表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/479

第百九十五章・ベネディクト姉妹

中世での考え方をエピソードとして書きました。賛否あるかと思いますが、今後の話でどんでん返しがありますので、ご了承ください。アクセス数をたくさんありがとうございます!!

第百九十五章・ベネディクト姉妹



 俺たちが『ガルーダの食堂』で食事を終えた頃、店の裏方から少女が入っていた。

「あら、アイラ。ちょうど良かったわ。この人たちは冒険者たちなのよ。挨拶して」

 その子は茶色のウエーブがかかった長い髪の、いかにも純粋そうな清楚で可憐な女子に見えた。

「こんにちは。わたし、アイラです。アイラ・ベネディクト。たまにこのお店で手伝いをしています」

「おお、よろしくな!」

 俺は手を挙げて挨拶を返した。


「この子が、さっき話したシア・ラース出身の子よ」

 ジェイドおばさんは言った。


 こんなに純朴そうな女の子を見たのは初めて見た。

 俺も顔が緩む。


「リューイチがなんか反応してる」

 と、コマドリ。

「ホントですね。さすが、えっと確かロ、ロリコンとか言うんですかね?」

 イーゼルも頬を膨らせて言った。


 いや、イーゼルとそんなにこの子は年、離れてないだろ?


「それで、アイラ。シア・ラース出身だって?」

「はい!男性がとても尊敬できる国として有名なのですよ!」


 ん?


「君たち女性は虐げられているんじゃないのか?」

「それは、だってわたしたちは女子ですから」

 

 女子だから何だというのだ?


「そんなに男性が崇められるのか?」

「はい。男の人は頼りになるし、憧れています」

「そんなにかよ‥‥‥」

「はい。何か?」

「いや、何でも‥‥‥」

 これは恐ろしいほどの文化圏の違いだな。


「女性は男性に比べて劣ってますから」

 こんなこと言わせるシア・ラースって王朝は、一体どうなっているんだ?


「なぁ、ルルチェ。この子の言ってることは、どう思うんだ?」

「え?」

「いや、女子としてさ」

「それはシア・ラースでの考え方だから」

「いいのか?」

「わたしが生まれるずっと前から、シア・ラースはそういう国なんだし」

「そういう問題なのか?」

「貧困や飢饉、戦争は止めなければならないけど、その国の社会に対しては、その国の考え方があるのだから」


 そ、そうなのか?いいのかそれで?


 男の俺が、そう思うのも何だけど。

 確かにこの世界は、中世の考え方が主流で、男尊女卑が普通なのかもしれないが‥‥‥。


 俺のいた世界では、ジェンダーだか何だかよく分からないが、女性の社会への進出が、もっと顕著だったような気がするぞ。


「わたしの姉は、もうそろそろ結婚しますよ。女性はやっぱり結婚して子供を産んで、育てながら、男性の支えになって生きていくことこそが、女性としての幸せなのですから」

 こんな子が、よくもまぁ、そんなことを言うもんだな。


 俺は女子からもイジメられた経験がある。強そうな男子を操って、俺を攻撃してきたのだ。

 なぜ女子にイジメられたかって?

 

 それは俺がある日、教科書を忘れた時だった。隣の席の女子に教科書を見せてもらったのだが、それが後ろの席のリーダーっぽい女子にとっては面白くなく、後ろから回された手紙で、『○○さんから離れろよ、キモイから』という内容だったのだが、たくさん送られてきたりして、その後、そのリーダー的な女子から、『キモイ、見んな!』『女に近づくな』とか言われ続け、そしてそれを、最初に咎めた女の先生からは、『イジメていい奴と悪い奴がいる。あなたは前者だ』と、俺に告げて、ずっと俺をシカトして、集団無視を容認して苦しめてきたのだ。女子は皆、悪魔だと思った。


 辛かった。


 だから、前世での女子は、俺は嫌いだった。女子に偏見があると言ってもいいくらいに、女子に対しての嫌悪感があったのだ。


 この世界に来るまでは。


「アイラ。この世界では、女性は男性に従わなくてもいいんだぞ」

 俺はそう言った。

しかし、アイラは頭の上で「?」が出てきてるようだった。


 その時、店に女が一人、入って来た。

「アイラ!」

「お姉さん」


え、この女、アイラの姉なのか?

目つきが怖いんだけど‥‥‥。


「わたしはマヤ。この子に変なこと教えるの、やめてくれる?」

「え、俺?」

「聞こえたから。今の」


 なぜか俺は、凍り付いた。


「行くわよ、アイラ。もうすぐ仕事だから」

 そう言うと、その女性はアイラを連れて、『ガルーダの食堂』を出ていった。



ジェンダーの問題はかなり切実に感じますので、こういう話を用意しました。けっこう長くこのエピソードは続きますので、ご了承をお願いします。実は「風と共に去りぬ」を意識してます。読者の皆様に幸あれ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ