第三百三十五章・アビゲイルへの尋問
アビゲイルを書く時は、何だか楽しいですね(笑)
第三百三十五章・アビゲイルへの尋問
夜中だというのに、馬車はずっと走っていた。コマドリが馬車を急がせる。
俺とルルチェ、それにアビゲイルが車の中にいた。
道が悪く、馬車はガタガタと揺れた。
それでも俺は、アビゲイルを尋問し始める。
「アビゲイル、今度騙したら、土に埋めるぞ!」
「わ、分かったのだ」
俺はもういっちょ脅しをかけた。
「騙したと分かれば、アンジェリカ・プラットを裸で逆さに吊るして、『酔拳の達人ここに現る』と書いたフンドシを、その体に巻くからな」
「う~ん、何かよく分からないけど悪質なのだ」
「てめぇ、悪質はお前の方だろ?」
「分かったのだ。もう騙さない!」
「絶対にだぞ?」
「絶対なのだ!アビーの州知事に誓うのだ」
「それ、絶対に守らない時に使う決まり文句だな」
「いやいやいや!今度は本当なのだ。じゃあ、ユニオンの神様に誓うのだ!!」
これだけ脅せば、大丈夫だろう。
「それじゃあ、初めから。収容所の話は嘘なんだな?」
「はい。でも収容所が存在するのは確かなのだ。嘘じゃないです」
何だかアビゲイルは、しおらしくなったようだ。
「誰の指示で、俺たちをこんなところまで連れて来たんだ?」
「州知事です」
「確か、小細工など絶対にしないと言ってたよな?」
「む、むぐぐぐぐ‥‥‥」
「イーゼルの身は安全なんだろうな?」
「あ、安全だとも。州知事とて鬼ではない。手厚くもてなしているはずだ」
「それは本当か?」
「本当です、たぶん」
「たぶん?イーゼルにかすり傷一つ負わせたら‥‥‥」
俺はニッコリと笑った。
「分かってるよな?」
「ひいいいいい!!分かってるのだ。だからその、不気味な笑みはやめてもらいたいのだ!」
「イーゼルは俺たちの大事な仲間なんだ。当然だろう?」
「それは分かった。分かったのだ!」
俺は落ち着かなかった。
イーゼルは本当に無事なのか?
それが確かめられるまでは安心出来なかった。
今度は騙されないぞ、アンジェリカ・プラット!!
馬車はどこまでも続くような暗い森の中の街道を、猛スピードで走った。
イーゼルを助けるために!
ご感想やレビューも待っています!!