第四章・また戦うのか、俺は?
手探りのファンタジー。異世界転生チートものってこんなんでいいのかな?
第四章・また戦うのか、俺は?
今度は女忍者かよ!ってかこれ、くの一って言うんじゃないのか?
まぁ、それはどうでもいい。
またケンカを売る輩が現れるとは。
コマドリとか言ったな。
俺たちはただの冒険者と思われている。いや、確かに冒険のぼの字もまだしてないというのに。ってか、この世界に冒険という二文字はもう廃れている。なのに……。
でも若い魔女と二人だけで旅とか不安定だし。
本当に冒険できるのか俺は?
ってか、こいつと戦闘を始めるのか?いや。
やめるか………。
「いや~、忍者さん。何か誤解があるようですが、別にあなたを狙ったわけではないいんですよ。俺たちちょっと道に迷った、ただの旅人です。ですから……さっきのもただの誤射でして、許してくれないかなぁ?」
「あんた腕に自信があるようだな、え?旅人!わたしと戦う意思があると思いきや、なぜそんな慇懃無礼な態度で誤魔化す?そなたの剣はわたしの手裏剣を防いだ。只者ではないだろう」
このコマドリとかいう女、マジで戦う気か?
敵がモンスターやドラゴンだったら戦ってもいいが、これは違うだろ!
「いや、もう冒険はやめました。ってか、そっちもやめとかない?もう魔王はいないんだよ?これから冒険したってヒマな旅が続くだけだって。ホント、ねぇ」
そうなのだ。俺とイーゼルは冒険というより、ただの旅に出るだけで、それ以上でもそれ以下でもないのだ。仕方なく町を出ただけだ。この草原にいるのもただの偶然に過ぎない。だが、あの女忍者は分かろうとしてくれない。それだけだ。
「いいか愚者!よく聞け。わたしの村では毎年イナゴの大群が畑を荒らすんだ。でも、レベルの低い者たちでは駆除できない。だからレベルを上げようと、わたしは冒険に出たのだ。魔王がいないなら、町で募集のビラでも貼ってみようではないか!魔王になりたい人、募集中とかな」
何か、この人アホなこと言い出したぞ?なんて幼稚な。しかも自分のレベル上げのために旅に出ただと?
間違っちゃいない、間違っちゃいない。だが、どこかの何かが、すごく間違っているようだ。
「あっ、後ろにオークが!」
俺は大声で叫んだ。いちいち戦うより、逃げるが勝ちさ。誰でも倒していいわけではあるまい。あっちが振り向いている間にこっちは逃げるだけさ。俺のチート能力はケンカに使うものではない。戦えば、余裕で勝てるだろうが、それだとただのイジメだ。そんなのは一番嫌なんだ。
が、その時、俺の背中に素早く身を隠したのは誰でもない、コマドリだった。
何という速さだろう?
「おい、何で俺の後ろに隠れる?」
「何でって、オークがいるのだろう?」
「いや、いねーよ。オークにビビるのか、あんたは?」
「計ったな!」
「いやいやいや………」
ひょっとして、チキン肌かコイツ?
* * *
コマドリはうずくまってしまった。
「わたしのバカ!レベル5の弱小忍者なのに、どうしてこう、ケンカを売るような性格に生まれてしまったのだ?」
「レベル5かよ」
「そうだ」
そう言うと、コマドリはステータスカードを俺とイーゼルに見せてきた。
コマドリ 17歳 女
職業 くのゼロ レベル5
HP 55
MP 0
攻撃力34
防御力20
素早さ48
知力 17
体力 22
魔力 0
運 9
「このカードはここから北へ二日の距離にあるトリュトの村の古いギルドで登録した時にもらったものだ。それがわたしのステータスだ」
なるほど、素早さだけは超高いな。でも、まだまだ駆け出しの女忍者ってわけだな。
ん?くのゼロって、職業は一体なんだ?
俺はそれをコマドリに伝えた。
「ああ、それは、わたしがくの一としてダメダメだから、付いたあだ名だよ。ゼロって何もないってことだろ?」
こいつ、憐れだ。里でも立場のない存在だったのだろう。嘆かわしい。でもそこがいい。
生前の俺を思い出す。俺もイジメられていた時は、龍カスとか呼ばれてたもんなぁ。
こいつは仲間に入れよう。
俺とイーゼルで話し合って決めた。
そして、めでたくコマドリも仲間に加わってくれた。
「かたじけない。わたしのようなヘタレ忍者に」
「いいってことよ。でもなぁ、それでもヘタレは何とかして克服してくれよな。あんた、武器は手裏剣の他には?」
「ああ、忍者刀がある。わたしは逆手持ちなのだがな」
「そうか。じゃあ、冒険は無理でも、ただの旅に出ような。何とかすりゃ経験値も上がって、レベルアップしていくだろ」
そんなこんなで、俺は魔女のイーゼルと、女忍者のコマドリを仲間にすることができた。
まぁ、不安しかないが………。
ファンタジーはやっぱり、まずはオークだよなぁ。