が厚過ぎて、一匹も倒せない。このままだと逆にやられてしまう。
俺は時間がないのに考えた。考えが脳のアドレナリンを激しく高めた。
緊張も解けなかった。
こんな高過ぎる山の上で、しかも酸素の少ないところで、グズグズしてはいられない。
何か手があるはずだ。
俺はチートなんだ。こんな重装甲でもダ・ガールの剣が使えなくても倒せることは出来る。それには‥‥‥。
そうか!
俺は剣を納めた。
「どうした、リューイチ?」と、コマドリが訊いてきた。
「効かないのは剣だからだ。俺は素手でも戦える。というより、俺のチートスキルは拳でも強い。いや、剣よりも強いんだ」
「素手で戦うのか?」
「ああ。見てろ!」
俺は軍隊アリに、殴りかかった。俺の拳が装甲を貫いた。そして、投げてひっくり返した。軍隊アリの弱点が分かった。ひっくり返せば起き上がれない。
亀と同じだな。
俺は軍隊アリどもを片っ端からひっくり返す。逆さまになった軍隊アリは、バタバタと暴れるだけで何も出来ない。しかも、ひっくり返して分かったが、体の裏側には装甲がない。ウィークポイントは軍隊アリの腹の部分だ。
「コマドリ、俺が軍隊アリをどんどんひっくり返すから、忍者刀で腹を割ってくれ!」
「合点!」
コマドリは腹を見せる軍隊アリを、忍者刀でとどめを刺していった。
十五匹は骨が折れるし、酸素の薄さで息切れしたが、なんとか全部の軍隊アリをひっくり返すことに成功した。
あとはコマドリに任せよう。
軍隊アリは全部、コインへと変わっていった。
俺たちは勝ったんだ。生き残ったのだ、このエルドアード山岳の山頂で。
今回はちょっと疲れたかな?
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