第二百八十章・航海中の出会い。
更新少し遅れてしまいました。すみません。
第二百八十章・航海中の出会い。
夕方近くになると、冷えてきた。やっぱり季節的なものがあるんだな。もう秋の終わりのような天候だ。海も時化ているようだし、より一層、寒さが増す。
俺は甲板から、船内へ入った。
「この船、すごく揺れるな」
客室でコマドリが、立ったまま、バランスを取っているのが見えた。
「何してんだ?」
「こうやって、体幹を鍛えているんだ。リューイチもやれ!」
「いや、いいよ。俺、チートだし」
俺は船内の大部屋に座った。
隣に、耳の位置に大きなエラがある女の子がいるのに気づいた。半魚人?
「君は?」
俺はその子に話しかける。
「あ、こんにちは」
物悲し気な顔に、笑みを見せたその子が、俺に向かってお辞儀をする。
「俺はリューイチ」
「リューイチ‥‥‥。わたしはアトランティス王国のアトール」
「アトール?」
アトールって環礁って意味じゃなかったっけ?
「アトール、王国の者なのか?」
「はい。ガイドも兼ねてます」
「なら、お金は払うから、アトランティス王国を案内してくれないか?俺たち、初めてで」
「俺たち?」
「あ、ああ。仲間もいるんだ」
「そうですか。では王都を案内しましょう。わたし、王族に近しい者ですので」
「え、そうなのか?」
「ええ。アトランティスの神、いえ、海の神であるポセイドン様にも会わせてあげますよ」
「ポセイドン?海の神ってそんな、俺たちなんかが気軽に会ってもいいのか?」
「見たところ、あなたは昔の冒険者風な格好をしておられますね。冒険者は大歓迎です。アトランティスがものすごく繁栄していた頃に、いろいろ助けてもらったという話を聞いてますから」
ああ、前の勇者たちのことか。俺とは関係ないんだけどな。
「冒険者には違いはないけどな、俺たちは」
「そう見えましたから。わたし世代ではもう、伝説みたいな存在ですけど」
「君、いくつ?」
「十四です」
「俺と四つしか違わないんだな」
「でも、その四つがけっこうな違いですけどね」
「違いないな」
俺とアトールは、笑い合った。
イーゼルたちも、俺を探して大部屋に来た。
「リューイチ、そこで何をしているのです?」
イーゼルが訊いてくる。
「ああ、紹介するよ」
俺はアトールに、イーゼルたちと顔合わせをさせた。
「初めまして。わたしはアトールという者です」
「アトランティス王国出身だそうだ」
俺が補足する。
「アトランティスの?」
ルルチェが前に出てきた。
「あなたは半魚人ね?」
「はい」
「半魚人と出会うのは、初めてだわ」
「そうですか」
「何の帰り?」
「義援金集めに出てました。そのお金で沈みかけてる王国の補修をするんです」
「今のアトランティスはそんなに沈みかけているの?」
「はい。もう陸地の三分の一が水の底です」
「大変ね」
「そうなんですよ。だから、建造物にも痛みが出て、補修が必要なんです。国は財政難に陥ってて、お金も無いですから」
「お金ぐらいだったら寄付してあげられるけど、根本は解決しなさそうね」
「確かにそうですね」
俺たちは冒険者という伝説かもしれないが、アトランティスは今後、もっと伝説的な大陸になりそうだな。
俺はそう思った。
とにかく寄付だけはしてもよさそうだな。金ならあるし。
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