第三百六十九章・スライ・ロトヴェキア
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第三百六十九章・スライ・ロトヴェキア
建物の前に、誰かいた。
長剣を持った騎士のような男だった。
「あれは?」
俺たちが工場と思しき建物に近づいた時、その男に気づいた。
見たところ、一人だけだったが。
「お前は?」
「俺はスライ・ロトヴェキア。ただの騎士にして、ここの用心棒でもある」
「用心棒?」
俺は警戒した。
イーゼルが前に出る。
「見てください、みんな」
イーゼルが真顔で言う。
「あの人、イケメンですよ」
俺はズッコケそうになる。
マジかよ?
まさかのイケメン発言?
いや、そうだけど!
イーゼルは俺の顔をチラッと見て、すぐに視線をスライに戻した。
今、見比べなかったか?
悪かったな、ヘタレな顔で。
「イケメンです」
また言った。
ルルチェも前に出る。
「本当。イケメンね」
俺の方を見るなよ?
確かにあの騎士にして、用心棒はイケメンの二十代の男だが。
コマドリも前に出る。
「確かにイケメンだ」
こいつもか!
俺の方を見るコマドリ。
「どうしてこう、生まれながらに持ってるものが違うんだろうな?」
その疑問にグーパンチで答えたい。
手を下ろして顎を出せ!
さて、ひと当てあってもおかしくはなかったが、相手がイケメンの用心棒じゃな。
「俺が剣を持ってなくて、非常に残念だ」
苦し紛れに俺はそう言ってみる。
「スライと言ったか?お前はどこの騎士なんだ?」
俺はスライに訊いてみる。
「俺はリタ・エールの騎士だった。ある日、リタ・エール・ド・エルデを負かしてしまったことがきっかけで、国外追放になった身だ。巡り巡ってここへたどり着いただけさ」
リタ・エール・ド・エルデとは、懐かしい名だ。
「実は俺もダ・ガールのコロシアムで、リタ・エール・ド・エルデは倒したんだけどな、一撃で」
これは本当だからな。
嘘言ってんじゃないよ?
「な、なんだと?お前もか?」
「ああ。楽勝だったよ」
「お前、戦士か?」
「俺の格好を見て、戦士に見えるか?」
「いや、おかしな格好には見えるがな」
うるせーよ。
あとで九頭○閃の刑な!
しかし、この場は顔では負けていた俺。
「おい、みんな。あいつは敵だぞ?」
「でもカッコイイです」
「そうね。十年に一人の逸材ね」
「男としての色気もあるぞ」
この三人も、あとで九○龍閃の刑な。
「イケメンに惑わされるな!」
俺はありったけの声で叫んだ。
「あいつは敵だ!」
みっともねーが、しょうがない。
「そいつはカピーナ・テュルユークの用心棒だぞ!」
イーゼルが俺の方を向いた。
「知ってますよ」
ルルチェも、「それはそうよ。何言ってんの?」と、言う。
コマドリも「分かってる。ただの目の保養だ」とだけ言った。
え?
「リューイチは手を出さないでいいですよ」
イーゼルが杖を前に出し、そう告げた。
「このイケメンの顔をぐちゃぐちゃに潰せば、必然的にリューイチの顔の方が良いということになりますね」
ルルチェも、「こんな犯罪者の用心棒に成り下がった騎士など、再起不能にしてやればいいわ」と、言った。
「そうだな。剣を持つ資格など無い奴がのさばってるのは、納得できない。例えイケメンだろうがな」と、コマドリの弁。
「みんな‥‥‥」
俺は誤解していたようだ。
やっぱり仲間は仲間なのだ。
「じゃあ、早く倒しちゃってくれ」
俺は後ろで見てることにした。
チートは使わなくても、三人が始末してくれそうだ。
いや、マジな意味で。
頑張れ、イケメンバスターたち!
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