第百八十五章・勝利と、その後のこと。
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第百八十五章・勝利と、その後のこと。
エミリディアの軍勢が、エクル・エスペランザ軍を退けた勝因となったのは、明白だった。新エトカニア騎士軍団も頑張ってくれたが、数的に足りなかったようだった。でも、戦いに勝ったのは、ここにいる皆のおかげだ。
「エミリディア、お前もすぐに駆け付けてくれたな」
俺はエミリディアと、その部下にお礼を言った。
「ありがとな!でも来るのが思ったよりも早かったな」
「ええ。郵便局員の女の子が、カル・デールから速達で手紙を持って来られたのだ。それでリタ・エールとの外交を中断して、速足で飛んで来たんだよ」
「郵便配達人は、やっぱりセーラか?」
「そうだ。あの子だ。あんたにもらった薬で、妹が良くなったと言っていたから、こちらとしても、礼を言っておくといいかな?」
「そうか。良くなったのか。それは嬉しい」
「で、戦争は終わりか?」
「ああ。あとはカル・デールの問題だよ」
「それなら、援軍を連れてきた甲斐があったということだ」
「そうだな。改めて礼を言うよ」
「いや、これも政治だ」
戦争も政治論か‥‥‥。
やはり政治家らしい言葉だな。
「魔王がいなくなっても、戦いは起きるんだな。これぞ、人間の社会だ」と、エミリディアは言う。こいつは人間の本性を見抜いているようだ。でも、それは浅い。
「俺がかつていた世界でも、魔王なんていなかったけどな」
「それを平和というのではないか?」
「まぁな。そう、平和だ」
戦争が歴史を語るとは言うが、平和な時代に名など付かない。
「一度、カル・デールに戻るか」
「それはそうと、この領地の金山は、誰が管理するのだろうな?」
エミリディアのこの発言は、確かに俺も疑問に思っていた。
そう、誰が管理するんだ?
俺たちは皆、捕虜を連れて、カル・デール王朝へと戻っていった。
* * *
王都は戦争のことなど知らないと言うように、人々が夕方になっても、それなりの賑わいを見せていた。
まったく、ホントに戦争とは残酷なものだ。
市井の人々に害が無くて、本当に良かった。
奴隷にされていた村の人たちも解放され、喜んで村へと帰ったようだ。しかし、心のケアのために、カル・デール王朝の医師が、しばらく村人たちの様子を見に派遣されたようだった。
それはそれでいい。
ポラリス姫の迅速な対応が、功を成したようだ。
彼女も立派に政治に貢献している。本来の政治家というものは、こういう人たちのことを言うのだな。
俺はカル・デール王朝を見直した。
火刑とか言っていたポラリス姫も変わったな。いや、あれはたぶん冗談だろう。たぶんな‥‥‥。
俺たちはまた、旅に出るだろう。その時までに、ちょっとだけカル・デールにお世話になることにした。
義理と人情で生きる俺たちのことを理解する者は、この時代にはそういないだろうな。
世界や時代は大きく変わってしまったということだ。
残念なことだ。
人間ドラマやコメディなんかもファンタジーの中で描いて、楽しいです!!