第二百七章・ポンカ売りの少女。
昔の同級生が近所に越してきました。私事ですみません。読者の皆様に感謝します。
第二百七章・ポンカ売りの少女。
街中で、いきなりイーゼルたちとはぐれてしまった俺は、迷路のような路地に来てしまった。
ここはどこだ?城下の中でも、変なところのようだ。人の気配があまり無い。
俺は道なりに進んでみた。
どこの城下にも、裏路地というものがある。そこにはボロボロになって倒れている人も多かった。それは貧民とは違う、麻薬によるものだった。
一度ハマるとなかなか抜けられない、恐ろしい薬物だった。
それが世界中に広まっているポンカという麻薬だ。
それを公然と売買している者たちが、このフイ・ティークにもいる。この世界では一番売られているとして有名なのだ。
なぜ俺が、こんなことを言っているのかというと、実は裏路地につながる道に迷い込んでしまった俺のところに、俺と年がほとんど変わらないだろう女の子が、籠に入った楕円形の小さな薬、いや、ここはクスリと言っておこう、それを売りに来たからだ。
「初めまして!ウチはポンカ売りのルーシー・ホワイトです。どうです?このポンカを買いませんか?今なら特売ですよ?」
俺はズイッと来たその子に、進路を塞がれた。
「な、何だよお前?」
「ポンカっていう、良い物ですよ」
「それ、マズいクスリだろ?」
「マズくないですよ?」
「味の話ではない。違法ドラッグだろ?」
「ドラッグって何です?これはクスリですよ?飲むと気分が良くなるクスリなんです」
「乗り物酔いの薬か!それ違法だろ?」
「いいえ、脱法です」
言ったな!
やっぱりただのクスリじゃないか。
「そんなモン売って、どうするんだよ?」
「もちろん、買ってもらって、このクスリの元締めにお金を落とすんです」
「へー」
「一袋2000リールですよ?」
「いらん」
麻薬のことは分からないが、薬物依存は頂けない。クスリなどに手を出した奴らも俺は知っている。俺が前世で、ちょっとだけソフトバレーのチームに入っていたのだが、そのメンバーのひとりにヤンキーがいたのだ。そいつは自分がマリファナに手を出したことがあると自慢していたのだ。ヤンキーだけには限らないのだが、麻薬に手を出すこと自体に、俺Sugeeeeeeee!!!!みたいに自慢する輩もいるってことだ。
まったく仕方のない奴もいるのだ。
俺がそんな物、買うわけがないだろう!
「ねぇお兄さん、このポンカはクスリの中でもスゴくぶっ飛ぶ感じなのよ。始めたら最後、脳内でオルガズムを感じられるシロモノなのだから」
「オルガズムとか言うな!じゃあ、お前が試してみたらどうだ?」
「そんなことしちゃったら、商売出来ないじゃない!」
「自分は安全なところにいて、人にクスリやらせるなんて、あくどいなホント!」
「でもウチは、これでおまんま食べてるんだよ?」
「この城下では、女性が上位になってんじゃないのか?」
「ウチはその女性上位政策には反対なんだよ。本来は男は信用ならない。ウチの元締めがそうなのよ」
「そうか。レジスタンスもいるってことか。それも当たり前か‥‥‥」
「ポンカを買わないなら、仲間呼ぶから。この国では女性が大声で叫べば、男性が飛んで来ることになってるから」
「悪質だな」
「さあ、どうします?この国で男性を敵に回すのは、賢くないですよ?」
チートの俺が、そんな男たち相手に負けることなんか、絶対に無いのだが、バツが悪くなるのは困るかもな。
「じゃあ、元締めに会わせてくれよ」
「え?何で?」
「俺がそいつらをぶっ潰してやるからよ!」
「な、何だって?」
「そういうのは俺、得意だぞ~」
俺は脅しをかけたが、本気になったら脅しで済まさないのだ。
「わ、分かったよ。あんたこの国の者じゃないようだな。セリフの最後に〝女性のために!″を付けないしな。もしかして冒険者か?」
「そうだぜ」
「今の時代に冒険かよ。くだらないな、あんた」
「それでも良い生き方してるんだよ」
「分かった。もうウチは諦めるよ」
「そのクスリは置いて行けよ」
「は?」
「全部処分しろ!」
「勝手なこと言うな!ウチが元締めに殺されちまう!」
そう言うと、その子は行ってしまった。
この国は治安が悪いな。あんなクスリが出回っているなんて、この国にとっては今、そこにある危機だ。
俺は路地裏を抜けると、イーゼルたちと合流した。
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