第三百八十章・ルルチェの誕生日会
「バンド・オブ・ブラザース」観ながら、これを書いてます。次回作は戦争物かなぁ。
第三百八十章・ルルチェの誕生日会
俺は大金を宿に納めて、広間を借り切った。
ここでルルチェの誕生日を祝うつもりだ。
さて、ケーキはケーキ屋さんに頼んで、特大のを手配したので、夕方には届くはずだ。
酒店ではシャンパンを注文し、配達を頼んだ。
料理は宿の厨房にお願いしたし、これで準備は整ったはずだ。
ルルチェには貸衣装店で、おめかししてくるように言った。
俺もイーゼルもコマドリも、レンタルで正装をした。
部屋で待たせたルルチェは、貸衣装店でも特別なドレスを着ているだろう。
俺はすべてが整うと、ルルチェを広間へと呼んだ。
「どうだ、ルルチェ?」
即席でも、これだけ揃えば文句はあるまい。
ルルチェは俺たちのところへ来て、全員に握手した。
「ありがとう。わたしのために!」
だが、ルルチェのその表情は、少し曇っていた。
「こんなに豪華に誕生会をしてくれるなんて、わたしは幸せ者ね」
ルルチェは無理に笑っているように見えた。
どうしたのかと、訊くのもアレだし、ルルチェを中央に迎える。
「本当に嬉しいわ。でも‥‥‥」
俺はようやく察した。
ルルチェにこの誕生会はふさわしくない。
彼女は‥‥‥。
「わたし、これでも姫なの。いつも豪華なものに囲まれて、それはそれで幸せだったわ。でも、ダ・ガールでも貧富の差を知り、わたしがこんなに贅沢しちゃ、全然説得力が無いと思ったのよ。だから、今も戦争や疫病や飢饉で苦しむ人たちがたくさんいるのに、わたしだけがこんな贅沢をしては心苦しいわ。ごめんなさい。こんなに良くしてくれているというのに、わたしったら‥‥‥」
そう、ルルチェはこういうやつなのだ。
俺の認識が甘かった。
もっと、ルルチェのことを分かるべきだったのだ。
それを今、知ったのだ。
「分かったよ。それでいいんじゃないか?俺も気が急いでいたんだ。許してくれ」
俺は頭を下げた。
「いいのよ。わたしのわがままね。こんなにしてくれたのに」
「いや、いいよ。お前は賢者でもあるし、ダ・ガールの姫でもあるからな」
「そうなの。ごめんなさい」
誕生会は中止か?
そう思った時、ルルチェが俺を前に立たせた。
「今日はリューイチの誕生日会にしましょうよ」
「え?俺?」
「そうよ。リューイチ、誕生日おめでとう!」
俺の方に来たのか?
「リューイチがこの世界に来たのは、一年前の今頃でしょ?」
「そうだけど‥‥‥」
「じゃあ、わたしとリューイチの誕生日会ね!」
そう来たか!
俺とルルチェは広間の前に立った。
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