第百八十六章・遠回りする想い?
冒険にも華が必要ですね。あ、たくさんのアクセス数をありがとうございます!!
第百八十六章・遠回りする想い?
カル・デールで休息を取ってから、数日。しばらくは戦闘も冒険も無いだろう。
俺とイーゼルは城下を歩いた。
久々にイーゼルと一緒に歩く俺。
「リューイチ、これも、その、デートっていうのですか?」
「まぁ、仲の良い男女二人が出掛けるのが、デートだからな」
「そうですか。デートなのですね」
俺ははっきりデートとは言わなかった。
デートイベントなんて本当はどういうものなのか、俺だってよく分からないのだ。
途中で花屋さんの前を通った。花を見る俺とイーゼル。
「綺麗な花だな」
「ええ。でも、ここにマンドラゴラは置いてないですね」
俺はズッコケかけた。
「マンドラゴラは違うだろ!」
「いえ、あの植物は貴重ですから」
「何のだよ!」
「薬草になりますから」
「おいおい、それは花屋には当然無いだろ!」
「そうですね。でも、魔女としては、興味をそそられます」
「そういや、お前は魔女だったな」
「わたしが魔女であるということは、忘れないでくださいよ、リューイチ」
「そうだな」
俺とイーゼルは、カフェに入った。
俺は軽食とハーブティーを頼んだ。イーゼルは紅茶とケーキ。
「なぁ、イーゼル。どこか行きたいとこあるか?」
「そうですね。王族しか乗れないという、飛行船に乗ってみたいですね」
「飛行船?」
あれ、飛行船ってかなりの高度なテクノロジーを要する乗り物で、この世界にそんなのあるのか?
「飛行船を王族は持ってるものなのか?」
「ええ。ダン・ルーエのドワーフたちが発明した、空飛ぶ船だということです」
飛行船か‥‥‥。どうもこの世界はいろいろ、ちぐはぐな文明を持っているようだな。
あと百年くらいしたら、宇宙に行っちまうんじゃないか?
まぁ、俺の思い込みなのだが。
「それは面白そうだな。あとでルルチェに訊いておこう」
「そうですね」
少しの沈黙。
俺とイーゼルは、本当は気まずいのだった。
俺たちはお互いに告白したも同然だからだ。
邪教の教祖をやっていた時のカンダタの時、イーゼルは俺のことを好きだと言ってくれたし、今回の件で、俺はイーゼルに好きだと行ってしまったからだ。
いつの間に、俺たちはこんなに仲良くなってしまったのやら。
でも、俺たちはお互いの気持ちを素直に打ち明けるのは、まだ先だ。
冒険はまだ、終わっていないしな。それもお互いに分かっているのだ。
「戦争も終わりましたね」
イーゼルが話を持ってくる。
「ああ。いちいち苦労させられるけどな」
「そういえば、あの金山はカル・デールの魔族、エミリディアが管理を任せられたと、ルルチェが言ってましたよ」
「そうか。あいつなら、うまくやっていけるさ。元政治家だしな」
「わたしはパーティーでただ一人、大ケガを負ってしまいましたけど」
それを持ち出すのか、今?
「いや、魔女同士の戦いに勝ったという功績もあるじゃないか?」
「でも、あの後わたしは、油断していました。わたしの隙です。自分のせいで、あなたや他の皆に迷惑を‥‥‥」
「イーゼル、それは違うぞ!戦闘には強い弱いの前に、お互いを助け合う気持ちや行動が一番大事なんだ。それぞれの役目がある。その時、誰かが傷を負うことにもなるだろう。でも、それも覚悟の上だ。俺だって、新エトカニア騎士軍団の連中だって、傷は負った。いや、俺は傷は負ってなかったか、まぁいい。でも、イーゼルがそんなに気にすることは全然無いんだ」
「はい」
「俺もイーゼルを失いたくはない。だから、今も生きているからこそ、俺はお前のことが改めて大切なんだと、さらに気がついたんだよ」
「あ、ありがとうございます」
「気にするな。俺はお前が大事だ。もちろんコマドリやルルチェもな」
「わたしもです」
俺とイーゼルは、互いの存在の大切さを、語り合った。
俺たちは気持ちを遠回りして伝えているような気がしたと思う。
まぁ、それが俺たちの、今の関係なんだ。これでいい。何も悪くはないんだ。
そう思う俺だった。
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