第百七十一章・エクル・エスペランザについて〈後編〉
今日は別件で更新が遅れました。すいません。読んで頂いてる皆様には感謝しかありません!!
第百七十一章・エクル・エスペランザについて〈後編〉
この件では俺たちは、そのエクル・エスペランザと戦わなければならないだろう。知っておくべき情報は、たくさんあると良いのだ。
戦争を始めるには前情報があった方が、より有利になる。
太平洋戦争でも、ミッドウェイ海戦においては、米軍の情報収集を甘く見ていたから、日本軍は負けたのだ。情報がどれだけ重要かは俺も知っている。
歴史は苦手だけどな。特に日本史は。
さて、エクル・エスペランザについて、もっと知っておきたい。
「クローディアって、エクル・エスペランザの部下については?」
「忍者刀を操る、殺し屋です。かつての戦いで、左目を失って、眼帯をつけているので、容姿はすぐに分かるでしょう」
今度は忍者の殺し屋かよ。
俺はコマドリの方を向いた。
彼女の眼は、熱くギラギラし始めていた。
「エクル・エスペランザの館は?」
俺は店主に訊く。
「北にありますよ」
「この北か」
「ええ。平原の先にあります。館には客人として迎えられれば、容易に入ることが出来ます」
「客人ねぇ‥‥‥」
俺は、それは無理だろうなと思って、腕を組んだ。
「真っ向からは、兵たちによって止められてしまいます」
「兵たちか」
店主のエルフは、人差し指を顎に当てて、う~ん、と考えていた。
何かを思い出しそうとしているようにも見えた。
「ああ、日中は兵たちも、金山に派遣されていて、手薄かもしれません」
「金山?」
また、初めて聞く情報だ。
「民衆を奴隷にして、掘らせているのですよ」
そういや、近隣の村から、男たちはもちろん、女子供まで駆り出されていると聞いたことがあるな。
「彼らを助けることも、役目だな、俺たちの」
俺は自分で言って、その通りだと思った。弱者は助ける。強きはくじく。それが俺の主義だ!
「それで、その金山はどこにあるんだ?」
「金山は館の奥の岩山ですよ」
「じゃあ、そこへも行かなくちゃな」
「お願いします。人々を助けてください」
店主のエルフは、頭を下げた。
「そういえば、あんたはどうして、彼らを助けたいんだ?」
店主はモジモジしつつ、言葉を濁しながら言った。
「もともと、よその土地からきたわたしを、村の人たちからは良くしてもらってたんです。この店を始めたのも、昔、ここへ来てから調子に乗って働き過ぎて、倒れた自分を介抱してくれた恩もあるから、村の人々の安らぎの場を設けるために、店を始めたのがきっかけなんです。だから‥‥‥」
「なるほどな。義理も人情も、もう廃れていたのかと思っていたが、そんなことはなかったってことか」
「義理も人情も、冒険者と同じで、流行遅れの古い考えでしょうけど、わたしはそんな考えは好きです」
「まぁな。今どき暑苦しいとか思う世代はいるのだろうけどな」
実際、俺のいた、かつての日本でも、もうさとり世代になっていて、お互いの空気を読むことで、第二次世界大戦以降の大戦を回避してるも同じだ。
義理も人情も、そういう熱血主義は、今の人にはピンとこないだろう。
でも俺は、そういうのは大好きだけどな。義侠心ってやつだな。動く理由や戦うのに訳はいらない。名誉でも金でも女でもない。何もいらない。それでも戦うのだ。
廃れている時にこそ、これはもっとも必要なことだと、俺はそう思う。
最後に俺は、店主の名前を訊いた。
「わたしですか?わたしはエルフのアレキサンドリアです。アレクと呼んでいただければ、嬉しいです」
「アレクか。良い名だ!」
俺たちは、喫茶店を出ると、さらに北へと向かった。
本当にフランジータ寺院から、そう離れていないところに、エクル・エスペランザの土地はあるんだな。
先を楽しみにしてくれている読者の皆様には、感謝しています。ぴょこぴょこは書けないのですが、更新だけは毎日していきたいと思います。皆さんに幸あれ!!