第百十一章・カンダタ、決心しろ!
昨日のアクセス数が350を越えました!!読者の皆様に感謝です!!
第百十一章・カンダタ、決心しろ!!
レラは呼吸を整えて、ズンと立っていた。
さすがの達人、いや、もう活殺自在の武術家というわけだ。
俺は拍手したくなった。
カンダタはもう、戦う気も失せているように、その場に立ち尽くした。
「俺は強いはずなのに、なぜ一発たりとも当たらなかったんだ?」
「それは簡単ですよ。わたしは水。その水面に移る自分自身とあなたは戦っていたのですから」
「水?」
「ええ。水にパンチもキックも当たるはずはないでしょう?」
「そんなことが‥‥‥?」
「でも、わたしも未熟です。あなたにこんなに攻撃させて、本当に大人げないですよね?」
「‥‥‥」
「あなたはご自分の無力さを知りました。本当の修行はこれからですよ」
「これから?」
カンダタはキョトンとした。
「武術はこれからの時代、‶武道″へと変わっていくのです。戦いに使うことよりも、道を教えるものに変わるのです」
ああ、やっぱり武道っていう概念も、こういう時に生まれる思想なのだな。
俺の前世でも、そういうのを説くのが一般的だ。戦争社会が終わってからの話だが。
いや、それでもそれは、ほんの一部でしかないのかもしれないが。
前世でも競技化はされているから、やはり勝ち負けの概念だけは残っているのだが、ここではそういう競技のための武術ではやってないのだ。
貴重な場所だぞ、ここは。
「カンダタさんでしたっけ?あなたはここで修行をすることをお勧めします。ただ、稽古して、汗を流すだけ。それだけでいいと思います」
「お、俺がここに?」
「はい!」
嘘偽りのない表情でレラは言う。
「俺は、邪教を作り、信者に破壊を教えて、国家の転覆を望んだ」
「それは‶かつて″の話でしょう?」
「それでも俺をここに置いてあげると言っているのか?」
「あなたは修行次第では、人に正しい道を教えられる素質があります」
「お、俺は許させたのか?」
「あなたは力を手に入れ、その力を使う道を間違っただけです。これから少しずつでいいですから、新しい自分を作っていきましょう」
「は、はい!」
カンダタは目からうろこが落ちたようだ。
「決めたぞ。いや、決心した!俺はあんたについていく」
「ついていくなんて‥‥‥。並んで歩みましょう!」
「お、押忍!」
押忍って、どこの空手だよ。
でも、これでカンダタは自分の生きる場所を見つけたようだ。ここにいれば、あいつは成長できる。
あいつには導き手が必要だったんだ。
「では入会ということでよろしいですかね?入会金は20000リールになります」
入会金って、いきなり金の話か?
まぁ、無料で入会など出来はしないだろうが、それは俺たちも聞いてない。
ひょっとして見学にも金が取られるんじゃないのか?
「お、俺はずっと貧民街にいて、とてもそんな大金は‥‥‥」
俺はちょっと同情した。カンダタにそんな金は、持ち合わせてはいないことは知っている。
「俺が出すよ」
俺は金庫番のルルチェに、今まで稼いだ金の中から、カンダタの入会金を出してあげるように頼んだ。
「リューイチ、以前はわたしたちと、あの男は敵同士だったでしょ?」
「分かってる。分かってるよ。でも、ここは俺の顔に免じて20000リール出してくれないか?」
「本当にあなたは人が良いのね」
「悪いか?」
イーゼルが助け船で、「出してあげたらどうです?」と、言ったくれた。
「はいはい、分かりました。20000リールね。そのくらいの金額なら出せるわよ」
ルルチェがレラに20000リールを払った。
「毎度ありです」
「結局この世は金か‥‥‥」
俺はちょっと呆れた。
そのあと、カンダタは別の武術家に連れられて、その場を去ろうとする。その間際、カンダタは俺に一言、「ありがとう」と、言ってから去った。
この作品はファンタジーに冒険、それにラブストーリーでもあります。今後の展開にも注目してください!!