第四百六十五章・イーゼルの選択〈後編〉
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第四百六十五章・イーゼルの選択〈後編〉
イーゼルはためらっていた。
それは当然のことだ。
狂鬼病にかかるのは、俺かイーゼルかだ。
俺は狂鬼病を引き受ける。
イーゼルに苦しい思いはさせたくないのだ。
俺が苦しんで、イーゼルが幸せになるのなら、俺は構わない。
イーゼル、俺を倒すんだ!
その時、イーゼルはかぶりを振った。
「出来ません!」
イーゼルはきっぱりと、そう言った。
「この病はわたしのものです。リューイチが責任を取ることはありません。わたしはこの病と一生付き合っていきます。それがわたしの答えです」
イーゼル‥‥‥。
「だから、すいません!わたしはリューイチを愛してます。彼はわたしのすべてなのです」
それは優し過ぎるのではないか?
魔法使いのメルは、フッと笑った。
「なるほど、良い仲間なのね、お互いに」
この老婆は、俺たちを試したのか?
「その答えも間違いではないわ。狂鬼病を治す方法は、実は無いのよ。あなた方を試して済まなかったと、お詫びするわ」
「何でこんなことを?」
俺はメルに尋ねた。
「あなた方が、本物の勇者なのか知りたかったのよ」
「本物の勇者?」
「そう。冒険者であり、勇者」
「俺たちは勇者なのか?」
「そう言ってるでしょ?あなた方は勇者よ」
「でも、今の時代に勇者ってのも‥‥‥」
「実は魔王の城の玉座に、新しい魔王が座ったのよ。あなたたちはいろいろモンスターや魔族と関わって来たでしょう?」
そう言われてみれば、普通に冒険の最中に敵のモンスターとかと戦ったな。
あれは魔王の仕業だったのか?
「新しい魔王を倒してくれる?」
メルはニュートラルに言った。
「新しい魔王って、どんな奴?」
俺は一応訊いてみる。
「50年前に魔王を倒した勇者よ。今は魔王となって、グレン城にいるわ」
50年前の勇者だって?
そいつが今は、人間の敵として、魔王となったのか?
「その勇者の名は?」
「元勇者、エイールよ」
エイール‥‥‥。
「そのグレン城はどこにあるんだ?」
「未開の地の雪山の頂上よ」
「そいつを倒せばいいんだな?」
「その通りだけど、以前の魔王を倒したくらいだから、かなり強いわよ」
「どうして俺たちにそんなことを教えてくれたんだ?」
「新魔王討伐に、もう冒険者が廃れた今、倒してくれそうな人が、あなた方くらいしかいないからよ」
大層な理由だ。
だが、俺たちが冒険を始める前に、魔王がいなくなってから、冒険やめた最初の世代ってことか。
勇者が魔王になるなんて、逆に定番だろう。
そんなテンプレ、俺が砕いてやる。
というか、それが最後の旅、いや冒険になるかもしれない。
究極のラストバトルをありがとう、元勇者!
行くところは決まった。
グレン城だ!!
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