第百十五章・シャル・ウィー・ダンス?
今日は更新が遅れてしまい、誠に申し訳ないです。
第百十五章・シャル・ウィー・ダンス?
舞踏会が始まると、皆で男女が手と手を取り合いながら、音楽隊の演奏に合わせて踊り始める。ダンスの経験が無い、俺やイーゼル、コマドリは、広間の端に立っていた。
ルルチェは父親と踊っている。
「どうする?」
俺はイーゼルに言った。
「え?わたし、踊れませんから」
「それは俺もだよ」
「でも、こんなにゆっくりした音楽が奏でられているのに‥‥‥」
「じゃあ、踊るか?」
「え、リューイチと?」
「こういうのは適当に踊ればいいんだよ。たぶんな」
それでもイーゼルはためらう。
コマドリが俺の手を取り、広間の皆が踊っている方へ引っ張ろうとしてきた。
「コマドリ?」
「リューイチ、わたしと踊れ!」
「な、なぜ?」
「そなたはわたしの初めての口づけを奪った男だからな」
初めての口づけというのは、ファーストキスのことかよ。
でも、それを今、この場で持ち出すのか?
ってか、あれはキスではない。マウス・トゥ・マウスだ!
「リューイチ、コマドリとキスしたのですか?」
イーゼルが驚いた顔で、尋ねてきた。
「いや、違う。あれはただの人工呼吸だ。誤解するな!」
「それに、わたしとリューイチは、無人島で一週間、一緒に暮らした仲だからな」
「言い方!」
俺は何だか焦った。別に言い訳しなければならないことなど無いはずだが。
「さぁ、踊ろう!」
なんと積極的なコマドリ。
俺はコマドリに引っ張られ、広間でコマドリと手を握り合う。
「お、おい、コマドリ!」
「さぁ、ホラ!踊ろう」
俺とコマドリは適当に、体を引きつけ合いながら、ゆっくりと音楽に合わせて踊り始めた。
「こ、これでいいのかよ?」
「さぁ、いいんじゃないか?わたしも知らないし」
おいおい、間違っていたなら恥ずかしいぞ、これ。
しかもこういう時って、男性側がリードするモンじゃないのか?
何度もコマドリの足を踏みそうになり、その都度、俺はバランスを崩していた。
これでもダンスなのか?
イーゼルの方を見ると、他の男性が声をかけるのが見えた。
音楽が一度止まると、相手を交代することになっていたらしい。
今度はルルチェが代える相手に俺を選んだ。
俺に選択肢はないようだ。
今度はルルチェと踊ることになった。
「どう?楽しいでしょ?」
踊りながらルルチェが話しかける。
「ああ、ちょっと緊張するけどな」
「体を揺らして、くるくる回ればいいのよ」
「そういうもんか?」
「ええ。さぁ、あなたがリードしてみて」
「リードって‥‥‥」
「わたしがあなたに動きを合わせるから」
「そうか、なら‥‥‥」
俺は自分のペースで踊り出す。それに合わせてルルチェが器用についてくる。
さすがにダンスには慣れているんだなと、俺は感心した。
俺はただ、適当に動いているだけなんだがな。
ようやく音楽が、一度止まる。
「ふう。けっこう汗が出るな」
「それは経験不足!」
と、ルルチェが言う。ルルチェは全然汗をかいていなかった。
ホントに慣れてるんだな。
最後にもう一曲、音楽が始まった。
スローペースでドラマチックな音楽だ。
さぁ、次の相手は誰だ?
俺は背中の方にいる女性に気がついた。
そこにいたのはイーゼルだった。
「イーゼル!」
「リューイチ?」
イーゼルが言葉を詰まらせたが、スッと手を出してきた。
「踊るか?」
「は、はい!」
俺とイーゼルは体を寄せ合った。
今日は、あと一回更新予定です。読んでくれる読者の皆様に幸あれ!!