第四百六章・ムサシのクニ
今日は18時から、予定がありますので、早く更新したいと思います。
第四百六章・ムサシのクニ
俺たちは、村民の長に出会ったのだ。
相手の顔を見れば、そうだと分かる。
よくいる長老的な感じとは違うイメージの、大男だった。
「君らはどこの誰だ?」
矢を構えたままの、その男は、はっきりとした声で訊いてきた。
なるほどな、リーダー的なカリスマ性を放っているようだ。
「俺はリューイチ。ダ・ガールの冒険者だ」
「ダ・ガールだと?ダ・ガールに君らのような格好の人間はいない」
ダ・ガールを知っているのか?
「いや、冒険者なんだよ。これはその格好!」
「見たことないな。本当にダ・ガールの人間なのか?」
まぁ、勇者の格好の俺に、コテコテの魔女、忍者にしては忍びの格好でないくの一に、ローブを纏った姫であり、賢者でもある女の子。
疑うのも無理はない。
「怪しい者じゃない。ここへは定期便の船で来たんだ」
「船は主に貿易に使っている。その船に乗り込んで来たというのか?」
「ああ」
「ここはムサシのクニだ。知ってて来たのか?」
「まぁな。ムサシのクニってのは、この島で唯一の村なのか?」
「違う。山を越えればもう一つのクニがある」
「え、そうなのか?」
「ヤマトのクニだ。互いに干渉はしないようにしてるのだ」
「違う村だからか?」
「いや、そうじゃない。クニが違うからだ」
そこまでクニってのがハッキリ別れてるものなのか?
「ムサシのクニに世話になってもいいか?」
「目的は?」
「う~ん、そうだな。新しい草履と剣が欲しい。代わりに何か、してやれることはする。それでどうだ?」
「この村が抱えているのはただ一つ」
「何だ?」
「村を襲うと脅してくる、オロチの山の化け物を退治して欲しい」
「化け物?」
化け物といえば、冒険者の出番だろう。
「そいつは何なんだ?」
「村の娘を一人よこせと言ってきた、八つの首と、八つの尾を持つ巨大な化け物、ヤマタノオロチだ。その要求を飲まなければ、村が襲われるんだと思う。おそらくな」
それ、古事記か日本書紀かに載っているという伝説の化け物のことだな。
ここにいるってのか、そんな化け物が。
てか、ここは古代の日本かよ?
弥生時代とかのな。
「で、そいつを倒せば、剣と草履をくれるってのか?」
「剣は無理だ。技術が無い。だが、最強の草履はやってもいいぞ」
何だその、最強の草履ってのは?
キック力増強のスイッチでも付いているのか?
まぁいい。
「じゃあ、その最強の草履ってのをくれ」
「オロチを倒したらな」
「分かった」
俺と村長の交渉は成立した。
村に入る前に相談交渉とは、気が早いな、ムサシのクニのあんたらは。
別にいいけど‥‥‥。
でも、ヤマタノオロチとは、今回も厄介な相手が出て来たな、こりゃ。
腕が鳴るぜチクショウ!
読者の皆様に幸あれ!!