第四十四章・魔族との戦いではない!!
今日は別に仕事が入って、今日の分はこれだけで失礼します。一日に二回更新を続けていますので、よろしくお願いします。
第四十四章・魔族との戦いではない!!
トロールは北欧の妖精の類だと俺は聞いているが、ゲームの中では巨人の大男で知性に乏しいが、その体躯から魔族の一種として登場することが多い。
この場合もそれの一つだ。
足回りの遅いトロールを、速さでかく乱するコマドリ。
呪術師は攻撃魔法などはいっさい使えないが、呪いの呪文で相手を呪い殺すことが出来る。もし呪いが発動すれば、即死決定だ。しかし、もし呪いを返し呪文でひっくり返せば、逆に相手に呪いがいく。それを狙うのが基本の戦術だ。ルルチェは基本の魔法に忠実に相手に対処していった。
魔法使いは魔女とは少し違う。魔女なら薬を作ったりするが、魔法使いは強力な魔法の使い手だ。魔力も多く、使える魔法も威力がすごい。魔法を使えば、強い戦士であろうと、赤子の手をひねるように倒されるのだ。イーゼルは魔導書を必要としない簡易魔法でその場をしのぐ。勝たなくてもいいのだ。ここで相手を足止めさえしてればいい。
* * *
俺とリルエは、宮殿の二階のダンスフロアに出た。そこにいたのはちっこい娘がいた。頭に二本の角が生えている。そしてしっぽも。
「あれが‥‥‥ベアトリアース?」
俺はその子と対峙する。
「ようこそ、カルデッドの宮殿へ!わたくし、ベアトリアース・フェルベという魔族の者で、元魔王の幹部です。魔王様はもう50年前にお亡くなりになりましたので、魔族もそれぞれ解散して、それぞれで生きています」
「ほう、じゃ、あんたは?」
「わたくしはこの世界が、人間の天下となった今は、人間の用心棒として雇われているのです、わたくしの部下も含めて」
「下の階にいたトロールや呪術師や魔法使いのことか」
「ええ。わたくしと一緒に人間様に雇われることになった、わたくしの可愛い部下たちです」
「魔族はもっと、誇り高い奴らだと思っていたんだけどな」
「誇り?そんなもので生きていけますか?人間の寿命は70年が限度ですが、わたくしたち魔族は300年はざらに寿命があって、生きていけるんですよ。それでも結局、人間様にはかなわなかった。それが現実ですの」
「なるほどね。それで今は、力のある人間のもとで働いてるってワケか。魔族も大変だねぇ」
ちょっと皮肉が入っていたか。いや、関係ねぇ。
「言っておきますが、かつて魔族がこの世界を支配していた頃は、秩序が守られていました。魔族も人間の普通の生活には手を出さなかった。魔族を襲う者だけが魔族の餌食になるってだけでした。人間を奴隷にするようなマネはしなかったのですよ」
「でも、この島では支配してるだろ?」
「いいえ、ここを治めているのは人間ですよ?」
ああ、そういえばそうだった。リタ・エールの王子の一人だったな。
「本当に怖いのは、魔族でなく人間だってことか‥‥‥」
「そうですわね。リタ・エール・ド・ドーゴン様はこんな魔族の者でも使ってくださいました。わたくしたちにとっては本当に、感謝しかありません。やってることも魔族と似たようなことですから。支配なんて人間すらやるもんでしょ?人間ほど恐ろしいものはいない」
これが魔族なのか?ゲームの世界と全然違うな。本当に倒すべきは人間の方だってヤツか。それもどっかで聞いたような話だ。
「じゃあ、俺たちの本当の相手はその、リタ・エール・ド・ドーゴンだな。そこを通してくれないだろうか?そいつが今、この島の人間や獣人族を、力で支配しているのは事実だからな」
「いいえ。それでもわたくしたちは、用心棒として雇われている身。通すわけにはいかないのです」
俺は、なんとかチャンスをうかがっていた。
戦うべきはこの娘ではない。黒幕のリタ・エール・ド・ドーゴンだと分かったからだ。
「おい、リルエ、お前時間稼ぎは出来るか?」
「え?」
「あいつを引き付けておいて欲しい」
「どういうことだい?」
「お前が引き付けている間に、俺は先を急ぐ。あの先にあるドアの向こうにリタ・エール・ド・ドーゴンがいるはずだ。本当に倒すべきはそいつなんだ。雇い主さえいなくなれば、みんな戦う意味はないはずだ」
「なるほど!それで時間稼ぎか」
「ああ。危険だがそれしかない。俺の仲間もそうしてるんだ。ここはお前に任せたい」
「あいつが何を使う魔族なのかは分からないが、用心棒の総大将だからなぁ。あたいの職業は盗賊だ。どう出ればいい?」
「ちょこまかと逃げ回れ。それしかない」
よし、チートの俺が、まず相手の能力をを確かめてやる!
俺は剣を抜いて、ベアトリアースに斬りかかる。
と、その時、ベアトリアースの指先から銃弾が飛んできて、俺の足に当たった。
チートの俺は、少しのケガで済んだが、こいつはまさか、指先から鉄砲の弾を飛ばすことが出来るスキルの持ち主なのか?!
俺は、ベアトリアースにそのまま斬りかかった。
バリヤが張ってあるようで、剣はベアトリアースに当たらなかった。
しかし、バリヤにヒビが入った。
俺はもう一度、バリヤのヒビ割れに剣を振り下ろす。
今度はバリヤが壊れた。
それにはベアトリアースは驚いているようだった。
チートなめるな!!
もう一度、バリヤを張り直すベアトリアース。
それも俺が剣で壊してやった。
「お前、わたくしのバリヤを破るとは、いったい何者?」
「俺の名はリューイチ。冒険者だ。覚えておけ!」
「冒険者?今どき冒険ですか?流行らないダサい、そしてわたくしにとっては宿敵のような存在ですわね」
「ああ、そうかもな!」
その隙に俺は、ベアトリアースを横切ると、先のドアへ向かった。
「あっ、ダメ!そっちに行くな!!」
リルエがその瞬間、ベアトリアースにキックをかます。
「あんたの相手はあたいだよ!」
リルエが相手になっている間に、俺はドアを開けて、執務室へと入っていった。
「リタ・エール・ド・ドーゴン、俺が相手だ!いざ、尋常に勝負!」
一日に100人以上の方が読んでいらっしゃるようなので、本当に心から感謝しております!!とても嬉しいです!!読者様に幸あれ!!