第百五章・ダン・ルーエの王都に来るのは二度目。
楽しく書くことを心がけます。
第百五章・ダン・ルーエの王都に来るのは二度目。
以前はダン・ルーエの城下で暗躍していた、邪教ルシフィーネ教団の壊滅をするためにこの王都と、郊外のルシフィーネ教団アジトへと来たんだったな。
カンダタの奴は今、どうしているんだろうな?
ダン・ルーエの人に話を聞くと、どうも邪教の一味はどこかへバラバラに散り、カンダタは貧民街グロルというところへ身を潜めたらしい。
それは王都の端にある貧民街で、行き場を失くした者がたくさんいる、落ちぶれた人たちのたまり場だということだった。
数日の旅の末、夕方前にはダン・ルーエの王都に着いた俺たちだった。
「やっと着いたな」
俺は王都の賑わいに平和を確かめる。
「ダン・ルーエとイル・イークが敵対してるなんて、信じられないな」
「イル・イークは戦艦を失ったんだ。軍事力のバランスはこれで釣り合ったとは思うけどな」と、コマドリ。
「そうな。それをダン・ルーエの王様に報告すれば、俺たちの株も上がるというわけだ」
「ちゃっかりしてるな、リューイチ」
「いいだろ?俺たちは二度も頑張ったんだ」
「そうか、カンダタのこともあったんだよな?」
コマドリが思い出したように言う。
「そういうこと!」
「奴は貧民街でどうしてるかな?」
「コマドリ、お前もそのこと考えていたのか?」
「まぁ、この国といえばルシフィーネ教団の教祖、カンダタという存在だろう」
「前に来た時には、王都で預かってもらって、それなりの罰は受けたんだろうから、今は追放一歩手前で、貧民街へ落ちたのかもな」
馬車を操っていたルルチェが、途中で馬を止める。
「ここからどう行くの?」
「俺は貧民街をのぞいてみるよ。ルルチェは馬車をレンタ馬車に渡しに行ってくれ」
「姫にそんな雑用させるなんて、リューイチは偉くなったものね」
ちょっとした愚痴をこぼすルルチェ。
「仲間だろ?」
「そうね。分かったわ」
俺の他に、コマドリとイーゼルも馬車を下りた。
お前たちも一緒に来るのか?
俺は二人を連れて、グロルの貧民街へと向かった。そういえば、土地勘がないので、それがどこにあるかは知らないんだった。
その時、トボトボと歩いているボロのワンピースを着た、白髪の女の子がいるのを見つけた。
「よう、君。グロルという貧民街はどこにあるのか知ってるかい?」
俺はその子に尋ねた。歳は十三歳くらいに見えた。
「あの、その貧民街に何の用でしょうか?」
「ちょっと会いたい人がいるんだけど」
「行かない方が懸命ですよ」
俺は首をかしげる。
「なんで?」
「だってあの場所は、都市部でほとんど稼げない人たちばかりが住んでいるんですから」
まぁ、貧民街というくらいだから、そうなるかもな。
少女は何だか困っている様子だった。
「あの、失礼ですが‥‥‥また姉が何か?」
「姉?お姉さんがいるのかい?」
「はい。双子の姉です」
ということは、この子と同い年のもう一人が一緒にいるのか。
「いや、お姉さんとは別に関係はないけどな」
「そうなんですか?」
いやに不安げな表情をする子だな。
「君は何してるの?」
「え、わたしですか?わたしはちょうど仕事が終わって帰るところなんですけど‥‥‥」
「そっか。引き留めて悪かったね。貧民街のことは別の人に訊くことにするよ」
それを聞いたその子は、慌てるように俺を引き留めた。
「あ、その‥‥‥、貧民街には案内します。だからわたしについて来てください」
「え、いいの?」
「はい。わたしは‥‥‥、いえ、わたしたち姉妹はその貧民街に住んでいますから」
そう言うと、その子は俺たちを連れて歩き出した。
「君、名前は?」
「クララです。姉はセーラ」
どっかで聞いたような名前だな。テレビか何かだっけ?
どうでもいい反応を俺は見せる。
昔のアニメに出てくる主人公の名前だったかな?
それはさておき、貧民街へと続く、薄暗い路地を行く俺たち。
この先か。こういうところを確かスラムとか言うんだっけ?
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