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第六十一章・オイオイ、盗賊と出会ってしまったよ!

朝早く目が覚めてしまいました。今になって眠気が。ああ、眠い‥‥‥。

第六十一章・オイオイ、盗賊と出会ってしまったよ!



 リューイチたちの馬車は、すっかり盗賊に囲まれてしまった。

敵は石斧やハンマーを持った連中だった。

 しかし、よく見てみると、盗賊の全員が女だった。

「女ばかりだ。いったいあんたらは何者だ?」

 俺はその女性たちに尋ねてみた。

 その中で、お頭と思われる、ひときわ目立った女が俺たちに言う。

「出すもの出したら見逃してやるよ!馬車ごと置いて行きな」


カツアゲか?


 俺は困った。馬車には結婚式のお祝いとして、けっこうたくさんのお金や宝石を馬車に載せているのだ。これらを取られたら困る

「まぁ待て。俺たちは冒険者だ。戦闘には強いぞ。おとなしく森へ帰ってくれ」

「そうはいかない。我々の山里には魔族の者が集落を乗っ取って、こうして働かないと命に係わるんだ」


魔族?


「何で魔族が?」

「お前たち、冒険者と言ったな?魔王が死んだのになぜ冒険が出来るんだ?魔族の残党はまだたくさん生きている。そいつらを倒してくれると言うのか?」


んな、別にボランティアみたいなことはしてないが‥‥‥。


「良ければ詳しく話してくれ。魔族ってのは?」

「魔王の元幹部クラスのエミリディアだ。勇者がやって来た時、荷物をまとめて夜逃げした魔族の女らしいんだ。50年くらい各地を渡り歩いて、その間に出会った仲間とともに、我々の里を乗っ取って、拠点にしたのだ」

「おばさん、あんたがこの盗賊の頭領なのか?」

「そうだ。わたしはフラーヴァ。盗賊をやっているのだが、魔族に支配された集落の村長の娘だ」

「そうか、フラーヴァ。俺たちは急いでるんだ。悪いけど、ここを通してくれ。カル・デール王朝へ行く途中なんだ」

「置いていくモンは置いていけ。わたしたちは盗人なのだぞ?」

「悪いが、あんたたちじゃ、俺たちにはかなわない」

「ふざけたコトを‥‥‥。こっちは四十人だぞ!」


 俺はイーゼルに声をかけた。

「イーゼル、何でもいいから魔法でこいつらを追っ払ってくれ。出来るだけ傷つけたくはないんだ」

「リューイチ、ヘタレもいい加減にしないと、冒険者の名が泣きますよ?」

「うるせーな」

「では、最近覚えた風の魔法を唱えます」

 イーゼルは暗記しているようだった。魔導書を開かずに呪文を唱える。

「フレストビー・エンデリュアール・コイネ・ザン」

 突然、ものすごい大風が吹き乱れ、馬車を囲んでいた女たちを風が飲み込んだ。

これはすごい!レベル上がったなぁ。

「これでもそんなに大風ではないんですよ。このレベルの風で魔族は吹き飛ばせません。人間相手のみです」

 盗賊たちの持っていた武器は、全部飛んで行ってしまった。

「どうだ、フラーヴァ。これが魔女の力なんだぞ。降参しろ!」

 地面に倒れていたフラーヴァは、驚きを隠せなかった。正直な顔でよろしい。

「こ、こんな魔法が‥‥‥?」

「俺の仲間の魔力だ。思い知ったか?」

「こ、これなら、あの魔族エミリディアを退けられるかも‥‥‥」

「え?」

「た、頼みがある。わたしたちを支配している魔族エミリディアを倒してくれないだろうか?」

「突然だな。俺たちから身ぐるみはがそうとしたくせに」

 その時、ベアトリアースが俺に「魔族の話が出たのなら、わたくしたちは無関係というわけにはいかないですよ」と、言った。

「おいおい、俺たちはまだ、旅の途中なんだぞ?」

「明後日の朝までにカル・デール王朝へ着けばよいのでしょう?」

「ギリギリだなぁ」

「言い訳さえ用意しておけば問題はないでしょう」

「言い訳って、オイ!」

「行くだけ行ってみるのです」

 俺は少し考えながら、それとなく仲間にも相談してみた。

「いいわ!」

 そう言ったのは、他でもないルルチェだった。

「いいのか?お前のいとこの結婚式なんだぞ?出席できなかったらどうする」

「魔族の支配なんて、時代遅れなこと、許しておいてはいけない」

「そうか。分かった分かった」

 俺たちは馬車を降りて、その集落っていう場所へと向かった。

 ベアトリアースが複雑そうな顔をする。

「わたくしの時もそうだったけど、魔族は今、生きづらい時代になったのですよ」

「つーことは、お前の時と同じパターンだったか」

「おそらくはですね。魔族のエミリディアという女とは特に面識はなかったけど、とても立派な政治家だったという話は聞いたことがあります」

「政治家が村を支配する程度にまで落ちぶれたってのか‥‥‥」

「まったく、魔族としては情けない話ですよ。でも、わたくしが言っても説得力はあるでしょうかね‥‥‥」

「いや、生きるってのは実は思ったよりもずっと大変なことなんだろうな。俺たち人間だろうと、魔族だろうと」

 俺は自分の非力さから、引きこもりになったことを思い出していた。


そうだな。生きるってのは生半可なことではないのかもしれない。それでも俺は、生きることを望む。



夕方にもう一回更新する予定です。よろしくお願いいたします。

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