第百十二章・俺と戦いたいらしいレラ。
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第百十二章・俺と戦いたいらしいレラ。
カンダタの手続きが終わったあと、レラは俺に、関心を持っているような目で見てきた。
「あなたは不思議な気を放ってますね」
「え、俺?」
確かに俺は、チートスキルの持ち主だが。
「ぜひ、あなたともお手合わせ願いたいのですが、いかがです?」
「いや、いかがって言われてもなぁ。俺はただの冒険者だし、武術なんてとてもとても‥‥‥」
俺は断ろうとしていたが、イーゼルもコマドリもルルチェも、俺とレラのお手合わせに興味深々の様子だった。
おいおい、マジかよ?
「どうなっても知らないぞ?」
「あら、自信があるんですね。勝つ自信が」
レラは笑顔で闘気を放った。
「勝つ自信というか、実際勝てるし」
「あなた、傲慢なのですね。でも、そういう人、嫌いじゃありませんよ」
「じゃあ、ちょっくらやってみっか。本気でいいんだな?」
「どうぞ!」
レラは余裕だ。
いいのかな?俺はチートなんだぞ?
まぁ、それでも戦いたいというのなら、あとはもう、本当に知らねーぞ。
俺はダガールの剣を置いて、素手で戦うことにした。
お互いに対峙する。
礼をする俺とレラ。
「では、始めましょうか!」
「ああ。俺の能力の凄さを見せてやるよ」
「本当に傲慢なんですね」
俺は足を大きく踏み込むと、グーパンをレラに向かって放った。
女を相手に殴るってのは気が引けるけど。
会心の一撃!
レラは防御も回避も出来ないまま、俺のグーパンを食らった。天井に頭を打ち付け、畳の上にドスンと落ちる。
勝った。
いや、これが当然なのだ。レベル無限大の俺にどんなに強い人間がいても、勝てはしないのだ。だからチートスキルと言うのだ。
レラは大の字になって倒れていた。
殺っちまったか?いや、これは事故だ。
ルルチェは、あまりのあっけない結末に、少々退屈気味で、「もっとすごい攻防戦が観たかったのに」と、不満を漏らしていた。
「ホントだぞ、リューイチ。一撃でやっつけるなんて面白くないだろう?」と、コマドリも言った。
「リューイチは人間もモンスターも一発で倒しますからね。人間は誰でも一つは得意なものがあるのですよ」
と、イーゼルがフォロー気味な発言をする。
どうしろってんじゃい!
「とにかく、俺の勝ちでいいんだよな?」
レラは頭を押さえながら、立ち上がった。ケガまではしてないらしい。
それで済むなら上々だ。
「衝突の瞬間、気を一点に集めて、威力を半減にしました」
なるほどな。ダメージを軽減したのか。
「あなた、何者です?」
俺は頭を掻きむしりながら、「冒険者だ」とだけ答えた。
「では、魔王が生き返ったのですか?」
「いや、別にそういうわけじゃ。平和な世ですよ、下界も」
まぁ、冒険することは出来るがな。
「じゃ、これで試合は終わりだな、レラ」
「あ、待ってください。あなた、ここでインストラクターやりませんか?」
「やりません」
「あなたのような人が、人間を動かすのです。見た目はヘタレっぽいですが、行けると思います」
ヘタレは放っておけ!このアマ。
「俺はまた、冒険に戻るよ。それがあればの話だがな」
「わたしもやはり未熟でした。あなたのことをヘタレのくせに、すごい気を発しているということに囚われていたんです」
見た目で判断するな!
「いや、あんたはカンダタの良き師匠になってくれ。それが俺の望みだ」
「それは、約束します」
「じゃあ、俺たちはこの山に観光に来たんだ。観光させてくれ」
「それでしたら、どうぞいくらでも観てってください。ごゆっくりどうぞ!」
「ああ」
「それで、その間に気が変わったら、またこの修行場に来てくださいね!」
「いや、それは無いから」
俺たち一行は、その場をあとにして、ゆっくりと武術の国、レドアローナ小国を見学しに行った。
最近は体調を管理しています。体が資本とはよく言ったものです。皆様もご健康を大事になさってください!!