第百四章・王手!そして見えた!!
今日はこれから整骨院に行って、治療してきます。
第百四章・王手!そして見えた!!
俺はショーギをして、クリスティーナに勝たなくてはならなくなった。
このボードゲームは本当にあの将棋なのか?
俺と対面するクリスティーナ。そこへ、警備兵のひとりが盤を開き、駒を並べる。
確かにこれは将棋だ。
いや、この世界ではショーギか‥‥‥。別に名前はほぼ一緒だけど。
俺は小学生以来、将棋はしていない。そこそこ強かったが、それは素人将棋の範囲内での話だが。
「飛車角落としでいいぞ」
クリスティーナが言った。それも余裕の表情で。
「いいのか?」
「ああ」
しかし、なぜチェスでなく将棋なのやら。ここはもっと西洋風に攻めるべきだと思うのだけどな。
ま、いいか。
「じゃあ、俺が先行ってことで」
「構わんよ」
俺はこのショーギを懐かしんでいる場合ではないと思った。
これは俺の世界のゲーム。負けるわけにはいかないのだ。日本を代表してな!
当然、最初は定石どおりに駒を並べる。相手もそうした。
次は歩をどんどん先へ進めるが、その間に相手の金が進んでくる。
もう、手が止まってしまう俺だった。
考えろ、考えろ。
俺はチートなのだ。知力も当然無限大にある。こんなショーギで負けるなんて、ありえない。
相手は飛車も角も無いのだ。それだけ相手は余裕なのだろうが、相手の隙も必ずある。
そこを突くのだ!
俺は千里眼のように先を読んだ。相手は必ずこう来る。それならば‥‥‥。
俺の駒は守りを固めつつ、王手に向けて、駒を進めた。
ここで、成り。次は桂馬。そして銀。
「王手!」
俺の声が響く。追いつめた!
「こ、これは‥‥‥」
クリスティーナが手を止める。
「詰んだのか?」
「そうだ」
舌打ちをするクリスティーナ。
「ば、バカな‥‥‥」
「飛車角落としてくれたおかげだぜ」
俺のチートの前では、当然飛車角があっても勝っていただろう。俺には73手で詰むことが読めていた。これで俺の勝ちだ。
久々に将棋をやったので、なんだか気分がいい。
「約束だ。これで俺たちは心置きなくダン・ルーエの国境を越えられるってことだ」
「むむむ‥‥‥。クソ!しょうがないな」
悔しがるのを隠さないクリスティーナだった。正直な人だな。
ここでもう一勝負とか言わないのが偉い。さすが軍人だ。
「わたしの負けだ。よし、いい勝負だった。特別に特別通行手形を全員分、発行してやろう」
何か、特別とか言い出したぞ?
「それ、何だ?」
「どこでも国境を越えられる通行証だ。期限は二年。更新はどこででも出来る。それを発行してやると言ったんだ」
そんなのあるんか?それは当然、発行してもらいたいな。
「いいのか?」
「まぁ、本来なら一般の冒険者たちには審査が必要なのだが、ここはルルチェ姫に免じて審査無しで発行してやろう。代表はリューイチでいいか?」
「ああ。そうだな」
「よし、ではここで待っていてくれ。書類を持ってくるからな」
少しの間、俺たちは部屋で待たされた。
「リューイチ、そなたゲームにも強いのだな」
「ホントです!わたし、見てて興奮してました。ルールは全然分かんなかったんですけど」
「リューイチの腕は確かだったわ。見ててすごいと思ってた」
おっと、女子どもに好感触!
強くて頭が良いならモテるのか!
ちょっと調子に乗る俺。だって、今までこんなにも人に褒められた経験なんて無いんだものな。
「いや~、相手はけっこう出来る相手だったけどさ。手加減してくれたんだろうよ」
「それでもそなたは勝ったじゃないか!」
「相手が飛車角落としてくれたからだよ。まぁ、いい勝負だったけどな」
俺はそのお褒めに対して、ふんぞり返り過ぎて、椅子からズッコケて落ちてしまった。倒れた俺の目の先には、イーゼルのスカートの中が見えた。
あ、純白の可愛いショーツ。バッチリ目に焼き付けましたです、ハイ!!
イーゼルはそれに気づくと、顔を赤らめて、すぐにスカートを押さえた。
「リューイチ、あなたは変態ですか?」
ボソッと言う、イーゼルの言葉は俺の心をえぐった。
へ、変態ちゃうわ!
その時、クリスティーナが書類を持って、部屋に入って来た。
「何をしておるのだ、お前たち」
俺は起き上がった。
「いや、これはその、ラッキースケベってやつだよ」
「ラッキースケベ?何だそれは?」
詳しく話したくねぇ‥‥‥。
「いや、こっちのことだ。それが書類か?」
クリスティーナの手元を見て、俺は言う。
「ああ。この書類に全部サインを」
「分かった」
俺は書類にサインすると、四人分の特別通行手形の札をもらった。
「これでダン・ルーエ国内に入れるということだな?」
「それ以外でも使える。身分証としての効果もあるしな」
「それは有難いな」
「では、ダン・ルーエへの出口まで案内する。ついて来い」
俺たちは部屋を出て、入り組んだ砦ツィタデルの中をぐるぐると回る様に歩いた。
「この砦は戦争時の要塞でな、敵が入って来ても、たどり着く道が分からなくなるように設計された、迷路のような造りになっているのだ」
「なるほどな」
俺は感心した。
やがて、出口につくと、太陽の光が差し込めた。
「王都まで馬車で行くがいい。わたしの馬車を貸してやる。王都に着いたら、レンタ馬車に預けてくれ。管理する者がいるからな」
レンタ馬車って、レンタカーの馬車ヴァージョンか?
アバウトな名前だなぁ。
「じゃあ、使わせてもらうよ。ありがとな!」
「いや、そちらも道中に気をつけることだ。無事に王都までたどり着けるよう願ってる」
クリスティーナはかなり良い人だ。癖はあるが、世話も焼いてくれる。
俺たち一行は、馬車で王都へと向かった。
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