第三十三章・これからは仲良くな。
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第三十三章・これからは仲良くな。
俺の一振りの剣が、四人か五人の敵兵を吹っ飛ばしていた。
こっちもアドレナリンが出まくりで、もう興奮状態だった。
だんだん自分がチートだからこんなに強いという感覚は無くなっていて、敵を弾き飛ばす剣撃に夢中になっていた。
いつの間にか、俺の近くでコマドリが忍者刀で敵を殺さずに甲冑男たちを斬り付けているのに気がつく。
後で聞いた話では、コマドリの忍者戦法で、敵の甲冑の隙間を狙って斬り付ける、もっと言えば関節部分を狙う戦法があるのだということがコマドリの剣術にあるとのことだった。
力強い味方だ。俺一人ではこれだけの敵を相手に全滅させるまではいかなかっただろう。
俺とコマドリは背中合わせになり、互いの背中を守り合いながら、戦った。
奇跡的なことに、こちらは傷も負わずに、敵も殺さずに倒していったのだ。
今、気づいたが、敵は大きな大砲を持ってきていた。巨大なリアカーのようなもので運んできて、俺たちを狙っている。
俺は前に出た。大砲と向き合うように立った。
大砲が火薬の詰まった弾を発射する。
ドーンという激しい音とともに砲弾が俺に向かって飛んでくる。
俺はマーシャル・ソードを、生前、体育の授業で剣道を選択していたのだが、その時に習った胴打ちの要領で、剣を薙いで、砲弾を受けた。
マーシャル・ソードは刀身が壊れて砕けた。その場で爆発が起こる。しかし、俺はイーゼルのミサイルにも耐えるほどの防御力があるのだ。ドラゴンの炎ならいざ知らず、艦砲クラスの砲弾にやられる俺ではないのだ。黒い煙が晴れると、剣を折られただけの俺が立っていた。
「ば、化け物だ!」
敵兵は砲撃第二弾を用意するより、逃げに転じた。
それを発端に、全員の敵兵たちが身を振り返して退却あしていった。
ざまーみろ!
俺は折れたマーシャル・ソードを見て、「やったぜ、相棒。そして、サンキュな!」と言ってやった。
剣はまた買えばいい。それよりもリタ・エール軍を退かせたことに満足していた俺だった。戦に勝ったぞ!
合戦は終わった。少々の死亡者は出たが、ほとんどのダ・ガール兵たちも生き残った。
ルルチェのヒーリングで、傷を負った兵士たちも回復していく。
さすがにルルチェでも、レザレクション魔法はまだ使えなかったらしい。あの魔法があれば、死んだ人間を蘇生させることもできたはずだが、無いならしょうがない。
イーゼルも魔力が尽きるまでギリギリのところで魔法を使ってくれた。
ここにいる全員の勝利だった。
俺はコマドリと城の中へ戻っていった。
* * *
数日後、リタ・エールの使者が国防長官と一緒に来て、改めて平和条約を結ぶことになった。調印はダ・ガールの王様とリタ・エールの国防長官が代理で行われた。
俺たちはそれを見届けた。
ルルチェも調印式にはドレスで参加していた。
俺はなぜか、ルルチェの横に立つように言われて、正装して、服は借りて参加していた。
「これで戦争も終わりね」と、ルルチェ。
「平和に越したことはないんじゃないか?」
「フフ、そうね」
とりあえず調印式は終わった。
そして、俺とルルチェ、あとコマドリやイーゼルも王の間に呼ばれた。
「リューイチ君、やはり君は冒険者だな。背広が驚くほど似合わんよ」
ほっとけ。
「だが、君の戦いぶりや他の仲間たちの活躍、それに我が娘ルルチェの功績は素晴らしい。素晴らしかったぞ!この国の歴史に残る戦いだった」
王様は何度もうなずき、それを実感していたようだ。
俺も驚いている。今回戦ったのはモンスターや魔族ではない。普通の人間相手だった。
それを俺は、かなりの数、倒していったのだ。殺しはしてないが。
だから、自分のチートぶりを実感できたのは自分でも信じられなかった。
「それでだ。言いにくいのではあるが、我が娘のルルチェには君はふさわしくないことも分かった。君はものすごく強いが冒険者だ。娘はやれん。王族の身分も似合わんだろう。だから、君には領主にでもなってもらいたいが、どうだね?」
俺が領主か。悪くはないが、それだと冒険やめないといけないのにな。
俺の望む冒険とは違ったが、冒険者は素直に冒険してる方がいいんじゃないか?
そう思った俺は、その旨を王様にちゃんと伝えた。
「なるほど、旅に出るのを選ぶのか。冒険者らしいな。では褒美の新しい我が王族の宝剣の他に何か欲しい物はあるか?」
俺は王様からダ・ガールの剣という宝剣を頂いていた。オリハルコニウムという特殊な金属を使った剣だった。材質が微妙にオリハルコンに似た名前なのが、ちょっとイラッとしたが、あえてオリハルコンそのままも今どきウケないので我慢することにした。
他に欲しいのはとなると、ルルチェとの約束のようなもんだが、アレだ。
「はい、俺の旅にルルチェを連れて行きたい。今はそれだけです」
「ん?何と言った?」
「ルルチェを仲間に加えたいのです。というかルルチェはもう俺たちの仲間なんです。彼女を冒険に出したい。いや、一緒に旅がしたいのです。それが俺の一番の望みです」
王様はルルチェの方を見た。
「ルルチェよ」
「はい、お父様、わたしはリューイチたちと一緒に旅に出たいです。リューイチとはもう結婚の意思はありませんが、仲間とは一緒に冒険に出たいのです。どうか許してはもらえないでしょうか?」
「お前がそう言うのなら‥‥‥」
「リューイチにはもう、他に相手がいるようですよ?」
「何?そうなのか?儂は別にもう構わんが‥‥‥」
え、それっていったい誰なんだよ?俺は知らんぞ!
「そうだよね、イーゼル?」
「えっ?!」と、イーゼルがルルチェの方を見る。
「リューイチが愛してるのは、あなたよ、イーゼル!」
ええっ?
俺って、そうなのか?!
いきなり過ぎて俺は開いた口が塞がらなかった。
マジで?
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