第百二十九章・新たな依頼、ってまるで派遣の仕事みたいだな。
自分の派遣社員時代を思い出します(笑)
第百二十九章・新たな依頼、ってまるで派遣の仕事みたいだな。
俺とコマドリはダ・ガール城の中庭で、剣の稽古を欠かさずしていた。イーゼルは図書館で魔法の勉強、それにはリエットやベアトリアースがたまに、一緒に勉強に付き合ってあげていた。
ルルチェは城下の貧困の問題の解消に、精を出している。
それぞれが数日間、別々に過ごしていたが、ついに新たな旅の依頼がやって来た。
プルストーンという場所の、丘の上に石板があって、そこに書かれているアスヒスト文字の文章を解読してくるような話が、俺たちに依頼された。
そこへ行くには、馬車で九日の距離を移動して、さらにターダスクの階段と呼ばれる5000段の階段を登っていかなければならないのだ。
まぁ、遠慮なく俺たちは、依頼を引き受けたのだが。
ただ、そこへは元鉱山だったところの坑道、つまりトンネルを抜けないと道が続かないのだ。俺たちは最初に、その坑道の入り口を探す必要があるのだ。
俺はその依頼を持ってきたルルチェに訊いてみた。
「ルルチェ、そのトンネルは分かるのか?」
ルルチェは「う~ん」と言いながら、テーブルの上に広げた地図を見ていた。
「たぶん、トロッコの線路があるはずよ。その線路を見つけて、それに沿って行けばいいんじゃないかな?」
「線路か‥‥‥」
「でも、肝心の坑道の地図は手に入らないのかなぁ‥‥‥」
ルルチェの言うことも一理あった。トンネルの中が迷路だと、とても困る。
「ちゃんと出口はあると思うわ。先に誰か調べた人がいるはずだから」
「その人が、もう亡くなっていたら?」
「え?」
「いや、モンスターとかに襲われたりしてさ」
「う~ん‥‥‥」
「どうだろ?」
「分からないわ。坑道の地図だけが手に入らなかったわけだしね」
俺はため息をつく。前から思っていたけど、そういうところは、けっこういい加減なんだな。
「トンネルを抜けたあとに、その5000段の階段があるんだな?」
「ええ、そうよ」
「その先が石板があるところなんだな」
「そう。けど、アスヒスト文字で書かれた文章をどうやって解読するかも問題ね」
それには俺に考えがあった。ベアトリアースに図書館でアスヒスト文字の辞書を探してもらっていたのだ。運が良ければ手に入るだろう。
「坑道のことは、後に回そう。それより皆が安全に行けるように前準備はしとかないとな」
その時、ベアトリアースが俺たちのところに来た。
「ありましたよ、アスヒスト文字の辞書」
ベアトリアースが手に持っていたのは、ボロボロの辞書だった。
状態が悪すぎる‥‥‥。読めるのか、それ?
俺はその辞書を渡してもらった。
「これは読めるところと、読めないところがあるな」
「そうですよ。その辞書は図書館の二階の書庫で見つけた、唯一のアスヒスト文字の辞書だったんですから」
「よく見つけてくれたな」
「いいえ、わたくしの仕事のひとつですから」
「でも、サンキュな!」
俺はベアトリアースの頭を撫でた。
「子供扱いはしないでください」
「ああ、悪かったよ」
「お前は失礼な奴です」
そう言うと、ベアトリアースは部屋を出ていった。
「さて、この辞書でイケるか?」
俺はルルチェにも辞書を見せた。
「これは本当にリューイチの言う通り、読めるところと読めないところがあるわね」
「だな」
「これを解読に使えるかは少々疑問ではあるけど、使えるモノは使うしかないわね」
ルルチェはそう言って、辞書をテーブルに置く。
でも、この文字って、どこかで見たような気もするが‥‥‥。
しかも最近。
どこでだったか思い出せなかったが‥‥‥。
まぁいい。
「しかし、世の中が平和になったというのに、何でモンスターとかが、今でも出てくるのだろうな。この間のツイスターのように」
「リューイチ、それは愚問よ」
「なぜ?」
「平和な時代でも、犯罪は起きるわ。それと同じよ」
「なるほどね」
「きっと、みんなが平和に暮らせる時代が来るのは、もっと人間が賢くなって、負の感情を失った時よ」
「そんな時代は来ないだろう?」
俺のいた時代でも、イジメや差別、迫害はあったのだ。それを受け入れるのはまた別だ。でも、俺が暴走しても、イーゼルが止めてくれる。彼女に答えるためにも、俺はもっと自信を持たなければならないのだ。俺は人の悲しみを知っている。だから真の意味で、自分を好きにならねば!
そう決意する俺だった。
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