第二百十三章・テールーの町での恋物語〈後編〉
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第二百十三章・テールーの町での恋物語〈後編〉
ジェフェリアは、騎士ガブリエルにこう言った。
「わたしのような者のどこが良いんですか?性格も良くないですし、半端者ですよ?」
ガブリエルはそれでは引き下がらない。
「我は君が良いのだ。騎士として誓う。君に来て欲しいんだ」
「わたしは、ここで仕事がありますから」
「生活は我が保証するよ」
「で、でも‥‥‥」
「もちろん、君の妹さんも生活は見てあげるよ」
「でも、それでも‥‥‥」
「いったい何が君の心を閉ざしているんだい?」
「それは‥‥‥」
「我の国が男尊女卑を支持しているということなら、我には関係ないことだ。君にもね」
「そういうことでは無いんです」
「それじゃあ、一体‥‥‥」
妹のクレナリアは、近くにいて、その会話を聞いていた。
「もしかしたら、お姉ちゃんは本当はわたしのことを考えて?」
俺はクレナリアのそばに来て、「どうした?何でそこに立っているんだ?」と、尋ねた。
「お姉ちゃんは騎士ガブリエルにいろいろ遠慮してるのよ」
「どういうことだ?」
「わたしを置いて、シア・ラース王朝に行くことは出来ない。シア・ラースで私の幸せは無いと思ってるんだわ。それに自分も」
「お前はシア・ラースに行くのは嫌なのか?」
「確かに嫌だけど、お姉ちゃんも嫌なのよ。お姉ちゃんも自立した立派な女だから」
「それを尊重するのが、本物の男じゃないのか?あのガブリエルって奴もそうだと思うが‥‥‥」
「彼がシア・ラースを捨てて、フイ・ティークに来たらいいのよ」
「でも、あいつだって自国の価値観の中で育ったんだから、男尊女卑の考えは抜けないでいるだろう?」
「きっと、そう思うわ。仮にも王国の誇り高い騎士なのよ?」
「お前が認めないから、二人はお互いの考えを尊重し合えないんじゃないのか?」
「たぶん、わたしのせいだと思うわ」
この子はジェフェリアの父親気取りだな。
「お前は、姉にどうなって欲しいんだ?」
「もちろん、お姉ちゃんの幸せは祝福したいわ。でも、お姉ちゃんがどこまで本気かは分からないんだもの」
「そうか。なら、自分で伝えて来いよ!」
「え?」
クレナリアは俺の顔を見ながら、驚いた。
「で、でも、わたしがそんなにしゃしゃり出ていいわけがない‥‥‥」
「でも、姉の幸せはお前に懸かってるんだと思うぞ?」
「‥‥‥」
ガブリエルはジェフェリアを口説いているというわけではない。自分の気持ちを素直に言っているだけなのだ。それこそ、騎士道精神じゃないが、正々堂々と。
「お願いだ。我と一緒に来てくれ!」
「困ります。それにここは離れたくない」
ジェフェリアは遠慮がちに言う。
「それでは、我と一緒に別の国へ行こう。君が来てくれるのなら、国を捨ててもいい。一緒に、ダ・ガールにでも逃げよう!」
ダ・ガールに来る気かよ?
俺はガブリエルに感服した。奴は本当に本気のようだ。このままではお互いかわいそうだ。でも、俺が横から間に入ってよいわけでもない。
ここはやはり、妹の出番だろう。
「クレナリア、行ってやれ!」
クレナリアはうなずいた。
ジェフェリアの妹は、姉に駆け寄る。
「お姉ちゃん、一緒に行ってやりなよ。この店はわたし一人で切り盛りしてみせる。今は自分の気持ちをガブリエルに伝えて、そして幸せになって!」
「クレナリア‥‥‥」
複雑な気持ちでいるジェフェリアは、しばらく黙った。
「お姉ちゃん!」
「分かった。わたしはお嫁に行く!」
決心がついたようだな。
ジェフェリアは、ガブリエルの前に立ち、お辞儀をした。
「謹んでお受けします。ガブリエルさん。いえ、騎士ガブリエル様」
こうして、この町での恋物語は終わりを迎えた。
そして、またこれから新しい物語が始まるのだった。
良かったな、ジェフェリアにガブリエル、それにクレナリアも。
俺たちは、それを見届けると、また旅へと出発した。
読者の皆様に幸あれ!!