第三百九十九章・サーカスのあとで。
もう、四百章になるんですね。早いものです。
第三百九十九章・サーカスのあとで。
俺たちがサーカス小屋を出ると、団員に呼び止められた。
「待ってください!」
俺たちは振り返る。
「はい?どうしました?」
「さっきは本当に助かりました。ありがとうございます」
「いや、お礼ならこの魔女のイーゼルに言ってください」
俺はイーゼルを前に出した。
イーゼルは「えっ、えっ?」と言いながらも、俺の背中を押す手に導かれて、団員の目の前に姿を晒す。
「ああ、この魔女さんが!」
団員はイーゼルの手を取り、馴れ馴れしくしながら「ありがとうございます!!」と言った。
「ど、どういたしまして」
イーゼルは顔を赤くした。
「でも、あんな技、一体どこで?」
「え?あ、あれは魔法です」
「あれが魔法ですか。見たのは初めてです」
「そうですか」
「それで、あなたたちは、そのナリ、どこの人なんですか?」
「えっ?わたしたちは冒険者の一行なんです」
「冒険者?この時代に?」
「はい」
「魔王はもういませんよ?」
「分かってます」
「ではなぜ?」
「それぞれ違う目的で一緒に旅をしているのです」
「ほう。我々はジ・フォードから来たんです。あの国はライフル兵がたくさんいます。テュルユーク商会から手に入れた、ライフルで武装しているんです」
俺はイーゼルの前に出た。
「カピーナ・テュルユークはもう、失脚したぞ。俺たちでやった」
「えっ?」
団員は驚いた。
「テュルユーク商会も終わりさ」
「カピーナ・テュルユークを潰すとはすごい!あなたたちは英雄ですよ」
「そうかな?」
「ずっとジ・フォードにライフルが流れるのを、王族以外は指をくわえて見てるだけだったんです」
「指をくわえて?」
「そうなんですよ。ライフルを持った軍隊は、我が物顔で、街や王都を行進しています。
隙あらば、ライフルを使いたがってるみたいなんです。ああ、恐ろしい‥‥‥」
ライフルの脅威か。
考えたことも無かった。
「俺たちはジ・フォードには行かない」
俺はキッパリと言った。
「戦争はもう飽きたよ」
「戦争まではいかないですけど、国内で緊迫した状態なのは確かなんです」
戦いは人を殺すばっかで、活かすことがないからな。
「俺たちはここから東へ移動するよ。ジ・フォードには行かないから」
「そ、そうですか」
団員はうなだれてしまう。
スマンな。
団員はお辞儀をすると、サーカス小屋に戻った。
「リューイチ、わたしたちを危険な目に遭わせないために、ああ言ったんですね?」
イーゼルは俺の表情を見て、そう言った。
そうかもな。
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