第二百一章・出現したのはいいが‥‥‥。
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第二百一章・出現したのはいいが‥‥‥。
夜になると、湖の付近も暗くなった。月の光だけが、湖の水に反射して、少しだけ明るかった。
火を起こして、イーゼルがスープを作ってくれた。小魚の干物を火であぶるコマドリも、調理に参加している。
「メシにしよう」
固くなったパンを俺は出すと、皆に配った。
「なぁ、リューイチ、そなたは冒険やめたとか、時々言っていたが‥‥‥」
コマドリが俺に言う。
「え、そんなに言ってたか?」
「たまにな。ただ、魔王不在で旅をしているが、もしまた魔王が出てきたら、倒すための冒険はする気か?」
「いや、どうかな?冒険者ではあるけど、勇者ではないしな」
「いずれは勇者になるつもりだろう?」
「勇者か。それなら、魔王を倒した勇者ってのは、今はどこで何をしているんだろうな?」
俺の素朴な疑問。
「生きていたとしても、もう高齢だろうな」
「じゃあ、その勇者にケンカ売って、倒してしまえば、俺が最強ってことだな?」
俺の渾身のジョークが、皆を凍り付かせた。
「いや、それはやめろよ!超大人げないし、かなり迷惑千万な奴だぞ、それ!」
「いやいや、本気で言ってるワケじゃないから!」
「リューイチは冗談が冗談に聞こえない」
「わ、悪かったな」
俺はスープを飲みながら、体の力を抜く。
ま、魔王がいなくても、冒険はまだまだ出来るということは分かった。今はそれでいいのだ。
「いつかその勇者様に会ってみたいもんだな」
「その勇者様は、どこにいるのか、50年前の魔王退治のあとから行方知れずになってるんだぞ?」
「え、コマドリ、それはホントか?」
「ああ。確か一緒にいた魔法使いや戦士も、今はどこにいるのか分からない」
ルルチェは身を乗り出した。
「大賢者様は、かつて勇者様とともに魔王を倒しに行ったパーティーのひとりだけど、それでも知らないかも‥‥‥」
そういや、ルルチェは賢者になるために、大賢者のもとにいたことがあるんだったな。
「大賢者はもう、勇者様とは会ってないんだよな?」
「そうね。それらしいことは言ってなかったわ。たぶん、知らないと思う」
「勇者の居所か‥‥‥」
確かに今は魔王はいない。50年も経っているのだから、世界は平和な世を作り出せたのだろう。でも、魔王が支配していた時代は、それなりに秩序が良かったという話だ。
今は敵も味方も人間ってことだ。
俺たちが食事を終えた時、何だか分からないが、不穏な気配に気づいた。
「これは、モンスターの気配?」
イーゼルが何かを感じたように言った。
湖のほとりに立ったイーゼルが、その何かを確認するために湖を覗き込んだ。
「います!」
その時、水の中から、巨大な首長竜レッシーが出てきた。
「ホントにいた!」
俺は驚いた。
コマドリが忍者刀を抜く。
「やめろ、コマドリ!刺激するな」
「し、しかし‥‥‥」
たぶん、こいつは天然記念物か何かに登録されているだろう。ここでやっつけるのは筋違いというものだ。
俺はイーゼルに、その場を下がるように指示した。
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