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第百七章・双子のホームレスには、新しい仕事を!

読者の皆様に幸あれ!!

第百七章・双子のホームレスには、新しい仕事を!



 セーラは一度、落ち着いた。でも盗ったものを返す気はないらしい。

「まったく、私はスリで生きてるんだぞ?」

 俺は頭を掻きむしる。

「よく捕まらなかったな」

「今までか?」

「ああ」

「そんなにヤワならスリなんて務まらないでしょ?」

「いや、やめろよ」

「あんたらみたいに血色の良い顔した奴らには分からないことだよ。だいたい水や食い物で苦労したことないだろ?一日に朝昼夕、三食、一汁三菜食える立場にいる奴が、偉そうに講釈垂れてるんじゃねーよ!」


いや、冒険者としては固いパンや白湯に近いスープで凌ぐこともけっこうあるんだぞ。


「それでも、働いて稼いだ金は裏切らない」

「そうか?」

「ああ」


 まぁ、でも働くことに関しては、俺もそんなに詳しくは無いのだが‥‥‥。

俺は高校生で三年の時に不登校になって、引きこもったのだから、純粋な労働というものは、実は経験したことがない。と、いうよりバイトすらしたことが無いのだ。

 

それで貧しい者に説教とは、俺も偉くなったもんだな。

 

「ルルチェ、この二人をダ・ガールで雇ってやったらどうだ?」

 ルルチェは自分でもそれは考えていたようだった。だが、確かダ・ガールでも貧富の差があって、それすら解消されていないままで、勝手にこの二人だけとは、言えないようだった。

「誰でも彼でも身請けというわけにはいかないわ」

「そうか‥‥‥」

「ごめん」

「いや、俺こそ悪かったな、変なこと言って」

「ダン・ルーエかカル・デールで雇ってもらえるか訊いてみてもいいけど」

「なるほどね。トドス王子かポラリス姫に言ってみれば、なんとかしてくれるかもしれないな」


コネは強いってことか。


 さっそく俺たちは、二人を連れて、城へ向かった。

クララはともかく、セーラの方は俺たちをまだ、信じてはいないようだった。

まぁ、そんなに簡単に知らない人について行ってはいけませんってことかな。


 俺たちはルルチェのいとこのポラリス姫の旦那と仲良くなったので、それもカンダタ率いるルシフィーネ教団の壊滅をさせた功績もあって、温かく迎えられた。

 以前もこういう入城は出来たのだ。俺たちは信用されているらしい。


 ダン・ルーエの王は、俺たちを夕食に誘ってくれた。クララとセーラも風呂に入れられ、着替えさせられ、洋装のきれいなドレスを身に着けて、夕食に招かれる。

「これは一体どういうことなんだ?」

 と、セーラがチンプンカンプンに今の状況を把握できずにいた。

 クララもあっけにとられた顔で、晩餐に参加した。


 王には仲間が増えたと思われたらしい。それはそれでいい。

 

 晩餐中に王は、ため息交じりに、「今はルイ・イークとの緊張が続いていてな」と、言った。

「大変ですね」

「ああ。今は魔王がいなくなってから、戦争の形が変わってしまった。現代は人間と人間の戦争の時代になってしまったのだよ」

「そうですね」

「しかし、ルイ・イークのような機械魔法や魔法科学が発達している国は、軍事力としても、より大きな兵器を開発している。戦艦などがいい例だ」

「戦艦って、あの陸上戦艦のことですか?」

「そうだよ。実践できる段階だとか‥‥‥」

「戦艦なら俺たちで破壊しましたよ」

 俺はサラッと言った。

「せ、戦艦を破壊しただと?」

「はい」

「それはすごい!」

「いえいえ、俺一人の成果ではないですよ。俺と、信じ合える仲間との連携で、破壊できたんです」

「見直したよ!邪教も根こそぎ潰してくれたしな」

「ルシフィーネ教団のことですか?」

「ああ。君たちのおかげだ。冒険者も侮れんな」


これは、冒険者が認められてきたという証拠かな?


「そうだ、俺の仲間の双子の姉妹、セーラとクララなんですけど、どこかで真っ当な仕事をさせてやりたいんですが、どこかで雇ってくれませんかね?」

 俺のいきなりの言葉に、俺の仲間たちやセーラたちも同時に身が凍り付く。

「お、おい。いきなり何だよ、お兄さん!」

 セーラが叫ぶように言った。

「まぁまぁ」

 俺はなだめるように言う。

「どうです、王様?」

 王は即答で、「なら、郵便局はどうかな?」と、言った。

「郵便局?」

 セーラは反応した。

「郵便局はいつも人手不足でな。配達人や仕分け人の手があると、とても助かる」

「郵便局か。どうだ、セーラ、クララ?」

 俺はぜひ、勧めたい気分になった。

「セーラは身が軽くて足も速いから、配達人に向いていると思うし、クララは真面目な性格だから、郵便物の仕分けにピッタリだと思うぞ?」

「そんな‥‥‥」

 クララは少し気おくれしていた。

「そんなに固くなるなよ。ですよね、王様?」

「ああ。我が王国の直属の郵便局だからな。給料ははずむぞ」


 国営の仕事なのだな、郵便局員は。


「君たち、働きたいのなら特別にそれなりの部屋も提供しよう。どうだ?」


これは二つ返事でいいだろう。


「クララ、セーラ、決めろよ」

「いいのか?」

「いいって言ってるじゃないか」

「そ、それじゃあ、クララも一緒なら‥‥‥」


その場でスラムの双子の姉妹の就職が決まった。

これでいい。


 俺は満足して、食べるのに集中した。

「あ、セ-ラ。ルルチェに財布と化粧道具は返してやれよな」

「ああ、分かった」


こうして二人は、王国で新たな仕事に就くことが出来たのだ。



いろんなエピソードが書けて、充実しています。皆様のおかげです!!

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