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第六十二章・嫌われても生きていけ。

ちょっと体調崩しました。皆様も無理なさらぬようにしてくださいね!

第六十二章・嫌われても生きていけ。



 山里の集落というには、箱型で洋風な家が並んでいた。これはほとんどベッドタウンのようなものだ。これが集落と呼ぶものか?

 でも、人の気配はほとんど無かった。

「男たちは何をしてるんだ?」

 俺はフラーヴァに尋ねた。ちょっと直接的に聞き過ぎか?

「男たちは畑だ。作物を税として、ごっそりと持ってかれるんだ」

「なんで逃げない?」

「この里を残して去ることはできない」

「そういうものか‥‥‥」

 イジメで不登校になった俺には、あまり理解はできなかった。でも、そうか。俺は両親に甘えて家に引きこもったんだった。逃げるところはちゃんと確保していたのだ。

 たぶん、受け入れられる場所のない者たちは皆、そこに居続けるしかないのだろう。

それに、故郷を奪われるのは、確かに嫌かもしれない。家が放火されたりしたら、怒りより、まず愕然とするだろう。

「家一軒につき、一人の魔族が住んでいる。奴らは共存とか言ってるが‥‥‥」

 

 なるほど。他人が上がり込んで、そのまま居座られるのは我慢ならねぇかもな。

ずっと、こいつ誰?って思いで暮らさないといけなくなる。

たとえトイレの掃除を当番制でやってくれるとしても嫌だろう。


「それで、魔族の一番上の存在の奴はどこにいるんだ?」

「エミリディアはこの集落の上だ。わたしの家にいる」

「じゃあ、さっさと行って、片付けて、さっさと旅に戻りますか!」

 俺は持ってきたダ・ガールの剣を腰に、フラーヴァの家へと急いだ。

 こんな村ひとつ統治したくらいで、ふんぞり返ってるような魔族は追っ払うしかないだろう。

 フラーヴァが先に家に入り、魔族エミリディアを呼んでくる。魔族の女が出てきた。

「何だ?こっちはよく寝てたってのに、誰か訪ねて来たのか?」

 黒服のワンピースのドレスを着た魔族エミリディアが、外まで出てくる。

「何だ、お前らは?」

「俺は冒険者のリューイチ。あんたに用があって来たんだ」

「冒険者?」

 俺を見たエミリディアは、急に馬鹿笑いをした。

「アッハハハハハ!」

 こいつ、失礼な奴だな。何がそんなにおかしい?

「ぼ、冒険者って、アハハハ!ちょーお腹痛い!!笑い過ぎて死ぬ!!」

「そのまま死ね!」

 俺は言ってやった。

「今どき統べるべき魔王もいないってのに、なぜ冒険?ほんと笑えるわ!」

 うるせーな、この女。

「それ、ただのコスプレだろ?くだらなくてウケる!」

 魔族もホントにいろいろいるな。こんな雑魚、とっととやっつけたいぜ。

「あんたがここからいなくなれば、この村の人たちは助かるんだけどな」

「はぁ?バッカじゃないの?魔族がシメるとこシメてこその世の中ってモンでしょ?それで世界はバランス取ってんだよ?」

「魔族にそんな権利はない!」

「うるさいよ、小僧!」

 おっと、こいつは怒ったようだぞ。

 俺が剣を出そうとしたその時、ベアトリアースが、エミリディアの前に立ちはだかった。

「こいつの説得にはわたくしが臨ませていただくわ。リューイチは下がってなさい」


え?戦闘の用意はしてきたのに。まぁ、やる気があるわけじゃなかったけどな。剣が必要ないのなら、それはそれでいい。


「この土地はもともとはノーマンズ・ランドだったはず。誰もこの土地を所有物としていないのが前提ですよ。この土地を所有するのなら、それ相応のお金と権利を与える必要があるはずです。あなたはここの州に申し立てをする義務もあると思います。いかがですか?」

 ベアトリアースを見たエミリディアは、すぐにお互い魔族であると確信した。

「あんた、どこの魔族だよ?人間と仲良くしてるなんて‥‥‥」

「冒険者は復活したのですよ。このリューイチと、その仲間がそうなのです」

「冒険者が復活しただと?あんなヘタレ顔の男が?」

 こいつもか。こいつも言うのか?ヘタレとか言うな!ブチ殺すぞ、と物騒なことを思う俺。

「今、この時からこの集落を出ていかないと、冒険者たちが暴れることになりますが、いいですか?」

「脅しかい、幼女が!」

「これでもあなたよりは年上ですよ。わたくし、魔族のベアトリアースです」

「べ、ベアトリアース?聞いたことがある。あんたが?」

「この冒険者はわたくしに勝ったんですよ。あなたはもっと勝てないでしょうね」

「うう、そ、それでも、わたしは‥‥‥」

「こんな村、支配してるぐらいで、自分は強いつもりなのですか?わたしから見ても、あなたの方がもっと雑魚に見えます。ホント情けないですよ」

「ううっ‥‥‥、でも、だって‥‥‥」

「あなたは分かってない。力で統べてきたのは魔族も人間も同じ。わたくしたちは同類なのですよ」

「で、でも、わたしは支配してなければ、もっと落ちぶれて、嫌われていきます‥‥‥」

「誰から?」

「ま、周りから‥‥‥」

「嫌われても生きていきなさい!そんなことでふんぞり返ったフリするな!」


なんか知らんが、俺の出番なくね?


 一時間以上のベアトリアースの説教で、エミリディアはもう、折れていた。ってか、泣かしてる。すごい解決法だ!説教だけで勝つのかよ?戦いは?バトルは?全部なし?


 俺たち一行は、ベアトリアースのおかげ(?)で、そんなに時間がかからずに、そして戦わずにこの土地を取り戻すことに成功した。そんな馬鹿な!!


何だか分からんが、魔族を仲間にしてると、いろいろ便利だな。と、勝手に思う俺だった。


今日の更新はここまでにします。読んでくださる皆様には感謝しています!!

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