第三百五十四章・テュルユークの商会
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第三百五十四章・テュルユークの商会
俺たちは川沿いの商会が並ぶ町にやって来た。
「ここは?」
俺は馬車から顔を乗り出してアビゲイルに訊く。
「人がいっぱいいるな」
本当に人がいる。人人人って感じだ。
「アビゲイル、ここは何だ?」
「この川は海に続いているのだ。海路で運搬するために、この川は商業の拠点になっているのだ」
「へー」
「感心してるんじゃないのだ。馬車を預けて歩くのだ。じゃないと商人の邪魔になるのだ」
「ああ、分かったよ」
俺たちはアビゲイルの言う通りに、馬車を預り所に預けると、この商人の町を闊歩した。
* * *
「おそらくこの町に、カピーナ・ティルユークのダミー会社があるのだ」
「どうして分かる?」
人ごみをかき分けて、俺たちは進みながら話す。
「どこにそのダミー会社があるっていうんだ?」
「これだけ市場が多いと、見つけるのは困難なのだ」
おいおい‥‥‥。
「とにかく、カピーナ・テュルユークの名で出てるはずは無いのだ。そんなバレバレなことはしないのだ」
「それはまぁ、そうだろうけど」
「アビーもそこまでは把握してないのだ。期待するなよ?」
「分かった分かった!」
俺たちはとりあえず、人ごみを出て、町の中を散策した。
「この町は活気があるな」
と、俺はポツリと言った。
「当然なのだ。この町はずっと前は魔王が君臨していた時に、魔族に支配されていたのだが、魔王がいなくなってからは、人間がここをそのまま使うことにしたのだ」
「と、いうことは、ここの施設はその当時の物か?」
「まぁ、そういうのもあるが、あれから50年も前のことなので、アビーは生まれていないから、そこまでは知らないのだ」
「お前、いくつだ?」
「女に年を訊くななのだ」
「女ってお前‥‥‥」
「何なのだ?」
「まだガキだろ?」
「これでも政治家なのだぞ」
「もう州知事は失脚だろ」
「ならば‥‥‥」
「そう言うんなら、お前がクレメント州の州知事になれよ」
「えっ?」
「政治家って言うのなら、お前がアンジェリカ・プラットの代わりに州知事になればいい」
「そっ、そんなこと‥‥‥」
「いいじゃんか!」
「ば、バカなのか?アビーはそんなの推薦されないのだ」
「じゃあ、俺たち冒険者が推薦してやるよ」
「そっ、それでも、アビーは、アビーには荷が重いのだ」
「そうか?政治家なら気後れしないほうがいいぞ?」
「なら、アビーは立候補してもいいのだ」
「ああ、そうしろ!」
そう言って、俺は締めた。
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