第百二十二章・地味にタイマン…ではなかった!
中古でDVDを数枚購入してきました。ネタの参考にします。
第百二十二章・地味にタイマン…ではなかった!
夜十一時になって、イーゼルとリエットは人のいない高原でお互いに向き合った。
勝負の時が来たのだ。
暗いところで、二人だけで立っている。
「先輩、魔導書は置いてきましたよね?」
「ええ。では勝負です」
「では、わたしから。いいですか?」
イーゼルはうなずく。
「レトワネル・クダスト・ルーエル・テル・デルベル」と、リエットは唱えた。
これは魔法陣の一つを描く呪文だった。
「なるほど、魔法陣の制作魔法ですか」
「そうです。これはその魔法の呪文です」
イーゼルは自信ありげに目を閉じて、自分の番が来たので魔法を唱える。
「クルセイダー・ザントニオ・レアスペール・ナン!」
唱え終わった。
「それは召喚魔法ですね」
「ええ」
と、その時、突然魔法陣が浮かび上がり、そこから召喚獣が現れる。
「えっ、何ですかコレ?」
リエットが驚いた。
「ベートを召喚したみたいですね」
イーゼルが言う。
「ベート?」
「怪物の一つですよ」
魔法陣から出てきたのは、巨大な獣、ベートだった。
「これはわたしのしもべです」
「ひ、卑怯な‥‥‥!」
「戦争に卑怯も何もありません」
「そ、そんな!」
「負けを認めてください」
「こ、こんな勝ち方‥‥‥」
「これが冒険者たるやり方ですよ。こういうのが出来なくて冒険は出来ませんから」
「ぼ、冒険者?」
「わたしは今は、魔女であり、冒険者なんです。リューイチのようなヘタレとはわたしは違うんです。リューイチは甘過ぎるんですよ。これがわたしの力の一つ、知の魔法です」
「そ、そんな魔法が?」
「ええ。自分の知力を高める魔法です」
リエットは、たじろいだ。
「戦闘はこんなものではありませんよ。今のわたしのレベルに真っ向から対抗しても無駄です。これで勝負は着きました。もう退いてください」
「な、納得できない!」
「ではこのベートと戦いますか?」
「う…クッ!」
リエットはどうすることも出来ない状態だった。
「まさか、先輩は本当に強くなったんですね」
「そんなことは思ってませんが、これも冒険や旅の賜物なんです」
「以前の先輩ではないということですか」
「まぁ、そうかもしれませんね。これもリューイチたちと出会ったからなんです」
「そ、そうですか。分かりました。わたしの負けです」
イーゼルは別の呪文を唱えて、ベートを魔法陣の中に戻した。
「こんな勝ち方、わたしも望んではいなかった。でも、勝負は勝負。負けられない」
イーゼルはボソッと独り言を言う。
俺たちは、イーゼルとリエットの勝負を遠くから見ていた。
何だかんだで俺たちは心配していたのだ。
「どうなの?」
ルルチェは俺に訊いてくる。
「イーゼルが勝ったようだ」
「妙な勝ち方だったみたいだけどな」と、コマドリ。
「お前、視力良いな、コマドリ」
「わたしは忍者だからな。遠くまで見通せる訓練はしている」
「なるほどな。イーゼルが勝ったんなら、もう安心だろ?」
「そうね」
「うむ、イーゼルはよくやった」
俺たちは安心すると、城の中へ戻っていった。
休日にも関わらず、読んでいただいている方々には感謝でいっぱいです!!