第百十章・修行が必要だ!
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第百十章・修行が必要だ!
カンダタの強さは、複数の格闘技や武術を独自にミックスさせているところだ。
カンダタの攻撃は実に実直で、力強いものだった。
突きやストレート、ローキックにヒザ打ちが次々と繰り出されていく。が、それらは全部、レラにかわされた。
すべてが紙一重で当たらない。
なのに、レラの方は全然攻撃してこない。かわしてばかりだ。
「バカな、なぜ当たらない?」
カンダタは焦った。
「それがあなたなのですよ、カンダタさん」
「何だと?」
カンダタはイラついていた。
「戦いをコミュニケーションと例えるのなら、あなたはすべてが一方通行なのですよ」
「な‥‥‥!」
「それをあなたが自分自身で証明しているんですよ」
「そ、そんなバカな!」
「最強を誇れば、さらに最強が出てくるということです」
カンダタは現実を突き付けられたように、うろたえる。
「最強は俺だぞ?」
「では、わたしは超最強です」
ポンと言うようにレラは言い放つ。
挑発には挑発なのか?
「もっと打ってきなさい」
レラの一言に、カンダタは反応するかのように、レラに向かっていく。
レラはカンダタの出してきた拳を取り、小手返しをかける。
ひっくり返るカンダタ。
レラは手を離したので、すぐに起き上がるカンダタ。
「ちくしょう!」
ムキになったカンダタは、さらに攻撃を仕掛けた。
今度は四方投げ。
倒されるカンダタ。
もはや、相手に遊ばれているようだった。
次は入り身投げを食らってしまった。
入り身、四方、小手返しと来れば、これらはおそらく合気道の技だ。
だから攻撃が全部、ひっくり返されるのだろう。
あがけばあがくほど、技が決まってしまう。
カンダタは技がかかる原理をまったく知らないのだ。いや、分からないのだろう。
「どうしたの?まだまだこれからよ!」
レラはさらに挑発した。
どうやら、あれも攻撃させるように仕向けた言葉なのだろうな。
気の済むまで、カンダタを暴れさせているのだ。それにまったく気づいてないカンダタだった。このまま時間だけが過ぎていく。
ようやく、カンダタの動きが止まった。
息切れするのに四十分はかかっただろう。よくやった方だ。
「どうです?ご自分を理解できましたか?」
カンダタは体をダラリとさせて立っていた。
「何で‥‥‥、どうして‥‥‥」
「あなたの中の黒い部分を少々取り除いてあげました。どうですか?」
ニコリと笑うレラ。
「あんたは一体、何なんだ?」
「最高位の段を持つ武術家、レラです」
「最高位だと?」
「ええ」
レラの余裕の表情は、なぜか菩薩のようにも見えた。
なるほどな。達人の顔だ。
これは勝つとか負けるとかの話ではない。
絶対に勝てないし、負けも無いという状況なのだ。
それに気づかなければ、終わることはないのだ。
宇宙的に、ずっと続くのが普通だ。
レラとはそれほどの‶武″を身に着けた人なんだ。
「これは修行が必要なんだな」
俺はかすかな声で、そうつぶやいた。
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