第五十五章・図書館での勉強はお断りしております。
読んでくださる読者の皆さん、どうかこの作品を、他の人にも宣伝(?)してくれると嬉しいです。もっとやる気になると思いますので。一人でも多くの人に読んでもらいたいです。よろしくお願いいたします。
第五十五章・図書館での勉強はお断りしております。
ある日、俺はダ・ガール城内を散歩していた。
この城は広い。どこに何があるのやら。散歩しながら見つけて確認していく。
そういえば、よくイーゼルの奴が朝食後に姿を消す。夕食前には現れるのだが。
その答えは、朝10時には開館する城内図書館でその姿を見つけて、分かった。
この図書館は朝10時から夕方6時まで開いているのだ。
イーゼルは日中、その図書館で魔法の勉強をしていたのだ。
俺が剣の稽古を続けている間、イーゼルはずっと、魔法の学習をしているのだった。
勉強にはベアトリアースが付き合っていた。
ベアトリアースは魔族の中の魔族だ。彼女自身には魔法を使う力はない。しかし、実は魔法の研究を以前からしているので、魔法の兵法版というところか?そんな意味でイーゼルの勉強を見ていたのだ。
頑張り屋なところがあるイーゼルは、熱心に勉強をしていた。
分からないところがあれば、ためらいなくベアトリアースに質問していた。
俺は図書館に入って、ちょっと冷やかしに行った。
「よう二人とも!本来、図書館で勉強はお断りになってるんだけどってのが、俺の世界の図書館の習わしなんだけれどな」
ベアトリアースは俺の冷やかしに気付いた。
「ここはあんまり人が来ないから、勉強するには最適な場所なんですよ、リューイチ」
ベアトリアースが迷惑そうな顔をしながら言った。
「そっか」
「お前は何をしてるのですか?今日の剣術の修行はどうしたのです?」
俺は頭を掻きながら、「今日は骨休みなんだ。コマドリの奴が、たまには息抜きしろって言ってきたんだよ。だから、俺は今日はフリーなんだ」
「まぁ、お前は別にいてもいなくても、わたくしには疲れない相手なのだけれどですけれどね」
ま、そうか‥‥‥。存在薄いってことか?
地味に傷つく。
「俺はイーゼルの様子を見に来たのだが」
「なぜこの子なのです?」
「イーゼルは俺の最初の仲間だからな」
「お前な。変な心配は無用なのですよ?」
「イーゼルも骨休みくらいしろよ」
イーゼルの耳には届いていないようだった。
「それを決めるのは、先生であるわたくしですのよ」
ベアトリアースがドヤ顔で言う。先生か。言うようになったな。
それに、黙々と勉強に励むイーゼル。聞こえないふりでもしてるのか。
「イーゼルは聞いてないのか?」
「違う。この子は怒っているのですよ」
「はぁ?誰に?」
「ホントに無神経で空気読めない人なんですね、お前は」
「なんだよ?」
「お前がここ二週間以上も、この子の相手してあげずに、あの女忍者とイチャイチャしてるから、この子は怒っているのです」
イーゼルの手が止まった。
「ち、違うのです。わたしはそんなこと‥‥‥」
「夫婦ゲンカは犬も食わぬですね。わたくしは席を外しましょう。イーゼル、今日はリューイチと一緒に過ごしなさい。いいですわね?」
「え、あの。そんな‥‥‥」
イーゼルは座ったまま慌てた。
「ベアトリアース、こ、困ります!」
「いいから、この男の相手をするのですよ」
そう言い残して、ベアトリアースは去ったしまった。
「おいおい、俺はどうすればいいんだよ?」
「リューイチ、ここは図書館なんですよ。声は静かに!」
「え?あ、ああ」
俺はイーゼルの向かいに座った。
「いつもずっと勉強してるのか?」
「はい」
「夕方までか?」
「ええ。閉館時間までずっとですよ。だからリューイチにはつまらないかもしれないですよ」
「え?どうしてそう思うんだ?ここは図書館だし、俺だって本ぐらい読むぞ」
俺は生前、読書家だった。読書の秋とかあるけど、一年中、本は読んでいた気がする。中でもミステリーはよく読んだ。軍事スリラーや、法廷もの、それに実話ものにファンタジーなども好んで読んでいた。
まぁ、さすがに魔法の本や魔導書などは読むわけはなかったが。
「それで、イーゼルはどんな勉強をしているんだ?」
「当然、魔法関係です。前にも言いましたが、わたしは暗記がまったく得意ではないのですよ。ルルチェと違って」
なるほど。暗記か。そもそも勉強イコール暗記というものが学習の定番ではあるが。
歴史の勉強とかは本当に暗記の領域だ。そういや、俺も暗記は苦手だったかな?
歴史で言うなら、俺は世界史が大好きだった。日本史のは興味がなかったのだ。しかし、世界史を選択したのになぜか俺は、日本史のクラスに入れられてしまったのだ。どうしてかは後になって分かったのだが。
俺をイジメるヤツが世界史のクラスにいたので、教師陣が問題が起こらないように、俺に世界史を選択させないように誘導させられたのだった。
俺はそのせいで、苦手な日本史クラスに入れられた。
おかげで成績は中の下になり、さらにそのクラスでも違うイジメっ子が、俺をイジメてきたのだ。
学校には良い思い出がない。
だから俺は、引きこもりになったのだ。
「イーゼル、俺はお前のことを尊敬してるよ」
「いきなり何です?」
「いや、気の済むまで勉強してていいよ。俺は本でも読んでる。閉館時間まで付き合うよ」
「リューイチはそれでいいのですか?」
「ああ。今日だけはいいんだ。俺はここにいる。だから勉強を頑張ってくれ」
「分かりました。ではお言葉に甘えまして」
イーゼルは勉強に戻った。しかし、彼女は緊張でもしてるのか、勉強の手が少し、震えていた。
読者の皆様に幸あれ!!