第百三十一章・トロッコ〈前編〉
トロッコ・アドベンチャーは男の子の憧れです!!
第百三十一章・トロッコ〈前編〉
馬車で移動した俺たち一行。その先は地図には載っていないが、鉱山がある。
この辺に坑道があるのか?
一度止まった馬車を下りて、俺は草むらを手で分けていった。
ああ、これか!
そこには、小さなレールがあった。これは鉱山に続いている。坑道もその先だろう。
俺は皆に馬車を下りるように言った。
「ヘ、ヘビとかいないですよね?」
イーゼルが小さくなって困った顔をした。
「おいおい、ヘビが怖くて魔女やってられるのか?」
「だって、気持ち悪いんですもの。暗闇やダンジョンは、まだ我慢できます。怖いし、苦手ですけど。でも、ヘビは‥‥‥もっとダメです!」
まぁ、そういう魔女がいてもいいのかな?
「しかし、坑道はこの先のようだ。レールに沿って歩いた方がいい」
「リューイチが言うのならいいでしょう」
と、ルルチェが言った。
「どうせこの先は地図には載っていないのだから」
「ああ。ま、いいんじゃねーか?」
あとはコマドリだ。
「わたしもリューイチに賛成だな。わたしも忍者の端くれ。合理主義だからな。うん、リューイチの意見には大賛成だ」
言い方がいちいち大げさだな。まぁ、いいか。
俺たちはレールの向かう先に足を運んだ。
やっぱりというか、その先には閉鎖した鉱山が見えてきた。
鉱山の入り口付近には、大量のトロッコが山となって積み上げられていた。
何百とあるトロッコが、無造作に山を造っている光景を見るのは初めてだ。
「ここはホント、さびれてるな‥‥‥」
何か、ため息が自然に出るのを覚えた。
「この先にもトロッコがあるぞ」
そう言ったのはコマドリだ。
よく見えるレールの上に、二つ連結してあるトロッコがあった。
「あれに乗ろうぜ!」
ちょっとテンションが上がっていく俺。
「ま、待て!あれで坑道の中を行くのか?」
「ああ。面白そうだろ?」
「いや、不安しかない‥‥‥」
俺はトロッコを加速させるために、トロッコを押した。
うん、軽いや!
何せ、俺は力もチートなのだから。
ずっと押していると、下り坂になっていった。その先もレールが伸びている。
「よし、みんなで乗ろうぜ!」
ルルチェは、「男子ってこういうゴッコにたいなの好きよね」と、つぶやいた。
「しょうがないですね。わたしも乗ります」
最初にトロッコに乗ったのはイーゼルだった。
二両あるから、一つのトロッコに二人乗ればいいことだ。
先頭のトロッコにはルルチェとコマドリが乗り、二両目には俺とイーゼルが乗る。そのままトロッコは、坂のレールを下っていった。
おお!これぞ冒険じゃないか!!
俺も昔は子供の頃、草スキーを近くの丘で滑って楽しんだものだ。その時はたくさん仲間がいた。あいつらは今、どうしてるだろう?
まぁ、俺みたいに死んではいないだろうけど‥‥‥。
しかし、このトロッコは、勝手に坂を下ってはいるが、止まる気配はない。むしろ、どんどん加速していく。
坑道のトンネルの入り口が見えた。
『この先、危険』のプレートが道をふさいでいたが、レールはそこに伸びている。
ああ、ヤバい‥‥‥。
トロッコはそのプレートをぶち破って、トンネルの中に入っていく。
てか、スピードが出過ぎだ。
ガラガラガラと、錆びた車輪が摩擦で火花を上げる。
坑道の中はヒンヤリしていたが、それを感じる間もなく、トロッコはレールの上を走っていった。
トンネルの中は、だんだん広くなってきて、レールが二つに分かれているのが見えた。
右に行けば、線路が無い。左しかない。でも、レールはこのまま行くと、右に行ってしまう。
そばにポイント切り替えのレバーがあった。
俺は身を乗り出すと、鞘に入った錬金の剣を伸ばして、レバーを思いっ切り叩いてポイントを切り替えた。
すんでのところで、トロッコは左の線路に入る。別のトンネルに進むトロッコ。
あ、危なかった。
トロッコの速さはもう、ジェットコースターのようにスピードを上げていた。
「リューイチ!このままじゃ止まらないわよ!」
ルルチェが声を荒げてきた。
「分かってるよ!」
ガラガラガラと、トロッコはよく脱線もせずに走っていた。
その先の線路は、水たまりに浸かっていた。
トロッコはその水たまりにバシャーンと突っ込み、止まった。
全員、水浸し……。
最悪だった。だいたい俺は水が苦手だというのに、ああ‥‥‥。
「ちょっと、もう‥‥‥」
ルルチェとコマドリが水たまりから出る。幸い、俺とイーゼルのトロッコは、水たまりに少しだけ浸かっている状態だった。
俺たちはトロッコをその場で捨てると、そのままトンネルを進んだ。
女子には大ひんしゅくだった。
読者の皆様に感謝しています!!読んでくださり本当にありがとうございます!!