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第五十六章・これは政治です。

ファンタジー冒険活劇を目指して書き始めたこの小説です。ファンタジーならではの名前を考えるのが大変ですね。

第五十六章・これは政治です。



 俺はまた、翌日から城内の中庭で、剣の稽古に励んだ。

足の捌きの練習を一時間。剣の素振りを一時間。その次はコマドリとの模擬戦。

さすがに疲れる。


休憩をはさんで、また稽古。


 今日は早く稽古が終わる。毎日キツイな。

「そういえば、ルルチェが最近、忙しそうに城内や城下を走り回っているみたいだな」

 と、コマドリが言った。

「どうして?」

「何でも、城下に行っては貧民窟へ行ったりしてるらしい。何か王様と難しい話もしているらしいし」

「そうなのか?じゃあ、ちょっと様子を見に行くか?」

「わたしも興味はある。でも、ルルチェは迷惑にならないだろうか?」

「それは分からないけどな」

 俺とコマドリは、城の中に入る。


*        *        *


 王の間にいた王様とお妃さまに、強く意見を言っているルルチェがいた。

何してるんだ?

ルルチェの声が聞こえる。

「だからお父様、城下には貧富の差で飢餓に苦しんでいる人たちがたくさんいるのです。前にも言いましたが、民はダ・ガールに怒りを感じているのですよ?」

「だがな、ルルチェ。この前のリタ・エールとの戦争で、国力が低下しているんだよ」

「あれもお父様が勝手に、リタ・エールのエルデとかいう王子との結婚話をわたしに振ったせいであるのですからね!」

「それも、娘であるお前のことを考えてだな」

「昔もそう言って、結婚の話でわたしは家出したんですよ?」

「あの時は大賢者の元で修行するというので、安心して任せたのだ。50年前に魔王を倒した勇者の仲間だったってことで、ご高名な賢者様だったからな」

「お父様の口利きはいらなかったです!」

「いや、そのおかげで今の賢者としてのお前がいる。お前には散々好き勝手させてやったんだぞ」

「お父様!」

「すべてを決めるのは儂だ。儂はダ・ガールの王なのだぞ!」

「娘に対してもですか?」

「そうだ。家族でもだ」

 ルルチェが言い負かされそうになっている。


 そういえば、カルデッド島の件の時に出会った、獣人族のリルエが言っていたな。

ダ・ガールでは貧富の差が激しいとかなんとか。


 ルルチェは飢饉で飢えている人たちを救いたい一心で、王に意見を述べていたのだ。

真面目なお姫様だな。でも、その心は立派だ。


「お父様は政治を重んじているわけではないのですか?飢えている人を見捨てて、何が王なのです?王としての誇りはないのですか?」

「お前は家族だが、それ以上に儂は王である!その発言、許さぬぞ!」

「では、わたしは姫です!」

「お前は一度、その地位を捨てた身だ」

「それで賢者になれたのですから、その点に関しましてはお父様には感謝しています。でも、今はわたしは賢者です。賢者は知恵と勇気を持った人間です。国の維持が苦しんでいる人たちの上で成しているのを分かって、見過ごすわけにはいないのです!」

「何を言う、ルルチェよ」

「民は自分たちの食い扶持もままならぬ身で。重い税を課せられているのです。このダ・ガールはそうして出来上がっているのはどう説明するのですか?返してあげてもいいお金を返さないのは王であろうと見過ごせないです」

「‥‥‥。ルルチェよ。お前は優しすぎる」


ルルチェは自分の意が通らない時は、ギロチン刑をモットーにしてるんだけどな‥‥‥。


「ルルチェ、政治はこういうものなのだ。分かってくれ」

「では、わたしも自分のやりたいようにやります。東の倉庫にある食糧は、すべて民に配ります。でなければ、本当に暴動が起きますよ!」

「バカな!暴動など起こさせるものか。我が軍の力、見たことはあるだろう?」

「民を見捨てるだけでなく、暴動を起こせば殺そうとするのですか?それが政治ですか?」

「お前には分からんのだよ、ルルチェ。王には逆らえないようにする。それが政治だ」

「いいえ。王は本来、民が選ぶもの。国民が国家を作るのです」

「何をバカな!民が政治を行うだと?」


ああ、国民国家のことをルルチェは主張してるのだな。この世界で民主主義とかは、まだ早いだろう。ここは中世真っただ中なのだ。一人の王がすべてを決めるのが普通だ。


ってか、ルルチェ姫はニュータイプだな。ちょっと感心してしまった。


 その時、王の間に衛兵が一人来た。

「王様!」

「どうした?」

「お話し中すみません。カル・デール王朝からの招待状が来ました。ポラリス姫がご結婚なさるとのことです」

「ポラリス姫が?まことか?」

「招待状がここに。ルルチェ様に来て欲しいとのことで」

「何?」


なんか、また新しい話が持ち上がったぞ。


「それで、いつだ、結婚式は?」

「一週間後の国民の日です」

「ならば、支度させよう。ルルチェのいとこの結婚式だからな。ルルチェ、すぐに旅の支度を」

「でも、お父様。まだお話が‥‥‥」

「儂はお前の意思を聞いて、想うところもある。お前が式に出る間に儂も少しは考えておこう。それでいいか?」

「はい。お父様がお考えられるのであれば、仰せのままに」

「では、行ってこい」

「それじゃあ、仲間も一緒に。いいですか?」

「それは構わん。お前の大事な仲間だ。ぜひポラリス姫に紹介してこい」

「はい、お父様」


 俺たちも行くんか。まぁ、ルルチェ不在でこの城にいるのもなんだかなぁだしな。

カル・デール王朝か。なかなか楽しみになってきたぜ!



たくさんの人に読んでいただいてもらっているので、とても書くのにやりがいを感じます。読者様にはとても感謝です!!

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