第二百五十章・理不尽な国だな、ここは。
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第二百五十章・理不尽な国だな、ここは。
出産が終わると、赤ちゃんの泣き声が聞こえ、俺は小バサミを部屋に届けた。
ルルチェがそれでへその緒をチョン切っているようだった。
想像すると、痛い。
ようやく俺は、部屋へ入ることを許された。
「みんな、出産の時の処置って知ってたのか?」
俺は三人に訊く。
「当然ですよ。女は皆、教わっているんです」
と、イーゼル。
「実際に立ち会ったのは、わたしは初めてだったけどな」
コマドリはそう言う。
赤ちゃんを抱っこしているルルチェは、「わたしは前に大賢者様の元で、一度だけ他人の出産を手伝った経験があるけどね」と、言った。
ルルチェのおかげもあるのか。
「まぁ、無事に生まれて良かったよ。で、どっち?」
「男の子」
「ほう。男か」
「こうやって、生まれてくるのよ」
「分かってるって」
俺は心不全で一度死んだ身だが、俺も生まれた時は、こうだったんだなぁと思った。
「女性は?」
「安心して。今は疲れて眠ってるだけだから」
「そうか」
「そっとしておいてやって」
「はいはい」
俺はルルチェが抱いている赤ちゃんを見て、ため息をつく。
「立派に育つといいな」
「そうね」
ルルチェの顔が緩んでいる。
数時間前には、鬼のような形相で、俺を部屋の中には入れなかったくせに。
まぁ、お産の時は、ルルチェがいてくれて、本当に助かったんだろうけど。
「こういう時、女性は強いなと思うよ」
「そうね。わたしもそうだと思うわ」
ルルチェは微笑む。
それから数時間が経って、女性は目を覚ました。
「あ、わたしの赤ちゃん‥‥‥」
ルルチェが女性に赤ちゃんを渡した。
「ここにいますよ」
「ありがとう!」
ルルチェがまた、俺を部屋の外に追い出した。
「赤ちゃんにおっぱい飲ませるから、リューイチは外にいて」
「はいはい」
俺は部屋の外で待った。
そういや、あの女性の旦那さんはどこだ?
俺は街の中に出た。ウロウロしている男がいる。
たぶん女性の旦那だろう。女性のことを訊きつけたはずだ。
「あの、妊婦の女性の旦那さんですか?」
「え?ああ!女房はどこだ?」
「それなら俺の仲間が宿で、出産の手伝いをしましたよ。無事に生まれました」
「そうか?どこだ?」
「案内しますよ」
俺はその男を宿に連れて行く。
俺自身はほとんど何もしていないのだが、男は俺に「済まなかったな」と言い続けた。
宿に着くと、部屋に案内する俺。
コンコンとノックしたが、すぐに男は部屋のドアを開けて、中に入った。
「エルザ!」
「クルト様!」
クルト様?夫婦じゃないのかよ?
この国じゃ夫にも〝様″付けなのか?
「生まれたんだな、エルザ!」
「ええ」
エルザという名の女性は、抱っこしている赤ちゃんを、夫に見せていた。
「この子が‥‥‥」
「はい」
赤ちゃんを渡されるクルト。
「よく産んだな!でかしたぞ」
「ありがとうございます。あなたの子です」
「しかし、どうしてこの宿で?」
「ああ、それならここにいる方たちが、産婆さんの代わりをしてくれたんです」
ルルチェたちは、頭を下げた。
「おい、こんなに若く幼い女たちが、産婆の代わりをしただと?」
幼いか?
俺は思った。
「こんな若い女が出しゃばったのか?」
「おい、あんた!」
俺は詰め寄った。
ルルチェが、「いいのよ」と、俺に言う。
「いいわけあるか!ルルチェたちのおかげで生まれたんだぞ?」
「産婆を呼ぶべきだったんだ。それを‥‥‥。もし、妻や子供に何かあったら、どう責任取るつもりだったんだ?」
「そんな言い方無いだろ?」
俺は、蹴っ飛ばしてやろうかと思った。
「リューイチ、いいから。わたしたちは平気よ」
「でも、お前ら‥‥‥」
「行きましょう。もう大丈夫だから、心配は無いわ」
そう言うと、ルルチェたちは部屋を出ていく。
俺もそれに続いた。
「ホントに良かったのかよ?」
「ええ。いいのよ」
俺にはそうは思えなかったが、理不尽に感じたのは確かだ。
まったく、この国は一体どうなってんだ?
女性に礼を言うという習慣すら無いというのかよ!
この国は異常だ。
もう数日したら、「メグザモンスター」のブルーレイがAmazonから届きます。楽しみです!!