第二百二十三章・フイ・ティーク・ラ・ジョディス
今日は忘年会。行ってきます。読者の皆様、風邪やインフルエンザに気をつけてくださいね。
第二百二十三章・フイ・ティーク・ラ・ジョディス
この国の王都では、半分近くが裏路地のようだった。人心の乱れが激しいのだろう。
この辺りでは、〝女性のために!″とか言う男もいなくなった。
俺は路地の奥の、開けた場所に来たことを確認した。
なるほど、ここは表とは別の意味で賑わっているな。
と、いっても、ポンカの中毒でうずくまっている人たちもたくさんいた。これを問題視しない国家は国家ではない。
映画『トラフィック』観てないの?
開けた所の中央にいる、俺と同じくらいの年齢であろう女の子が、男たちを先導しているのが見えた。
あいつがそうか。フイ・ティークの国女であるジョディス。
「おい、ジョディスってのは、お前のことだろ?」
俺はその子に向かって強く言った。
「何だお前は?この国の者じゃないな?」
人をかき分けて、俺はジョディスに近づいた。
男たちは皆、ガンつけてくる。
それを無視して、俺はジョディスの前に立った。
「お前がこの国の国女、ジョディスだということは知ってるぞ」
「何?正確にはフイ・ティーク・ラ・ジョディスだ。お前は?」
「冒険者のリューイチだ。笑うなよ?」
しかし、ジョディスは、あまりの可笑しさに笑った。
やっぱり冒険者というのは笑われる存在なのか。お前の母親に呼ばれてここまで来たんだけどな。
「ま、笑いたければ笑えばいい。でも、ここから先はシリアスで頼むぜ!」
「何だよ?たかが冒険者風情が!」
「冒険者で上等!俺には仲間もいる。お前はポンカの元締めか?」
「何だ、いきなり。あたいはここを牛耳っているが、ポンカの元締めではないぞ。元締めはエリザベスっていう麻薬女王だ。通称ミセス・ボス。この国の唯一の滝のそばにある工場でポンカを製造しているんだ」
この子、重要な情報をペラペラと‥‥‥。
頭大丈夫か?
「麻薬取締局には通報するなよ?」
ああ、こいつ、自分に火の粉がかかろうとすると、他人でも売っちゃう奴か。
まぁ、この国の国女がこんなマネしていれば、管理局から調査が入るのは確実だ。それを恐れたのだろう。結局は自分が一番大事か。
「これが発覚すれば、同盟国であるダ・ガールなんかも貿易を中止するだろうなぁ」
俺流の脅しだ。
どうだ?
「ちなみに俺は、いや俺たちは、ダ・ガールの直属の冒険者なんだ。通報くらい何でもないんだぞ?」
「わ、分かったって!でもミセス・ボスは傭兵軍団を持っているんだ。あんたらが束になったって何も出来やしないんだぞ?だから誰も告発はしないんだ。手を出せば叩かれて終わりだからな」
「だったら、何でそうまでしてポンカの情報をあっさりと喋るんだ?」
「あたいはポンカとミセス・ボスとの仲介で、小遣い稼ぎをしているんだ。母親は厳しくて、女から金をもらってはダメだというから‥‥‥」
「なるほど、それでポンカで稼いでいるってのか。それは合法だと思うのか‥‥‥」
「わ、悪いか?ポンカは脱法のクスリだ。別に悪いことはないんだぞ?」
「いちいち〝脱法″とかいう単語を使うから、逆に怪しいんだよ。この国の人たちを麻薬漬けにして、悪いとか思わないのか?」
「ポンカは男にしか売らないようにしている。男はこの国の働きバチにして、女王バチを食わせることが使命。だからダメな男はクスリで廃人にしてしまった方が、いくらでも良いことなんだよ!」
傲慢な奴だ。いや、これこそが、この国の現状なのだ。
何としても麻薬は撲滅させねば!
「ミセス・ボスに会わせろ!俺が話付けてくる」
「この国の必要悪を根絶させるつもりか?それに、ミセス・ボスの傭兵軍団にケンカ売って、勝つつもりなのか?」
「どっちもだよ」
俺たちがやらないで、誰が止める?
間違っていることは当然、俺が止めるぞ!
昨日はイブだったので、DVDで、「ダイ・ハード」観てました。クリスマス・イブの定番ですね!!