第百六十八章・クリーチャーがご主人様?
昨日は一章しか更新できず、スミマセンでした。読んでくれた方すべてに感謝申し上げます。
第百六十八章・クリーチャーがご主人様?
俺たちは寝る場所を確保しようとしたが、どうも部屋という部屋は、どこも汚れ方が尋常ではない。ほこりやススだらけで、ベッドもある部屋もあったが、真っ白に汚れていた。
「どこもダメだな、こりゃ」
俺は次々にドアを開けて、部屋の中を見回し、扉をそっと閉めることを繰り返した。
「この城に入ったのは不正解だったようだな」
と、コマドリが独り言のように言った。
まぁ、それでも外は大雨で、雷も鳴っているし、真っ暗だ。
外よりはマシだろう。
俺はさらに上へと続く階段を見つけた。
「ここからまだ上に行けるぞ」
吹き抜けより上に続いている階段だった。
俺たちは三階にまで上がる。
確かに、ここまで来れば、おどろおどろしい雰囲気は目立ってきていた。
イーゼルが俺に、さっきより強く引っ付いてきた。
扉があったので、それを開けてみると、そこには人間の女の姿をしたクリーチャーが座って何かの古くて大きい本を読んでいた。
ヴィクター・フランケンシュタインか?いや、違う。あれは女だし。
なら、彼が造った人間か?
「勝手に入ってくるとは、無礼な方々ですね」
クリーチャーは長く、ウェーブのかかった赤茶色の髪を、手でいじりながら言った。
「すまん、人がいたなんて知らなくて。あんたがここの主か?」
俺はためらいもなく話しかける。
「ええ。わたしは、故ヴィクター・フランケンシュタインの造った、最後のクリーチャー。名をウィノラと言う」
「ウィノラ?」
「そうよ。あなた方はどうしてこの城に?」
「ああ、あの、雨が降ってきたので、雨宿りにと‥‥‥」
「この城に雨宿り?」
「ダメだったか?」
「討伐隊なら追い返しているところだが、ただの雨宿りなら、好きに部屋を使ってもらっていい」
「え、いいの?」
「ああ」
「でも、この城の部屋はどこも、長い間使ってないようで、寝るには掃除が必要なんだけどな」
ウィノラはため息をついた。
「わがままと贅沢は顔だけにしろ」
顔がそんなので悪かったな!
「この城の、この雰囲気が私は好きなのだ。好まないなら出ていけ」
「う‥‥‥、悪かったよ」
「ちなみに、この城は悪霊たちの住処にもなっている。彼らのことは放っておいてやれ」
あ、地味にいるのね、そんな幽霊が。
俺は信じてないが、いるというのならいるんだろう。
「俺たちには見えてないけどな」
「視覚化できるのは浮遊霊。見えないのは地縛霊ととらえていい」
マジに、ガチでいるんかよ!
俺たちは、ウィノラの部屋を出ていくと、比較的そんなに汚れていない部屋を見つけ、そこに寝袋をひいて、睡眠を取った。
イーゼルが俺の手を握ってきたのが、感触で分かった。
「イーゼル?」
「あ、あの、怖いので、寝付くまで手を握ってください」
「ああ、いいけどよ」
俺の方が緊張して、眠れないじゃないか。
ま、いいけどね。
イーゼルの手は温かかった。
そのまま、夜は更けるが、外の大雨と雷だけは、相変わらず音を立てていた。
今日は普通に更新できそうです。