第百三十六章・アスヒスト文字が読める人。
これからちょっと外に出てきます。読んでいただいてる読者の皆様に感謝してます!!
第百三十六章・アスヒスト文字が読める人。
俺たちは、夜のうちに坑道を抜けて、レールを辿った。そこに馬車が止めてある。
そこで野宿することにした。固いパンと、塩加減が薄味のスープを飲む。
こういうのが冒険者のつらいところだ。
何せ、食料は長持ちするものしか持ってこれない。
それにたくさんは食べられない。いつも少しは非常時の時のために残しておくのが鉄則なのだ。
決して楽な旅など無いのだ。
冒険に憧れる人たちが、挫折するのも無理はない。
これはしょうがないのだ。
小食アピールしている女子が、ここには三人もいて、実は助かっている。
さて、どこでアスヒスト文字を見たのか、俺はまだ思い出せないでいた。
ルルチェがまだ、火のそばで、辞書とメモした石板の文字とを見ながら、頭を抱えていた。
まだ、自分で訳する気らしい。
「ルルチェ、どうだ?」
「ん。ダメね。辞書も状態が悪いから、穴だらけや文字がつぶれている部分もあるし」
「ちゃんと文字が読めないと、何が書いてあるのか分からないからな」
ルルチェはあきらめた。
「リューイチ、あなたはどこでアスヒスト文字を見たっていうの?」
「それが思い出せないんだ。確か最近のことだと思うんだけどな」
「思い出しなさいよ」
「う~ん、分からん」
ルルチェはため息をつく。
「ま、でもさっきのイーゼルの戦い方は立派だと思うわ。そう思わない?」
イーゼルはもう、馬車の中で寝ていたので、俺たちの声には気付かなかった。
「そうだな。やっぱりレベルが上がってのことだろう」
「そうね」
「俺も戦いたかったなぁ。せっかく新しい剣を調達できたってのに」
「錬金の剣ね」
「そうだよ。これだ」
俺は剣を抜いて、刀身を見せる。
「その形状は特殊よね。サーベルでもない、シミターでもない、新しいデザインの剣よね」
ま、これは俺のいた世界で言う、日本刀にすごく似ているのだから、そんなに特殊とは思えなかったが。
博物館で日本刀展に行ったこともあるし。美術品的な価値もあるだろうしな。
「これを造ってくれた、あの吸血鬼の、名前何だっけ?あの子がこしらえてくれたから、ちょうど良かったけど」
ん?ちょっと待てよ?
「あの日、あの吸血鬼の鍛冶屋、兼錬金術師のあの子が手に持っていた本の文字、あれがアスヒスト文字でタイトルが書かれていたぞ!」
「え?」
「思い出した!あそこで見たんだ。彼女はアスヒスト文字を読めるんだ」
「あの、ケイト・シュルエットって子?」
「そうだよ!確か、三百年以上生きているって言ってたから、昔の言葉も分かるはずだ!」
「じゃあ、帰りに寄ってみましょうか?」
「ああ。そうしよう!」
「思い出してくれて良かったわ」
ラッキーだった。いろんな意味で。
鍛冶屋に行って、剣を手に入れたのも、アスヒスト文字を見たのも、偶然という名の必然だったのだ!
帰りにあの森へ寄ろう。そして、石板の文字を読んでもらうんだ。
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