第百八十四章・助けたい人がいる、ただそれだけだ。
読んでくれる人たちに感謝です!!
第百八十四章・助けたい人がいる、ただそれだけだ。
すべての戦いが終わったあと、俺はイーゼルを背負って平原を走り、森の中にいるルルチェのところへイーゼルを連れて行った。
「ルルチェ、頼む!イーゼルに回復魔法を!」
俺は痛みに耐えるイーゼルを下ろし、草むらに寝かせた。意識はある。
ルルチェは回復魔法をかける。ヒーリング効果はちゃんと傷に効いていた。
傷がふさがるが、イーゼルは意識を失ってしまったらしい。
「もう大丈夫なのか?」
「たぶん。間に合ってるわ、きっと」
ルルチェの表情も深刻そうだ。
「イーゼルがここまでの傷を負うなんて‥‥‥」
「ああ。俺がいたのに、どうすることも出来なかった」
「あなたのせいじゃないわよ、リューイチ」
「でも、俺が手を抜いたばかりに‥‥‥」
「それより、エクル・エスペランザはどうしたの?」
「倒したよ。合流したコマドリに預かってもらった。奴隷たちも皆、無事だ」
「じゃあ、戦いはむ終わったのね?」
「ああ、そうだ」
俺はイーゼルの意識のない顔を見て、心配になった。このまま目を開けないんじゃないかと。そう思った。
「俺のせいで、イーゼルは傷を負ってしまった。俺がいながら」
「そんなに自分を責めないで!」
「でも、イーゼルが犠牲になってはダメなんだ。勝手かもしれない考えだが、世界で一番生きて欲しい女なんだ」
「建前に依存しない、あなたのその本音はわたしも尊重する。イーゼルは幸せ者ね」
「こんなこと言ってスマン」
「いいのよ。それがあなたなのだから。あなたにとってイーゼルは仲間以上の存在なのね?」
「もちろんお前やコマドリも大切な仲間だよ」
「それは嬉しいわね。でも、あなたはイーゼルのことが‥‥‥」
「ああ」
「ま、それ以上は言わないわ。きっとイーゼルは助かるわ」
「そうか?」
「心配しないで」
俺は、そのままイーゼルのそばにいた。
* * *
夕方前になると、奴隷にされていた人々が、カル・デールによって保護された。壊滅したエクル・エスペランザ軍も、全員捕まった。
俺はいつの間にか、眠っていた。目を覚ますと、そこには俺を見て笑うイーゼルの姿があった。
「イーゼル!」
俺はイーゼルの体を引き寄せ、思いっ切り抱きしめた。華奢な彼女の体のぬくもりが伝わる。
「イーゼル!良かった。助かって本当に良かった!」
「リューイチ、苦しいです」
そう言われても嬉しくて離す気になれない。
そして俺は、ドサクサでこういう発言をしてしまう。
「イーゼル、お前が大好きだ!」
バカなのか、俺は?
抱きしめたまま、行ってしまった。
俺はイーゼルを離した。
「す、すまん」
「いいえ。でも、今のは‥‥‥」
「いいんだ。忘れてくれ」
冷静になる俺。
「リューイチ、あなたは‥‥‥」
「俺はお前の仲間だ。お前のおかげで連中を全滅させることが出来た。さすがお前だ。イーゼル」
「リューイチの方こそ、一人で相手をたくさんやっつけて、奴隷の人たちまで助けて・・・・・・」
「そんなのは楽勝さ!」
「鍛え方が違うんですね?」
「いや、俺は鍛えたことなんて、一度も無いがな」
これは本当。
とにかく、これでエクル・エスペランザはもう、再起不能だな。
戦争は終わったが、冒険はまだ続くだろう。
一応、この件は解決を見せたってことだ。
戦を書くのは文章だけでは表現しきれないですね。それでもありったけの表現で書きます!!