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第四百七十章・魔王エイール

とうとう魔王を出してみました。

第四百七十章・魔王エイール



 最上階は殺風景だった。

大きな広間のようなところを通り抜けた俺たちは、玉座の向かう。

年老いた白髪の長髪男が、黒いマフラーを首に巻いて、玉座に座っているのが見えた。

あれが魔王か?

「あんたが50年前に魔王を倒したという、崇高な元勇者さんか?」

 俺は近づいて尋ねた。


「お前らは誰だ?俺はエイール。魔王エイールだ」

 やっぱり魔王なのか‥‥‥。


「俺たちは冒険者だ。勇者リューイチ!」

「何だと?この平和なご時世に冒険者?魔王は俺たちが50年前に倒して、葬ったのだぞ?なぜ今さら‥‥‥」


 まぁ、魔王はいないと思っていたからな。

 実際、エイールが魔王になる前は、魔王いなかったんだし。

 てか、あんたが討伐した勇者だったのに、今は自分が魔王になったって、どういうことだよ?

 それに、そんなにキナ臭い感じがしないのは何でだ?


「どうしてあんたが魔王に?」

「魔王を討伐してから俺は、いや、俺たちは英雄になった。だがしかし、数年経てば、人の心も変わる。俺は命を賭けて戦い、倒したというのに、世が平和になって、モンスターたちも静かになったし、魔族も行き場を失い、民は喜んだのもつかの間、俺たちのことはすぐに連中に忘れられたのだ」

「英雄じゃなかったのか?」

「英雄になったのは数年だけだ。あとは平和になってから、民衆たちが興味を持ったのは、どっかのアイドルたちで、48人くらいいる女の子たちの総選挙に熱を上げ、歌が聴ける円盤型の魔道具の十枚買いやら、握手会やら、ライブコンサートやらが流行り始め、俺たちの存在はすぐに忘れられたのだ」


 何ということだ‥‥‥。

 それは気の毒い!


「それからどうなったんだ?」

「俺はそれからいろいろやった。ヨガ教室を始めたり、山で修行して、酔拳を極めようとしたり、芝居の殺陣師になったり、海賊王を目指したり、いや、海賊王は古いか。黒歴史だ。スマン。忘れろ。つまり、何が言いたいかっていうと、英雄が普通の暮らしを望んでもダメなのだ」


 なるほどな。

 マジで気の毒い。


「魔王がいなくなったおかげで、俺は生き甲斐を失くしたんだ。民も誰も俺のことを尊敬してくれない。歴史に残ってるということだけだ。それ以外は惨めなもんだ。分かるか少年?」


 分かる。

 スマン、俺は分かるよ。


「あんたが望んでいることは、民への復讐か?」

「そんなつもりはない」

「でも、恨んでいるんだろ?だから魔王になったんだろ?」

「違う」

「で、でも‥‥‥」

「俺は新魔王になって、世界を統べたいだけだ」

「帝王になるつもりか?」

「そう言った方が分かりやすいな。世界を一つにまとめたいだけだ」

「それを支配というんじゃないのか?」

「違う!国がたくさん出来てから、人間は変わってしまったのだ。戦争や重い税、ブラック企業、過労死。ロクな世界じゃない。魔王がいた頃は、人間もそんなんじゃなかったというのに‥‥‥」


 だんだん分かってきた。

 この人は世直しがしたいのだ。

 今度は勇者ではなく、魔王として。

 これはアレだ。

 俺と同じ、偽悪的というヤツだ。


 まさか、元勇者、いや、新魔王が俺と同じだとは‥‥‥。


 世間は狭いな。



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